一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1日曜掲載=新規6校 新聞教育に抱負

2024年08月04日(日)付 朝刊


■月刊一緒にNIE@しずおか・第1日曜掲載=新規6校 新聞教育に抱負 

 

 日本新聞協会はこのほど、2024年度のNIE実践指定校を全国で527校決定した。県内は新規6校と昨年度からの継続8校の計14校が、デジタル化の進む中で新聞を活用した教育活動に取り組む。新規校に抱負を寄せてもらった。

 <2024年度NIE実践指定校>
【新規】東伊豆熱川中、静岡清水第六中、御前崎中、浜松浜北北部中、桐陽高、沼津視覚特別支援学校
【継続】熱海泉小、静岡由比小、袋井南小、浜松初生小、静岡サレジオ小・中、浜松開誠館中・高、磐田北高、浜名高

 沼津視覚特別支援学校 石川紗恵子先生 <読みやすい新聞考える>
 視覚障害のある児童生徒は文字を読む時に、視覚支援機器の拡大機能を利用したり、音声読み上げ機能を利用したり、点訳文を読んだりしています。
 NIE活動に取り組む中で、自分に合った方法で新聞に親しみ、身近な出来事に関心を持ち、視野を広げ、児童生徒の国語力が高まることを期待しています。
 また、新聞づくりを通して、新聞の良さや、自分たちが読みやすい新聞についても考えたいと思います。

 東伊豆熱川中 入江ひとみ先生 <記事活用 場づくり模索>
 情報リテラシーを身に付けられるだけでなく、人生を彩る発見もある新聞の数々の魅力を感じながら、本校では新聞を活用した授業づくりや場づくりを模索していきたいです。
 全職員で情報を共有しながら活動を展開し、生徒たちが新聞に触れる機会を増やしたり、新聞の良さを感じたりしてほしいです。新聞記事との出合いをきっかけに、「問い」や「願い」を持ち、各教科や学級で目指すべき学びの姿に迫ることを目標に掲げています。

 静岡清水第六中 山内俊治先生 <社会のぞく「窓」として>
 情報社会を生きる子どもたちにとって、情報を手に入れる手段の中心はインターネットになっているように感じます。特に1人1端末が当たり前になってからは、その傾向が顕著です。
 そんな今だからこそ、子どもたちが新聞に触れる機会をつくるところから始め、新聞という「窓」を通して身近な場所で起こっていることから遠い世界のことまで、社会をのぞき、社会に触れる機会をつくることができる実践を進めたいと思っています。

 浜松浜北北部中 原田直樹先生 <社会科で探究力を養う>
 本校では、社会科の授業で新聞活用を計画しています。1人1台のタブレット端末が導入され、生徒たちは、インターネットで日本や世界中の多くの情報に触れることができます。一方で、地域の身近な情報を知らない生徒も多くいます。
 社会科の授業では、日本の各地方における地域の特色や課題について学びます。新聞を活用し、自分たちの住む地域との共通点や関連性を捉えさせることで、多面的・多角的な視点をもって探究する力を育みたいと考えます。

 御前崎中 北條賢佑先生 <読み込み考える力育む>
 2学期より本格的な取り組みを行い、各教科や日常生活の視点から新聞を活用し、本校の目指す資質・能力の一つである「自律」(自ら気づき、考え、判断・実行し、行動する)の向上につなげていくことを考えています。
 近年、インターネットで得られる情報に敏感な生徒は多いものの、生徒が主体的に記事を読み込み、考える時間は少ないと感じています。本実践を通して生徒が社会の一員としての自覚を持ち、行動できるようになることを期待しています。

 桐陽高 浅井みゆき先生 <図書館旗振り役で展開>
 新聞は社会の入り口。知識の宝庫。新聞により自らの将来選択の視野を広げ、社会と関わる力を持ってほしいと、本校では学校図書館が旗振り役として、「Nタイム」の実施や新聞を題材にした小論文などで思考力、表現力の育成をサポートしてきました。
 また、生徒が社会にアンテナを立てるため新聞を手にする機会を図書委員会活動の中で実施してきました。こうした実践をさらに展開し、生徒のキャリア育成に向け、教員同士アイデアを出し合い進めたいと思います。 

 

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■紙面授業 英語 一つの事象 異なる視点 浜松学芸中・高 天野真秀先生 

 

 3月に米国映画界の優秀作品に与えられるアカデミー賞を日本の2作品が受賞しました。「ゴジラ-1・0(マイナスワン)」のゴジラは、ゴリラとクジラの造語ですが、英語タイトルのGodzillaは、神のイメージを込めて、God-zillaとしたそうです。また、「君たちはどう生きるか」の英語タイトルは、The Boy and the Heron(少年と青サギ)で、How do you live? ではありません。
 同じく3月に世界最多の収録語数を誇る英国のオックスフォード英語辞典(OED)が改訂されました。日本語は外来語の宝庫だと評され、23の日本語由来の単語が追加されました。日本食が身近になったことを反映し、多くはkatsuやonigiriなどの食べ物でしたが、katsuは「通常は鶏肉を揚げたもの」とされ、日本語とは多少のずれが生じていることが分かります。
 4月には、岸田文雄首相が米国議会で演説した際、Fumio Kishida(名・姓)ではなくKishida Fumio(姓・名)と紹介されていました。文化庁が2000年に、日本人名のローマ字表記は姓・名の語順が望ましいとの通知を出しましたが、米大リーグでは今でも、Shohei Ohtani(名・姓)と使っており、まだ人口に膾炙[かいしゃ]していないようです。
 以上の話題はそれぞれ、映画のマーケティング戦略、外来語の受容と変容、呼称の文化的アイデンティティーの例ですが、英語を通して日本語の姿が浮き彫りにされています。高校の英語の科目名は「英語コミュニケーション」であるように、英語はコミュニケーションツールであるのは言をまちませんが、日英語双方の文化を知り、一つの事象に対して異なる切り口、視点を持つことも英語学習の目的の一つなのです。
 <今回で終了します>