一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

「教員の指導力向上」91% 学習効果調査 子ども 読む・書く力も

2024年07月12日(金)付


 日本新聞協会は11日、教育現場で新聞を活用する「NIE(教育に新聞を)」に取り組む学校を対象にした学習効果調査の結果を発表した。NIE実施後に教員の指導力が伸びたと答えた学校が91%に及び、子どもの読む力や書く力など、尋ねた五つの力の全てで、9割前後の学校が伸びたと答えた。
 調査は今年1~2月に実施。2023年度のNIE実践校など全国の小中高校計581校からの回答を基に分析した。
 協会によると、教員の指導力が「大幅に伸びた」と答えた学校は4%。「伸びた」が39%、「少し伸びた」が48%だった。NIEの実践頻度と指導力との相関も調べたところ、週1回以上など頻度が高い学校ほど「大幅に伸びた」「伸びた」と答えた割合が高かった。
 子どもの能力への影響も調査。「聞く力・話す力」「読む力」「書く力」「理解力・考えを深める力」「主体性」の5項目がNIE実践後に伸びたかどうかを尋ねると、全項目で「大幅に伸びた」「伸びた」「少し伸びた」の合計が87~94%と9割前後を占めた。
 具体的にどのような変化があったかを自由記述で答えてもらったところ「語彙(ごい)が増えた」「長文への抵抗感が薄くなった」「書くスピードが上がった」「分かりやすく書けるようになった」などの回答が寄せられた。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1日曜掲載=気になった記事 全校に紹介 浜名高・放送委員会 「社会に関心高めて」 新聞身近に

2024年07月07日(日)付


■ 気になった記事 全校に紹介 浜名高・放送委員会 「社会に関心高めて」 新聞身近に 

 

 2023年度にNIE実践指定校となった浜名高(浜松市浜名区)は同年9月から、放送委員会が昼休みの放送で新聞記事を紹介している。自由なテーマで、目に留まったニュースを選ぶ。生徒に社会の動きへの関心を高めてもらおうと始めた試みで、委員の間で新聞を読む習慣が定着しつつあるという。

 昼食時間の終了を告げる放送。担当の生徒が記事の切り抜きやメモを手に、気になったニュースを紹介する。掲載された新聞や見出し、感想などを1分程度にまとめる。放送委員会ではクラスごとに2人一組となり、日替わりで放送を行う。扱う記事はスポーツから政治、防災、地域のイベントまでさまざま。5月に行われた知事選に関する記事を複数回紹介するなど、県内の関心事を取り上げる。
 生徒は事前に新聞やウェブページを確認して題材を探す。1年の野末創也さん(15)は「極力明るい話題を選ぶ。話し方も興味を持ってもらえるように心がけている」と話す。
 取り組みは生徒たちが新聞に触れる機会になっている。放送委員になるまで日常的に新聞を読むことがなかったという鎌江未空さん(16)は「普段から新聞に目を通すようになり、ニュースを考えるきっかけになった」と効果を口にする。
 同校は現在7紙を購読。渡り廊下に開架し、いつでも手に取れる環境を整えている。図書委員会では新聞への投書も行っていて、「委員としての活動」や「季節感のある内容」をテーマに執筆する。
 こうした取り組みの数々は、生徒に普段から新聞に触れてほしいとの思いがある。NIE担当の岩本直子教諭(55)は「紙から触れる情報を大事にしたい。生徒がいろんな新聞を手に取ることが日常化してくれたら」と願う。 

 

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       校内に開架されている新聞各紙 

 

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昼休みの放送で新聞記事を紹介する放送委員会の生徒=浜松市浜名区の浜名高 

 
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紙面授業 地学 月の起源解明に注目を 静岡北中・高 内野靖之先生 

 
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型探査機「SLIM[スリム]」が1月20日、日本で初めて月面に着陸し、世界初のピンポイント着陸に成功したことが、大々的に報じられました。着陸の挙動解析などで静岡大工学部の能見公博教授の研究室が協力してきたことも報道され、月探査がより身近に感じられました。
 月の夜は14日続き、表面温度は氷点下170度前後にもなります。機体はこの過酷な環境に、耐えられる設計ではありませんでしたが、予想に反して幾度かの夜を越え、貴重な観測データを地球に届けてくれました。ところで、月はどのようにしてつくられたのか知っていますか。
 月の起源にはいくつかの説があります。地球の一部が引きちぎられてできたとする「親子分裂説」、地球とは別の場所で誕生した月が地球の引力によって捉えられたとする「捕獲説」、地球と同時につくられたとする「兄弟説」、火星クラスの天体が地球に衝突して天体と地球のマントル物質が飛び散った後にそれらが集まってできたとする「ジャイアント・インパクト説」などです。
 このうち最も有力なのが、ジャイアント・インパクト説です。地球のマントル上部は主に「かんらん石」からできていて、月の内部から地球のかんらん石と類似したものが見つかれば、この説を裏付けることになります。そして5月27日、立命館大や会津大などの研究グループは、SLIM搭載カメラで撮影した月面の岩石の画像分析で、かんらん石の存在を示すデータが確認されたと発表しました。この岩石は月のクレーター周辺で見つかっており、隕石[いんせき]が月に衝突した際、月から掘り起こされて出てきたマントル物質と考えられています。
 今後も月ではさまざまなミッションが控えています。調査によってさらに月の起源に迫ることができるかもしれませんね。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。 


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■ NIEアドバイザーのワンポイント講座(82)記事以上に"語る"写真 静岡千代田小 中村都教諭 

 

 小学校4年生の国語の教科書(光村図書)に「アップとルーズで伝える」という教材があります。動画や写真は情報の内容をより分かりやすく伝える上で大変重要で、伝える際は、アップとルーズの良さを生かし、選んだり組み合わせたりすることが大切、と書いてあります。
 現在、写真はカラーが主流ですが、数年前、あえて白黒(モノクロ)写真を使ったのだろう、と思われる記事を見つけました。
 それは、辺りが暗くなりかけた夕暮れ時、男子ゴルフの全英オープン選手権で共に予選落ちした2人の選手が互いの健闘をたたえ合い、がっちりと握手をしている写真です。写真の中心は2人の手で、左右に分かれて見える2人の横顔は輪郭しか見えていないため、それぞれの表情をうかがい知ることはできません。しかし、記事には書かれていない2人の気持ちを、写真の握手の様子から読み取ってほしいという記者の方の意図を感じました。
 情報をより分かりやすく伝えるためにさまざまな手だてを施す写真と、必要最小限の情報量まで減らし、受け手に読み取ってもらう部分を残す写真。正反対のようでいて、どちらも写真が語り、伝えていることに他なりません。