「世界大会は楽しくできますよ」岸本はな選手(静岡・飛龍高3年)その場に応じた柔軟な取り口で女子相撲世界女王に

熱海富士関や翠富士関など、17年間で5人もの関取を輩出した静岡の強豪校・飛龍高校相撲部。2025年3月に行われた全国高校選抜大会では、11年ぶりに同校から高校王者が誕生するなど、その勢いは止まりません。

この相撲部には現在、女子部員も在籍しています。岸本はな選手(3年)です。2024年9月にポーランドで行われた世界ジュニア相撲選手権大会で初出場初優勝を成し遂げた注目の存在、練習の際には、男子選手に混ざって練習を行いますが、体格の大きい選手を相手にも一歩も引かずに、素早さと安定感のある相撲で渡り合っている姿が印象的です。岸本選手に今後の展望や自身の強みを聞きました。
(SBSアナウンサー・松下晴輝)

「世界」に行くまでに結構苦戦

世界を制してからおよそ半年、決勝戦の相手について尋ねると、岸本選手は少し考え込んだ後、「えっと、あのなんかヨーグルトみたいな名前の…」とまさかの回答。「もしかして、ブルガリア?」と問いかけると、「あ、そうです!」と明るい表情で返答した岸本選手。親しみやすさが伝わってくるやり取りでした。

さらに世界大会について聞くと、こちらも意外な感想が返ってきました。

「強かったですけど、いま日本の方がレベルが結構高くて。ジュニア(の階級)だと日本の予選の方がレベルが高くて、そこに行くまでに結構苦戦しましたね。なので、世界大会は楽しくできますよ」。

この発言からは、岸本選手の強さと同時に、日本の女子相撲のレベルの高さもうかがえます。世界大会を「楽しく」戦えるという感覚は、まさに強者の余裕を感じさせます。

岸本選手に自身の相撲の特徴について尋ねると、「左も積極的に差したりとか。あとは結構いろんな技を使おうと思ってやっています」。左差しを積極的に使うことで、相手の動きを制限し、自分の得意な展開に持ち込む戦略が見て取れます。

また、多彩な技を駆使する点も岸本選手の強みです。相撲部の栗原大介顧問は、「柔軟にその場、その場に応じた相撲が取れるその器用さ」を高く評価。この器用さで相手を翻弄します。

幼い頃から自宅横の道場で磨いた技術

宮崎県延岡市出身の岸本選手の相撲の原点は、幼少期にさかのぼります。「ずっと小さい時からお父さんに教えてもらっていて、『器用さは巧く使おう』と言われ続けてきました」。相撲の指導者であったお父さんからは、自宅の横にある道場で指導を受けていたといいます。幼い頃から相撲に親しみ、技術を磨いてきた経験が、大きなベースとなり、現在の活躍につながっているといえます。

最終学年を迎えた岸本選手。「5月にまた世界予選があるのでそこでしっかり勝って世界大会に出場。そして、また優勝できるようにしたい」。さらに、「10月に全日本女子相撲選手権があるので、そこで優勝することが一つの目標です」と、国内タイトル獲得も視野に入れます。

インタビュー直後の4月13日、大阪府堺市で開かれた国際女子相撲選抜堺大会の軽量級(65キロ未満)で優勝、無差別級で準優勝と、再び世界の舞台で結果を残した岸本選手。左差しをはじめとする多彩な技を武器に、世界を見据えて静岡の地で成長を続けます。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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