2025年から30年前の3月20日、地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教。事件から2日後、静岡県富士宮市にあったオウム真理教の拠点に警察は強制捜査に入りました。あの時、信者たちと対峙した人は、住民が直面した困難を繰り返してはいけないと訴えます。
<社会部 山口駿平記者>
「富士宮市の盲導犬センターです。30年前、ここにはオウム真理教の拠点がありました」
1980年代後半、オウム真理教は、富士宮市の人穴地区に「富士山総本部」と呼ぶ拠点を作りました。酪農が盛んなのどかな地域ですが、あの時、住民は言い知れぬ恐怖と不安の中にいました。
前の富士宮市長の小室直義さんです。当時は市議会議員として対策委員会の副委員長を務めていました。
<オウム真理教対策にあたった 小室直義さん>
「実態がつかみきれなかった。本当にどのくらいいるのか何をしているのか、塀で取り囲って中の状況はまったく見えなかった。やっぱり得体の知れないということで、付近の皆さんが不安に感じた。一切がわからなかったですから」
一時は1000人を超える信者がこの場所に住民票を移し、地域住民との間でさまざまなトラブルが起きていました。
人穴に住む人たちの声は、行政にも届いていました。
「早朝、真夜中を問わない工事による重機、発電機等の騒音。そして、振動もしばしば問題になった」
「1日中流されていた拡声器による説法や音楽、マントラを合唱する声。近所の人たちには大変迷惑だった」
「恐らく地方自治体としては、体験したことの無かったであろう事態に次々と直面した」
1995年3月20日、全国を震撼させた「地下鉄サリン事件」。6000人以上が死傷しました。人穴に住む人たちも他人ごとではありませんでした。
<小室直義さん>
「サリン事件の時がピークでした。サリンですから、ここにもサリンがあるのかという話になりますから、心配はさらに膨らんだ。早く何とかしてほしいと」
事件から2日後の3月22日。警視庁は、「富士山総本部」への強制捜査に踏み切ります。計19回にも及んだ家宅捜索では、銃火器の設計図などが押収されました。翌年、オウム真理教は解散に伴いこの場所から撤退、跡地には盲導犬の訓練施設ができました。
事件から30年。オウム真理教が静岡県内でも活動をしていたことを決して風化させてはいけません。
<小室直義さん>
「今の日本の社会も戦争を含め、さまざまなことがある。そういったときに人の弱みに付け込むようなカルト的なことは日本で二度と起きてはいけないと思うので、時に触れ市民の間で国民の間で日本でもそういうことがあったということを記録として留めてあるので、機会があるごとにそれを思い出してほしい」