
3月中旬の平日午前、JR静岡駅南口のビルにある静岡県中部県民生活センター。ヘッドセットを着けた消費生活相談員が机に向かい、電話口の相談者の話に聞き入った。相談員は5人態勢。目の前のパソコンを使って、情報を参照したり入力したりと忙しい。
新規に受ける電話相談は1日当たり約8件。60代以上からが半数を占める。県内のある相談員は「ネットに関係したトラブルは若者が被害を受ける印象だったが、今は高齢者の相談も多くなっている」と実感を語り、「ネットで見て飛び付く前に、まずは周りの人と相談するなどよく考えてほしい」と助言する。
▶▶「通販」多く
静岡県のまとめによると、2023年度に静岡県と35市町に寄せられた消費生活相談は2万5719件(前年度比1.5%減)。消費者トラブルで消費者側がお金を支払ってしまった「既支払額」は平均49万2000円(同9万7000円増)だった。販売購入形態別で最も多いのは「通信販売」で、このうちSNSやネット広告を通じた「ネット販売」が多数を占める。
24年度も全体の件数に大きな変化はない見込みだが、SNS関連とネット広告に関しては増加傾向だ。
SNS関連の相談は23年度に2458件。SNS上で著名人をかたった投資や副業の勧誘でトラブルになるケースが目立った。ネット広告の相談は22年度から急増。23年度は3518件で、健康食品や化粧品の定期購入に関する相談が多かった。いずれも24年度も増加する見通しだ。
静岡県県民生活課の担当者は「個人の関心に応じた広告が表示されるため、支払いにつながりやすいのではないか。スマートフォンが普及し、若者だけでなく高齢者にも被害が広がっている」と話す。
▶▶「従来型」も
一方、「訪問販売」など従来からある形態の被害相談も依然として多い。中部県民生活センターの担当者は季節性があることも指摘。「新生活が始まるこれからの時季は、賃貸アパートや、引っ越しに伴う光回線、ガスや電気などの契約に関するトラブルも目立つ」と話す。
風水害の後には屋根工事の勧誘が増えるなど、寄せられる相談は多様だ。静岡県担当者は「高齢化が進んで独り暮らしの人も増え、被害に遭いやすい状況になっている」と動向を注視する。
▶▶情報を共有
消費者トラブルに関する相談をしたいときは、全国共通の消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すると、最寄りの行政機関の窓口につながる仕組みになっている。静岡県内は29市町が独自に、賀茂地区6市町が合同で相談窓口を設け、県も東部、中部、西部の各県民生活センターで受け付ける。
相談の電話では、対応する専門の消費生活相談員が助言や情報提供をするほか、相談者と事業者の間に入って問題解決を図る。場合により対面で相談を受けることもある。情報は関係機関で共有し、対応に役立てる。静岡県の担当者は「どこに聞けばいいか迷ったら、まずは電話相談を」と呼びかけている。