社説(4月9日)静岡茶市場 消費者の認知度向上を

 静岡市葵区の茶問屋街に、はしり新茶が出回り始めた。中心的施設の静岡茶市場の新茶初取引式典は開設以来最も早く12日朝、開催される。
 入荷数量が見通せず、六曜は前年と同じ赤口で「赤字を連想させる」という声もあるが、シーズン到来を一日でも早く告げようと暦より実を取った。2023年度に10年連続の営業赤字となった危機感の表れとも受け取れる。
 茶市場の活路には、茶業者の施設から、お茶好きな消費者も注目するよう、認知度を向上させる必要がある。急須を使って上級茶葉を入れる人を増やし、安い原料茶を使う大手の緑茶ドリンク台頭による茶価下落に歯止めをかけなければならない。
 23年度は若手社員のプロジェクトチームによる「茶いちばまつり」「おむすびフェスタ」を実施した。定着させることで新たな人の流れが生まれることも期待できる。取引盛期の早朝見学ツアーが好評だが、その時期に新茶接待コーナーを設けるなど、問屋街と一体となって消費者を呼び込んでみてはどうか。
 鍵は女性が握ると言えよう。NPO法人日本茶インストラクター協会の入門レベルの資格「日本茶アドバイザー」は、約1万4千人の8割が女性といわれる。協会は男女比を公表していないが、1999年の制度発足以来茶業関係の男性が多かったインストラクター試験受験者も最近は女性が増え、認定者の男女比逆転もあり得るという。
 近年は茶取引の現場でも女性が活躍しているが、依然として男性社会のイメージが強い。改革の優先課題の一つがジェンダー平等であろう。
 基本知識がある日本茶インストラクターらは新機軸を応援し、ブランド力に気付かせてくれるだろう。NPOとの連携強化は活路につながるはずだ。認定者数は都道府県別で静岡県が一番多い。
 静岡茶市場の23年度の取り扱いは数量3300トン、金額28億円だった。20年ほど前のピークに比べ数量は6割減、金額は8割減。生産者とドリンク大手の直接取引など、市場を介しない取引が増えた。
 販売委託手数料が営業収益の8割を占める経営は年々、厳しさを増し、22年度まで2・3%だった手数料を25年度までに段階的に4%に上げる。入荷量が減らないように営業力強化が喫緊の課題だ。
 静岡茶市場は1956年、粗悪茶排除とともに、代金不払い防止など流通改善を主目的に県の政策で官民が出資した株式会社。茶業近代化に果たした功績は大きい。価格形成力を次代に継承しつつ、時代に合った経営が求められる。必要とされ続けるためには、女性参画をはじめ時代に向き合う必要がある。

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