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イマドキヒットの新法則!? 話題の「TikTok売れ」とは

1989年発売の小説が緊急重版!?

最近、筒井康隆さんが1989年に発表した『残像に口紅を』という小説が緊急重版が決定するほど人気になっているらしいのですが、このきっかけになったのが「TikTok」なのだそう。音楽でも「TikTok発アーティスト」という言葉を耳にする機会も増えてきていると思うのですが、「TikTokで話題になって火が付く」というのはいつ頃から始まった現象なのでしょうか? 「TikTok売れ」という現象について、ITライターの西崎圭一さんに教えていただきました。
※8月27日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。
残像に口紅を

『残像に口紅を』(著:筒井康隆 )/ 書店での展開・帯も新装された 提供 中央公論新社

TikTokがどんなサービスか簡単に教えてください

西崎さん:15秒~3分までの動画を投稿したり視聴できる動画共有サービスのアプリです。お笑いや料理、絶景の紹介などさまざまなジャンルの動画が共有されています。30~40代以上のユーザーも増えてはいるんですが、やはり10代、20代など、若い世代に人気のアプリですね。

原口アナ:最初の頃は音楽やダンスなど、自己表現の場という印象が強かったのですが、最近はさまざまなジャンルの動画が増えてきているということなんですね。

西崎さん:そうなんです、短ければ何でもあり!という感じになっているんです。

TikTokがきっかけとなる「TikTok売れ」というのはいつ頃から?

西崎さん:音楽がヒットするという現象は、昨年から見られるようになりました。おそらく記憶に新しいのは、瑛人さんの「香水」ではないでしょうか? TikTokで「香水」を使用した動画が数多く作られたことからロングランヒットになりました。YOASOBIの「夜に駆ける」、こちらもTikTokで人気となった1曲です。TikTokで使用されている曲を聴いて、気になってサブスクなどストリーミングサービスに移動する、という流れができているんです。音楽業界は、TikTokを流行の発信拠点として注目しています。

原口アナ:TikTokが起点となって盛り上がりをみせている、流行の拠点となっているわけですね。

筒井康隆さんの小説『残像に口紅を』が話題になった経緯は?

西崎さん:7月27日に、主に小説を紹介している「けんごさん」という若い世代に人気のTikTokクリエイターの方が、この小説の魅力を30秒にまとめた動画を投稿されたんです。その動画が大きな反響となり、各通販サイトで『残像に口紅を』が品切れとなる事態になったんです。

原口アナ:小説の内容を30秒でというのはかなり短いと思うのですが、それを見たTikTokのユーザーの方が、「面白そう!」と思い購入し、品切れにまでなったのですね。

西崎さん:出版元の中央公論新社にお話しをうかがったところ、現在までに8万5000部の重版となっているそう。実は2017年にテレビ番組でカズレーザーさんもこの小説を紹介していて、その時にも3カ月で10万部の重版となったそうですが、今回はすでに1カ月足らずで8万5000部ですので、担当者の方は「今回の反響はその時と同じくらい、もしくはそれ以上か……」と驚かれていました。

原口アナ:3カ月で10万部重版でもびっくりしたと思うのですが、今回さらにTikTokの影響力はすごい!と思っているところなんですね。

西崎さん:出版社の方がさらに驚かれていたのは、書店の平積エリアではなく、在庫が1冊程度しかない通常の「棚」に置いてあったそうなのに、売上データを確認すると1冊1冊1冊……という数字が並んでいて、全国の書店でしっかり売れているのが確認できた、ということだったんです。

原口アナ:注目作だと見えやすいところに置いてあるようなイメージですが、各店舗に1冊ずつしかないのにそれでも売れたんですね! Amazonで調べて買うという人はいると思うのですが、ちゃんと書店へ行って作品を見て購入していく。これ、日本以外でも同じような現象は起きているんですか?

西崎さん:はい、アメリカで4年前に出版された小説が、昨年夏に急にチャートインするという現象がありました。こちらもTikTokで紹介されたものだったと報じられています。「オススメの本の紹介」など、本に関する投稿が全世界から集まる「#BookTok」というハッシュタグも出てきており、こちらは総再生回数が178億回も! #BookTokからベストセラーとなる本というのがいくつも生まれているんです。

YoutubeやTwitterで紹介されて人気が出るものと傾向に違いは?

西崎さん:Youtubeは自分でタイトルやサムネイルなどから動画を選択して見る、いわば能動的なアクションを要しますが、TikTokは“おすすめ”というタイムラインに、自分の閲覧履歴から近いジャンルのものが自動的に流れてくる、いわゆる受動的な仕組みになっています。たまたま流れてきた動画から「気になって、買ってみる」という現象が起こりやすくなるんですね。

原口アナ:調べなくても情報が勝手に入ってくるのですね!

西崎さん:Youtubeの動画は短くても5分くらいが多いのですが、TikTokの多くは30秒くらいだったりするので「知らなかった情報を偶然知る」という機会も起こりやすくなります。

原口アナ:長さというのも大切なんですね。

西崎さん:TikTokユーザー特有なんですが、いわゆる“案件動画”を嫌う傾向があります。企業側の売りたいという気持ちが先行するコンテンツは避けられてしまい、バイアスのかからない、信じてもらえる情報でないと響かないんです。本のTikTok売れも、昨年頃からありましたが、けんごさんも含めてすべて読者の方が投稿したリアルな紹介動画が人気を集めています。

原口アナ:「面白い!」と熱量を持って伝えない限りはTikTokユーザーに伝わらないといえそうですね。過去の名作が発掘されるいい機会にもなりそうです!

これからも「TikTok売れ」は増えていく?

西崎さん:書店もTikTokから本が売れるという現象を認識してきているのがうかがえます。ぜひ書店に行ったら見ていただきたいのが、文庫本のコーナーなどで「TikTokで超話題!」といった帯がついた本が見られるようになってきたこと。TikTokでオススメされた本を並べたコーナーを作っている書店もあります。そうすることで若い世代の方に、本を手に取ってもらいやすくなるんです。過去の作品であっても書店側が販促しやすくなるということもありますね。

原口アナ:我々としても新刊以外のおすすめとして、こんな作品もあるんだ〜!と知るきっかけにもなるのでいいですよね。

西崎さん:本だけではなく、最近では「お菓子」などでもTikTokで紹介されて品切れになるものが出てきています。音楽や本だけでなく様々なジャンルで、今後、「TikTokで話題!」という文字を見かけることが増えてくるかもしれませんね。

原口アナ:流行の先駆けという意味での「TikTokで話題!」の文字、まずは書店で「TikTokで話題!」を見つけたら、ぜひ気にして見るようにしていただけたらと思います。
 
今回、お話をうかがったのは……西崎圭一さん
川崎市出身。立命館アジア太平洋大学卒。データ分析会社にて、データ分析、企業サイトディレクションなどを行うかたわら、採用コンテンツなどで企業取材・ライターとしても活動。若者文化とSNS、ネットミーム現象などに関する記事を各種メディアにて執筆。Twitter(@Kei_ASMR_TOKYO)でも情報を発信中。
 

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