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“仮面ライダー変身ベルト”は価格を上げギミックを再現したら売れた!アニメとスポンサーの「つかず離れず」絶妙な関係


SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は「ロボットアニメとスポンサー」についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん

アニメにおけるスポンサーの始まり

アニメのスポンサーは当初食品会社が多かったんです。今日のテーマの巨大ロボットでいうと最初にアニメ化された『鉄人28号』(1960年)はグリコがスポンサーでした。

ロボットアニメのスポンサーとして玩具メーカーが存在感を持つようになったのは、『マジンガーZ』(1972年)の存在が大きかったと思います。

『マジンガーZ』には、玩具メーカーのポピーがスポンサーについたんですが、これは当初入る予定だった万創という「飛び出す絵本」を作っていた会社が(おそらく経営不振で)スポンサーから降りたということが背景にありました。

ポピーは、第1話の試写を見てスポンサードをするかどうかを決めたといいますから、結構後になっての参加でした。そしてこの試写を見て、これはいけるという話になり、同社は「超合金」と「ジャンボマシンダー」という2つのラインナップを立ち上げます。

第1話の試写を見て参加が決まったので、この2つが発売になるのは放送開始より少し後になります。

「超合金」は亜鉛合金を使ったダイキャストモデル。金属製ですので、重くて精密感があるところが魅力です。「超合金」というネーミングも、作中の「マジンガーZは超合金Zで作られているので強い」という設定から引用されました。

もう1つの「ジャンボマシンダー」はポリプロピレン(シャンプーの容器などに使われていた素材)製で、全長60cmサイズの大きなモデルでした。

ポピーはその前年に『仮面ライダー』の変身ベルトでヒットを出しています。別の会社が本編のギミックが再現されてないベルトの玩具を出していたのに対して、もっと値段を上げて本編のギミックを再現したら売れるんじゃないかと考え、大当たりしました。

そんなポピーがロボットアニメに参加することになり、ロボットアニメと玩具業界はここでガッツリ手を繋ぐようになるわけです。

ロボットのギミックはどうなる?

ところが、アニメをベースにして玩具を作るとどうしても再現性が難しくなります。1974年の『ゲッターロボ』は飛行機3機が合体変形するロボットですが、その変形ギミックは玩具では絶対に再現が不可能なものでした。

ここで発想の逆転が起きます。玩具を前提にしたロボットをデザインして、それをアニメに出せばいいんだよということです。これが実践されたのが、『勇者ライディーン』(1975年)。

ポピー社の開発者とアニメスタッフが打ち合わせをして、まずギミックを考え、そこにディティールで飾り付けをする形で、主役ロボット・ライディーンができ上がりました。この時は、『ゲッターロボ』ではできなかった、本編中と同じ変形を再現できる玩具を出すというのが目的だったのです。ここでまたパラダイムシフトが起きて、玩具として魅力のあるギミックを持つロボットがまずあって、それをアニメに出していくという流れになっていきます。

ロボットアニメで面白いのは、テレビ番組的には視聴率が高い方がいいんだけど、メインのスポンサーからすると、おもちゃが十分売れていればそれでいいという、微妙なズレがあることです。

だから玩具さえ売れていれば、いろんな挑戦ができるようになる。原作付きでTV局の意向も強い19時台ではなく、放送のための費用が安い夕方枠がロボットアニメの主戦場になっていきます。これが、いろんな内容面での挑戦を可能にした背景にあります。

70年代にはいろんなタイプのロボットが作られました。玩具にはプレイバリュー(遊びがい)という考えがあります。変形させたり合体させたり、いろんな武装を追加できたりするのが楽しいよね、ということです。70年代の、後に俗にスーパーロボットとまとめて呼ばれる作品群が、いろんなタイプの主役ロボットなのは、番組ごとに新しいプレイバリューを開発していった結果、個性的なギミックが盛り込まれることになったからです。

リアルロボット!『機動戦士ガンダム』

いわゆる“リアルロボット”といわれている『機動戦士ガンダム』も、メインの商材はロボット玩具でした。『ガンダム』の時に設定されていたプレイバリューは、マッチ箱(コアブロックになったコアファイター)の上下にパーツを組み合わせることでロボットになり、この上下パーツをいろいろに組み合わせられますよ、というものでした。

だから、作中ではサポートメカのガンキャノンの上半身に、メインメカのガンダムの下半身がついたりすることはなかったんですが、おもちゃとしてはそういうことができるというのがウリでした。

ただ、これは『ガンダム』の人気が、玩具を好む層とはズレていた結果、売れませんでした。テコ入れで出した強化パーツ「Gメカ」を含む玩具セットは1979年のクリスマス商戦でかなり売れたそうですが、そのころには放送期間短縮が決まっており、『ガンダム』は全43話で終了となります。

その後、1980年になってから、バンダイがプラモデルを出し始めたら爆発的な人気になりました。それがいわゆる「ガンプラブーム」ですね。その後、『ガンダム』の制作会社サンライズは1994年にバンダイグループの1社になります。

それを受けて、2000年初頭の『機動戦士ガンダムSEED』くらいからは、放送と内容とプラモデルのリリースのタイミングをちゃんとすり合わせていこうという動きが明確になってきました。現在放送中の『機動戦士ガンダム 水星の魔女』も綿密なプランのもと、いろいろ進行していると思います。

ちなみに1995年には『新世紀エヴァンゲリオン』が登場するわけですが、このアニメには玩具プラモデルメーカーがスポンサーに付きませんでした。だからメインの初号機は、色が緑と紫と黒で、いわゆるヒーロー性のある色は全然使われていない。デザインもかなり怖い感じになっている。玩具メーカーのために、おもちゃやプラモデルを小学生に買ってもらおうという方向にいかなかったからです。この時、メインスポンサーはSEGAでした。

このように、スポンサーとロボットアニメはつかず離れずの関係にあるんです。特に70年代から80年代にかけてはスポンサーとの関係はとても大きかったのです。(2023年4月24日放送)

SBSラジオTOROアニメーション総研(毎週月曜日19:00~20:30 生放送)全国のアニメ好きが集まるラジオの社交場。ニッポンのアニメ文化・経済をキュレーションするラジオ番組。番組公式X(旧Twitter) もぜひチェックを!/パーソナリティ青木隆太、澁谷海音、藤津亮太

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