
今季2度目となった9月20日の「蒼藤決戦」は、藤枝MYFCが2―1でジュビロ磐田に勝利しました。藤枝は磐田に対し公式戦初勝利。歴史を刻んだイレブンは試合終了の瞬間、感情を爆発させて喜びました。選手と同等の熱さで戦っていた須藤大輔監督もベンチで派手にガッツポーズ。死力を尽くした選手を誇らしそうに見つめ、喜びをかみしめました。
―試合の総括を。
われわれのスタイルを出そうと。どことやっても逃げずにぶれずに、勇気、自信をもって攻撃的にやりましょうと話し、(それに対して)選手はしっかりプレーしたのかなと思います。キックオフから相手の立ち位置を見ながらボールを動かすことができていて、その中からゴールを奪えた。ゴールシーンは今回のテーマでもあったショートカウンターから狙おうということがしっかりできました。
われわれの超・超・超攻撃的エンターテインメントサッカーというのはボールを握っている時だけではなく、オフザボールの時にどれだけゴールを奪うためのマインドを持ってプレーできているか。そこをみんなで共有しましょうというところを具現化できました。
ありがちであるビルドアップのミスからの失点は、なしにしなくてはいけない。でも、それがあるからといってやめてしまうと、われわれのスタイルを表現できなくなる。選手はミスへの恐れと真摯(しんし)に向き合い、壁をぶち破ってボールを動かせていました。
後半はセットプレーからの得点。やはり相手のブロックや守備を崩すにはセットプレーはキーになるとずっと話をしていました。なかなか取れていなかったのですが、今回はそれぞれが役割を全うした結果、このようなゴールが生まれたのかなと。
欲を言えば、その後もっとボールを動かしながら時計の針を進めたかったのですが、少し圧をくらってしまった。でもゴールを守るために途中から入った選手も献身的にプレーしてくれて、逃げ切ることができました。クラブとしての成長が垣間見えた試合でした。
これまで全敗だった中、磐田から初勝利をつかめたことは自信を持って良い。試合前に「紙一重で負けていた試合は自分たちの手が届かなかったのではない。自分たちが逃げていたために届かなかった。相手がわれわれのスタイルを嫌がっているのであれば、とことんそれをやり続けましょう」と言いました。今後、どの相手とやっても表現できるようにやっていきたいと思います。
―矢村選手が役割を果たし2得点。それ以外でも多くの決定機をつくった。ボールを動かして勝機を見いだす藤枝らしさを発揮できた試合だったのではないか。
ただ単にボックスにボールを送り込むだけだと偶発性がある。われわれは再現性を求め、誰が入っても、どんな相手でも崩しきるというサッカーをしています。そしてフィニッシュを決めるのは前線の選手。今回であれば(矢村)健がしっかり決めきりました。
そういった選手が決めるとチームの士気も上がりますので、とても良い雰囲気で試合をコントロールできたのかなと思います。ただ、もっと点を取れるシーンはありましたので、そこで決めきることをチームとしてやっていきたい。1点差では何かあった時に同点、逆転されかねないので、もっと突き詰めていきたいです。
―主将の中川創選手の感情があふれていた。試合の中でも気合の入ったプレーを連発。チームへもたらした影響は。
ロッカールームから出る時の彼の一声に、全てが凝縮されていたのかなと思います。(磐田時代の)苦しかった時を乗り越えて今がある。その磐田に対して藤枝は今まで勝ったことがなかった。
今回は言葉だけでなく行動に起こして結果をつかんだ。男になったと思います。今まで良いゲームをしていてもつかみ損ねていた選手たちが、つかみ損なうことなくがっちり抱きしめながら勝ち取った勝利。酔いしれて良いのかなと思います。
この勢いを持って、もっと違うものをつかみにいけるように、ともしびを消さないでいきたいです。
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―後半のリード後も攻めの姿勢を緩めなかった。
守りきれる相手ではないと思いますので、ゴール前に壁をつくるのではなく、一個前でブロックをつくりながら下がったボールに対してはプレッシャーを掛けていく。攻撃ではもっとマイボールの時間を増やしたかった部分はありましたが、相手が前掛かりになっている背後をうまく取りながら脅威を与えていたのかなと感じます。だから守備一辺倒ではなかった。
勝つためにどうするかを今までのもったいない試合の中から学び、今回のような土壇場で共有できました。後から入った選手も使命やタスクを表現できていました。
―終わった瞬間の監督自身の気持ちは。
今まで全敗の相手。そして歴史のあるビッグクラブですから、ジャイアントキリングではないが(そこに打ち勝つ気持ちは)常に持っています。それを、頑張っている選手とともに、スタッフとともに、クラブとともに勝ち得られたことの喜びを感じた一瞬でした。この勝利に酔いしれながら、ただ満足することなく次の水戸戦に向かって頑張っていきたいです。
―得たものを継続するために大切になることは。
積み上げてきたことが間違いではなかったということが結果でも証明されたので、継続すること。でも継続するだけでは衰退していくのでもう一つレベルを上げていきたいです。プレススピードやボールをつなぐ位置など、もっと相手が嫌がるプレーをまた準備していきたいと思います。
―今回の試合で磐田より優れていた部分は。
ボールの動かし方は相手に脅威を与えていたのかなと思います。ただ単に速く攻撃するのではなくジャブのように相手をあえて動かし、もう一つ先の出口を探すためのボールの出し入れができました。
相手は個々の能力が高い分、量やコンビネーションはわれわれに少し分があったと思いますので、引き続きやっていきたいです。あとは決定的な場面をつくり出すことはもっとできると感じました。反面、今回はシュートへの意識が非常に高く、相手を凌駕していたのかなと思います。
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―サッカーの内容も県民にアピールできたのではないか。
MYFCの色を相当出せたのではないかと思います。常に言っていますが、ただ勝つだけではない。
台風15号で被害に遭われた方々にも、選手が頑張っている姿、全員で協力しながら相手ゴールまで攻めきる、ゴールを全員で体を張っても守りガッツポーズをしているシーンなどを見てもらえたとして、「また頑張ろう」と思ってもらえるようなゲームができたのかなと感じます。それは磐田があってこそ。
良い試合をしてもなかなか結果が出ない時期が今季も相当ありました。そうすると(やるべきことが)ぶれかねないのですが、そこでも選手がしっかりと向き合ってやってくれた。その結果がこうしてついてきてくれたのかなと思うので、「蒼藤決戦」がもたらしてくれた恩恵はものすごいものがある。
これを一過性にせず、まぐれだと言われないように、次の試合、次の試合を最高の試合にしていきたいと思います。