須藤監督が試合を振り返りました。

―試合の総括を。
前節、アウェーで非常に悔しい敗戦をした。なかなか勝ちきれない中で久々に負けたことが逆にスイッチになりました。今日もビルドアップからミスで失点してしまった。やはりそこはディフェンス陣とGKとボランチのせいだけではなく、相手のプレッシャーが来た中で、どうやってプレス回避の出口を探していくかという作業をしていかなければいけない。今日のようにプレッシャーが来るとロングボールを出すという場面が多発して、自分たちのリズムが全然つくれないという前半でした。どんなプレッシャーが来てもプレス回避をしていくという作業は全員でやっていきたい。本当に細かいと思います。1メートル、2メートルの立ち位置や角度、ボールのスピードだったり。そこを克服しなければずっとこのようなミスをしてしまうので1メートル、2メートルの誤差を修正していきたいと思います。
ただ、前半でしっかり追い付いた(ことは良かった)。相手もおそらく落ちてきていたと思います。あれだけプレッシャーに来るということは、イコール落ちるということ。ジャブのようにもっとわれわれは打たなければいけないと感じていますので無駄なパスではないというところをもっと意識して、相手を前後左右に動かす作業をしていかなければ。でもジャブが効いてきて相手が締められなくなり、キーパスが入るようになってからはチャンスが出てきたということを考えると、われわれのやっていることは間違いではないと感じます。
そして決めるべき時に決めきる選手がいるということはチームに勇気や勢いをもたらします。今までなかなかゴールを割っていなかった(シマブク)カズが点を取るのも、もしかしたら(矢村)健の効果というのもあるのかもしれない。健だけでなく、あのようなプレーをするとチームの士気が上がる。ライバルが決めるという悔しさはあるかもしれないのですが、同じポジションの選手たちも勇気をもらって「俺にもできるんじゃないか」といったプレーが多発していたのが後半でした。われわれのスタイルは後半の形なので、あれを前半からできるように、次はアウェーの長崎ですが、どんな相手にも立ち向かっていきたいと思います。
―矢村選手がワントップに入ったことで前線が活性化され、前線の先発3選手がそろって得点。良い方向に向かっていると感じる。
今まではどちらかというと後ろの選手が点を取ってチームを鼓舞していたのですが、やはりサッカーですから前線の選手がこうして結果を出すと、自分たちがやってきていることは間違いではないと勇気が湧きます。それが如実に出たのかなと感じます。ですから最初の1失点のところを修正したい。ビルドアップの出口をテーマにまた準備したいです。でも、こうしたサッカーができるんだということが改めて表現できたので、本当に自信を持っていいのかなと思います。
―浅倉廉選手もゴール、アシストとさすがの活躍だった。
この前、「王様になるぐらいのパフォーマンスを見せてくれ」という話をしました。それはただうまいというだけではなく、チームがつらいときにボールを失わないとか、走るとか、体力が限界の中でも決めきる、アシストするんだというところを、しっかり今回は出しました。最後は足をつりましたが、本当に期待に応えてくれています。廉がこのようなプレーをすると、若手や同じポジションの選手も「俺もやる」というマインドになっていくと思うので、残り11試合を一丸となって戦っていきたいと思います。
―矢村選手を即先発に起用するに至った判断はどのようなところで。
試合勘や体力はないのは分かっています。ただ彼を動かすマインドの部分。新潟でなかなか出番がない中でもしっかりやってきたというのが今回のパフォーマンスでも出ていますし、J1でもまれたという経験が無駄ではなかった。それをこのピッチでしっかり表現できていたと思います。本来ならもっと早く交代というのも考えていたのですが、思った以上に動けていましたし、何よりも戦う姿勢を前線で出してくれていた。あんなに小さいのにしっかり体を張る姿に昔を思い出しました。チームとしても昔の躍動感のあるサッカーを思い出した部分がありました。一人が入ることによっていろんな活性化が生まれた試合でした。同じポジションの選手がこれを見て、どう立ち振る舞うかというのも見ていきたいと思います。
―逆転後も緩めず攻め続けた。
そこで1点を守りきるというマインドで何度も追い付かれていますし、自分たちの時間ではないサッカーをして次節以降にも影響を及ぼすという部分がこれまでは出ていました。自分たちのサッカーを90分やる、というのを選手たちは今回しっかり具現化したと思います。暑くてきついですが、きついことをやらないと勝てない。われわれのスローガンであるハイエナジー、活力をもっと出して戦っていきたいと思います。
―矢村選手が決めたときの盛り上がりが非常に大きく、一体感が生まれたようだった。
試合前から健に先発でいってもらおうと決めた時から、彼がゴールすることを思い描いていました。前線の選手が決めるのはチームの士気が上がる。何より来た途端に決めることがどれだけの効果を生み出すかを本当に感じました。決めなくてもあそこに入っていく、飛び込んでいく姿勢がスタジアム全体を「いけるぞ」という雰囲気にしてくれた。1点取りましたが、得点以外のところでもスタジアムの空気を変える動きをしていた。それに触発されて選手全員、スタッフも含めて今まで足りなかった何かを感じたと思います。そこが一番のプラスの部分だと感じます。今回は今までの勢いとは少し違うと思いますので、もっと火を大きくして進んでいきたいです。
―後半に愛媛の中盤の選手が攻撃時に消えた印象だった。ハーフタイムでどのような指示を。
前半のあのプレス、強度は長くは続かないのではないかとベンチで話していましたが、あの1失点が尾を引いていました。ただ、われわれらしくしっかりボールを回していれば(打開できると)。オフのところで相手を動かして、オンのところで違いを見せられる選手がうちにはたくさんいます。前半は思うようにボールが回っていた中でディフェンスに回るともろさがあるというのは分かっていた。そのディフェンスに回った時にも逃げずにボールを回すことが大切だと言って送り出し、それができました。ストロングがあるイコール、ウイークもある。前半はストロングでやられていた。でもウイークが出てきた後半に畳みかけられた。そこだけだと思います。