語り:春風亭昇太

静岡市清水区柏尾にある光福寺。ここには、県指定文化財となっている鉄筋コンクリートで造られた本堂があります。
大正12年、関東大震災による火災で、それまであった木造の本堂が焼失してしまいました。「地震に強く、火災で燃えない本堂を」という柏尾の人たちの願いから、大正13年から昭和2年にかけて造られたのがこの鉄筋コンクリートの本堂です。
震災後、レンガ造りのように倒壊したり、木造のように焼失したりしないものとして広まったコンクリート造りの先駆として貴重な建物とされています。
特長的な窓枠の火灯窓や屋根の飾り、懸魚(げぎょ)などの伝統的な寺院建築の様式と新しい技術を融合させた独特のデザインは、近代建築としても評価されています。
昭和の初めに完成した当時から、この本堂での法要は椅子に座って行われていたといいます。光福寺に伝わる銅製の懸仏は、静岡市の指定文化財。神仏分離が行われた明治の初め、柏尾の人々によって近くにある熊野神社から移され、守られてきました。
鎌倉時代に制作された貴重なものもあると伝わります。太平洋戦争中、白い建物が目立って空襲の目標とならないよう、光福寺の本堂は、外壁を黒く塗って守られたと言います。
静岡市歴史めぐり まち噺し 今日のお噺しはこれにて。