語り:春風亭昇太

旧東海道 蒲原宿、ここに、天保10年(1839年)に建てられた渡邊家の土蔵が残ります。江戸時代初期から蒲原宿の要職を務めてきた渡邊家は、農業のかたわら天領の材木を商いしていたことから屋号を「木屋」と言いました。
この蔵は、韮山代官、江川太郎左衛門から、郡中総代を命じられた渡邊家の18代当主、渡邊利左衛門金璙が建てた三階建ての文書蔵で、金璙が当時の出来事を綴った「生涯略記」もここに残されています。
三階建ての土蔵としては、全国でも有数の古いもので、当時は珍しい「四方具」と言われる耐震工法で建てられています。三階までの23本の通し柱があり、それらを、中心に向かって斜めに立てることで強度を増すつくりになっているといいます。
土蔵の一階は、現在「木屋江戸資料館」として公開され、江戸時代の歴史、芸術、交通に関する多くの貴重な資料が展示されています。その中のひとつが、長久保赤水によって、描かれた「新刻日本輿地路程全図」。伊能忠敬によるものより、50年以上も前に描かれたこの地図には、日本地図で初めて緯度、経度が表されています。
また、天明5年(1785年)に描かれた世界地図もこの資料館で見ることが出来ます。ここでは、貴重な建物と資料の数々から、江戸の人々の生活や、文化を感じることができます。
静岡市歴史めぐり まち噺し 今日のお噺しはこれにて。