語り:春風亭昇太

静岡市の中心市街地に立つ、静岡市役所。昭和9年に完成した静岡市役所本館は、海外でも活躍した静岡県出身の建築家、中村與資平によって設計されました。近代庁舎建築の貴重な遺構として、平成8年に東京大学安田講堂などともに、日本で最初の登録有形文化財に指定されました。
外壁は象牙色のタイルを基調にテラコッタが多用され、鉄筋コンクリート造り4階建ての建物の上に2層の塔があります。通称「あおい塔」とも呼ばれている塔の上は、モザイクタイル貼りのドームになっています。中村與資平は、この庁舎にスペイン風を基調とする様式を採用し、「市の王冠としての意味」を担うものとして、ドームを配したとされています。
市役所としての機能は、昭和61年(1986年)に完成した新館に移されていますが、現在もこの本館にある議場で、静岡市議会の本会議が行われています。議場に足を踏み入れると、天井のシャンデリアや数々のステンドグラスに、歴史と風格が感じられます。玄関ホールでは、石の柱の中に化石を見ることができます。
アメリカやフランス、イギリスなど17国、90余りの都市の建築を1年かけて見てまわったという中村與資平の願いは、多くの人たちに使われ、長く残る頑丈な建物を造ることでした。その願い通り、静岡市役所本館は、静岡大火にも静岡大空襲にも耐え、現在もその姿を残しています。
静岡市歴史めぐり まち噺し 今日のお噺しはこれにて。