語り:春風亭昇太

徳川家康が眠る久能山東照宮には、家康ゆかりの貴重な品々が残されています。刀剣、甲冑をはじめ家康が身の周りで使っていた品々の中で世界的に注目されているのが、洋時計です。
暴風雨に遭って千葉県の御宿に漂着したスペイン船の船員たちを地元の海女さんたちが助け、家康は伊東で西洋帆船を作らせて船員たちを故郷に帰しました。家康の恩情に感謝したスペイン国王、フェリペ3世から慶長16年(1611年)に贈られたのが、この洋時計です。
ドーム状の屋根が印象的なこの時計を家康は大変気に入り部屋に飾っていたと伝えられています。日本とは時刻の示し方が違ったため、家康の死後もこの時計は動かされることはなく、大切に保存されてきました。
その結果、製造された16世紀当時のままオリジナルの部品が99%残り、世界的に貴重なものであることが、大英博物館の調査で証明されました。家康の平和外交の象徴として残されたこの時計は、当時の最高技術を結集した、日本最古のゼンマイ式時打付時計(ときうちつきどけい)であり、国の重要文化財に指定されています。
静岡市歴史めぐり まち噺し 今日のお噺しはこれにて。