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【校歌制定に新風】新設校は歌詞も曲調も「今っぽい」。学校統合​で​失われた貴重な歌も…

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「校歌制定に新風」。先生役は静岡新聞教育文化部長の橋爪充が務めます。 (SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2023年8月30日放送)
 
(橋爪)教育理念や地域の自然文化を織り込んだ高校や中学の校歌は、在校生のみならず、卒業生にとっても心のよりどころとして機能しています。社会の変容に基づいた学校の統合や新設が相次ぐ中、制定の方法や作者の人選にも新しい風が吹いています。この話題を8月27日の静岡新聞で取り上げました。

小、中、高、大学とそれぞれに思い出の校歌ってあると思うんですが、今、各段階において、少子化や過疎化のため学校の統合​が​続いています。そうすると、今まで歌い継がれてきた校歌がなくなってしまい、新しい校歌を作るっていうケースが多いんです。その場合、前の学校の校歌は、校歌ではなくて「愛唱歌」という形で名を変えて残るなど、いずれにしろ校歌でなくなってしまうということが相次いでいます。

(山田)ということは歌われなくなっちゃうんですね。

(橋爪)その代わり、新しい校歌が次々生まれているという状況も実はあるんです。

記事の中で取り上げたのが、今年4月に開校した県内初の夜間中学「県立ふじのくに中学校」の取り組みです。10代から70代の14人の1期生が、校歌をみんなで作ってるんですよ。

(山田)へえ、面白い。

いい意味で「校歌らしくない」

(橋爪)もう1つの話題として取り上げたのは、伊東高、伊東高城ケ崎分校、伊東商高の3校が統合して今年4月に開校した伊豆伊東高の校歌です。言い方が難しいですが、校歌らしくないといいますか、非常に今っぽい校歌なんです。

開校準備委員会として、旧3校の関係者の方々が集まって協議したんですが、その際に作詞作曲者を静岡県ゆかりの人に限定して選抜しました。作詞が、長泉町出身の20代の詩人水沢なおさん、作曲は打楽器奏者で作曲家の、静岡市清水区出身の杉浦邦弘さん。このお二方に依頼してできた校歌は、新時代を感じさせる爽やかな響きを持った楽曲です。
アレンジや曲調が特徴的なので、よかったら先にこれを聞いていただいて話をしたいなと思っています。

(伊豆伊東高ホームページ 校歌の項目参照)

(山田​)​これが新しい校歌!確かに校歌っぽくはないですね、アニソンっぽくないですか?

(橋爪)出だしの歌詞が、「あれは 光る海だ」。指示語から始まる校歌ってあります?

(山田)確かに今っぽいかも。

(橋爪)作詞の水沢さんは中原中也賞という現代詩の登竜門と言われている賞を取っている方で、この校歌の歌詞も、通常の校歌よりも少し現代詩寄りなんですよね。
「やわらかく呼吸する 大室のやまなみ」など、イメージの膨らみを重視した表現で、こういう歌詞っていうのはあまりこれまでなかったかなって感じています。テクニカルな言葉の使い方をしてるなっていう所もありますし。これ2番までしかないんですが、この辺も今っぽいです。

(山田)普通は校歌って4番くらいまでありますよね。

県内の校歌は著名人も作詞作曲


(橋爪)今回の取材中に、県内の公立高校を中心とした校歌の作詞作曲者のリストを手に入れまして、興味深いことがいくつかありました。

作曲者として一番名前が多い方は、信時潔さんっていう人なんですね。この方はお年を召した方ならご存知の方だと思うんですが、戦前に「海ゆかば」っていう曲を作られています。太平洋戦争中によく歌われていて、第2国歌とすら言われていた曲なんですね。これを作った信時潔さんが、県内の10校の校歌を作曲しています。ちなみに山田さんの母校・静岡市立高も信時さん。

(山田)本当だ!知らなかったです。

(橋爪)だから信時さんグループっていうのが、県内の学校の中にはあると。勝手に私は認定しました。清水東高や浜松工業高、沼津市立高なども同じ作曲者です。

著名人も本県の校歌をいろいろ作ってまして、吉原工業高は、井上靖さん作詞、芥川也寸志さん作曲。藤枝西高の作曲は、團伊玖磨さん。

比較的新しい学校では、2009年開校の遠江総合高が、谷川俊太郎さん作詞、谷川賢作さん作曲と、親子で作っているということです。
伊豆中央高は、三木卓さんが作詞ですね。清水桜が丘高、科学技術高の校歌も三木さんの作詞です。

(山田)すごいですね。

(橋爪)ちょうど静岡新聞で三木さんが連載をしているので毎月お話する機会があって、そんな話もちょっとしましたら、「校歌っていうのは非常に大事なものなんで、かなり考えて作らなきゃいけないんだよ」なんて話もしてらっしゃいましたね。

(山田)先ほどの伊豆伊東高の校歌はかなり近代的だったじゃないですか。やっぱりある程度のラインっていうのがあるんですか。

(橋爪)伊豆伊東高で取材した際にいろいろお話を伺ったのですが、学校の伝統と、地域の風物詩な文化などといったものを入れてくださいっていうのはお願いするようです。キーワードとしてそういうものが歌詞の中に残っているケースが多いですよね。伊豆伊東高の歌も、大室山って言葉が出てきますし、「オレンジの波打ち際」「紺碧の空」など、あの地域を思い出させるようなキーワードが随所にちりばめられていますね。

「もったいない」事例も

(橋爪)統合することによって、かつての校歌が失われてしまうって話をしたと思うんですけれども、大変もったいない事例もこのリストの中にありまして。一番これはもったいないなと思ったのが清水商高ですね。今清水桜が丘高ですけれども、清水商高の校歌は、北原白秋さん作詞、山田耕筰さん作曲で1930年に制定されていたんです。

(山田)教科書に載る2人ですね。

(橋爪)そうですね。「からたちの花」「この道」。教科書に載っている曲を作った2人が、校歌を作っているということがあったんですね。清商のその歌詞を作る際に、北原白秋さんの前に本当は若山牧水さんが作るはずだったっていう話もあります。

近年だと、ポップミュージックの世界から寄与するケースが多いです。天竜高と駿河総合高は2010年代に学校が開校していますが、爆風スランプのサンプラザ中野くんが作ってますね。

(山田)校歌って誰の胸にも残るものなので、それぞれにやはり思い入れを持って作っていらっしゃる。これからも、新しい校歌がどんどん見出されていくのではと思います。今日の勉強はこれでおしまい!

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