
【静岡県の高校演劇】今年の県大会はオリジナル創作が目白押し! 11月25、26日は静岡市民文化会館へ。地区代表12校の熱演をぜひその目で

(山田)今日は高校演劇の県大会に関する話題ですね。
(橋爪)はい。前回、詩人をサッカー関係者に例えたら分かりにくいと言われまして…。
(山田)いろいろと皆さんから評判をいただきましたよ(笑)。
(橋爪)またサッカーに例えましょうか。
(山田)いや、いいです(笑)。
(橋爪)静岡県は「演劇の都」構想を掲げているということをこの番組でもご紹介したことがありますが、静岡県としてはユース年代の育成というのは非常に大事なんです。
(山田)だから清水南高校に演劇の専攻ができるという話がありましたよね。
(橋爪)第102回全国高校選手権県大会は静岡学園の優勝で幕を閉じましたが、演劇部の世界でも同じように本県から全国を目指す大会が11月25、26の両日、静岡市民文化会館で開かれます。県内各地区から推薦された12校が公演し、2024年1月20日、21日に甲府市で行われる第59回関東高等学校演劇研究大会への推薦校を決定します。
(山田)今はどこの演劇部が強いのかということをあまり知らないんですよね。
(橋爪)その辺りをお話したいと思います。
(山田)お願いします。
(橋爪)高校演劇は最近盛り上がっていると言われています。山田さんは大学で演劇を学ばれていたんですよね。
(山田)そうなんですよ。
(橋爪)高校演劇の演目がプロ劇団に取り上げられたり、作品が映画化されたりしています。その中には長い間人気を誇っている事例もあります。具体的に言うと、城定秀夫監督の「アルプススタンドのはしの方」という作品があるんですが、兵庫県の東播磨高校の戯曲を使っているんです。面白い映画なのでぜひ見ていただきたい。
野球場のアルプススタンドにカメラを固定し、“端っこ”というワンシチュエーションで繰り広げられる会話劇です。第63回全国高等学校演劇大会で最優秀賞に輝いている作品で、映画は2020年に公開されましたが、何度もリバイバルされていて今年の東京国際映画祭でも上映されました。
以前も話しましたが、県内ではSPAC県舞台芸術センターの中高生対象のスクールが実施され、来年度からは清水南高校に演劇専攻が設けられるという動きが出ています。切磋琢磨することは大事だと思うんですが、今、県内に演劇部がある高校はいくつあると思いますか。
(山田)そんなに多くないんじゃないかな。
(橋爪)静岡県高校文化連盟によると、2022年度に演劇部があった高校は62校でした。
(山田)思ったよりあるんですね。
(橋爪)5年前の2017年度は67校だったので少し減っていますが、それでも2校に1校ぐらいはある計算になります。
高校演劇にも全国高校総合文化祭の演劇部門という全国大会があります。これも以前この番組で触れましたが、毎年夏に行われています。野球で言えば甲子園大会のようなものです。これからお話する県大会は地区予選に当たるものと言っていいと思います。どういう道筋で全国大会への出場が決まっていくかについて説明したいと思います。
(山田)お願いします。
全国への道はここから始まる
(橋爪)まず、東部、中部、西部の地区大会で選出された12校が県大会に臨みます。今年も、12校が出揃って県大会に備えて稽古をしているという段階になります。県大会の最優秀賞1校と、優秀校4校のうち1校が県代表として、関東大会に進みます。野球なら東海4県の大会といったところですが、高校演劇の世界では静岡県は関東大会に組み込まれています。静岡県代表は東京、神奈川、千葉などの代表が集うブロックに入ります。全13校から最優秀1校が全国大会の切符を手にできます。別ブロックの大会が別の日、別の会場で行われ、こちらは長野、群馬、埼玉などの12校から最優秀校が選ばれます。
それぞれのブロックで優秀校が4つずつ選ばれるんですが、全8校の中から推薦された1校も全国大会に進みます。
(山田)レギュレーションは分かりましたが、審査はどのように行っているんですか。
(橋爪)審査員はプロの脚本家や演出家、高校演劇の事務局の方が務めます。都合4日間かけて、25校の芝居を全部見て、評価を下さなければいけないので大変ですよね。
(山田)上演時間の制限のようなものはあるんですか。
(橋爪)1時間という枠が決められています。時間をオーバーすると失格になってしまいます。
厚い「関東」の壁
(橋爪)ここで、静岡県の代表がこれまでどういう成績を収めてきたかというところを紹介したいと思います。(山田)教えてください。
(橋爪)関東大会は1966年から行われているのですが、初挑戦は1977年の沼津工業高でした。初めての全国大会出場は1996年の浜松海の星高(現・浜松聖星高)。部員の創作脚本で全国大会の最優秀賞に輝きました。
(山田)へぇー。
(橋爪)2007年は三島南高と富士高が同時出場。2016年には伊東高が「幕が上がらない」という作品で全国大会優秀賞に選ばれています。
ただ、関東大会を勝ち上がるのはなかなか難しいんです。2000年以降の全国大会出場はわずかに4校だけ。なかなか関東の壁は厚い、ということがお判りいただけると思います。
そこに挑戦すべく今年も12校が県大会に集まります。最初に出場校の名前を挙げておきます。東から順に、韮山、三島南、富士、富士宮北、富士見、静岡、静岡城北、浜松湖北、浜名、浜松聖星、浜松開誠館、浜松市立。ちなみに昨年は浜松開誠館高と三島南高が関東大会に進んでいます。わたしは昨年、取材で全演目を見たんですが、この2校はやはり素晴らしかったですね。
静岡県大会の見どころは?

今年についても見どころはまずこの2校だと思います。もちろんメンバーは入れ替わっているのですが、浜松開誠館高は顧問の福岡大吾先生の脚本作品でタイトルが「舞台監督」。演劇の舞台監督を描いた作品のようです。三島南高の演目は「銀河のかたすみで」というタイトルで、高校や大学の演劇では比較的知られた作品。ラジオ局を舞台にしたシチュエーションコメディとのことです。
(山田)聞いたことがありますよ。
(橋爪)続いて、2021年度の県代表だった静岡城北高にも注目しています。「サチアレ」という作品を上演しますが、部員の網野祐一朗さんのオリジナル脚本です。今年はとてもオリジナルの創作劇が多い気がします。
(山田)すごいですね。
(橋爪)東部地区の出場校は多くが先生か生徒の脚本です。
(山田)いやあ、面白いな。
(橋爪)最後にもう一つだけ注目校を挙げます。「ウソクサ」を上演する静岡高です。中部地区の秋季公演のパンフレットによると、部員が1年生4人だけで、10月22日に行われたこの公演が初舞台だったそうです。それなのに中部地区の最優秀校に選ばれています。
(山田)すごい。いいじゃないですか!
(橋爪)作品は高校3年の演劇部員2人が最後の公演に向けて練習に励む、というのが基本設定のようで、リアルな本人たちと正反対なんですよね。これをどう上演するのか。とても楽しみです。
(山田)いやぁー、見たくなりました。
(橋爪)高校演劇の県大会は、コロナ禍ということで昨年まで入場に制限を設けていたのですが、ことしは誰でも入れるそうです。11月25、26の両日、会場は静岡市葵区の静岡市民文化会館です。1日6校見ると、それだけで静岡の高校演劇に詳しくなれます。ぜひ高校生の熱い演技を観ていただけたらと思います。
(山田)静岡でもいい演劇文化をつくってもらいたいですね。
(橋爪)それにはユース世代の育成が鍵です。
(山田)最後はサッカーに例えていただきました(笑)。今日の勉強はこれでおしまい!
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