【富士山の入山料義務化】入山料はなぜ必要なのか?導入に向けた課題は?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「富士山の入山料義務化」。先生役は静岡新聞論説委員長橋本和之です。
※SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」で放送したものを編集しています。

登山者アンケートでは86%が入山料義務化に賛成

(山田)今日は富士山の入山料についてのお話ですね。

(橋本)8月1日から3日までの富士山臨時支局の開設に合わせて、山梨日日新聞社と合同で登山者アンケートを実施しました。山梨側と静岡側でそれぞれ125人ずつ回答を得ました。その内容を見ていきたいと思います。

(山田)アンケートでは、まず入山料の義務化については86.0%が賛成、反対意見は9.6%でした。賛成が多かったですね。

(橋本)そうですね。入山料の義務化については現在、静岡県と山梨県との間で協議をしてますが、法定外目的税の導入を検討しています。今は協力金という形で任意でいただいてる入山料を、入山する皆さんに等しくして負担していただこうという考え方です。

(山田)税金として取るみたいな感じですね。

(橋本)まさに税金です。地方自治体が税金をかける場合は、地方税法という法律で税目が決まっています。その地方税法の税目に含まれていない税金を条例で作って取ることができるという仕組みを法定外税と呼びます。

また、目的税というのはあらかじめ使途が決められている税金のことを言います。今回検討が進んでいる入山料の場合は、富士山の保全や啓発に使いましょうということで法定外目的税化を目指そうという話になっています。

(山田)なるほどだから法定外目的税なわけですね。いま任意で協力を求めている入山料っていくらなんですか。

(橋本)1000円です。余分に払ってもOKです。任意ですから1000円以下でもいいんですが、一応1000円を目安としています。

(山田)僕も数年前に登ったときに1000円を払った思い出があります。アンケートでは徴収額についても聞いてますね。

(橋本)入山料の義務化に賛成と答えた人のうち、現状と同じ1000円でいいんじゃないかという方が72%でした。もっと高くてもいいんじゃないかという回答が17%。もうちょっと安い方がいいよというのが10%ぐらいでした。

一方、義務化に反対と答えた人のうち、そもそも任意で集めている協力金自体に反対ですという方が8%ほどいました。

(山田)任意でお願いしている入山料はどのくらい払われているんですか。

(橋本)静岡、山梨両県が保全協力金の徴収状況をまとめていまして、2022年度の数字ですと、静岡、山梨両県を合わせて10万6000人が協力金を支払いました。協力率ですが、静岡側は3つの登山口を合わせて57%。山梨側がもう少し高くて72%でした。

(山田)入山料を払うということは使い道も登山者からしたら気になりますね。

(橋本)検討しているのは目的税ですので、富士山の環境保全などに資するということになるんだと思います。アンケートではどういう使い道がいいかも聞いているんですけど、複数回答を可能にしたら「環境配慮型トイレの整備」が250人のうち190人に上りました。それから登山道の維持補修が179人。救護所の運営が106人と目立ちました。

(山田)海外の人も来るから日本のトイレは綺麗であってほしいですし、登山者が上りやすい登山道を整備してもらいたいというのは分かりますね。

(橋本)安全にも関わりますし、登ってる方に聞いているので登山をする上で環境が良くなる使い道に期待する回答が多いのは当然かなとは思いますね。

(山田)富士山にそれほど登っていない僕からすると、個人的には1000円以上でもいいのかなとも思いますね。

(橋本)そういう議論はあります。富士山もコロナ禍が始まってからはガクッと登山者が減りましたが、海外の方の旅行が解禁されると外国人の登山者も増えてきます。開山日は7月から9月上旬までと短いので、土日やお盆休みの時期に登山者が集中します。そうすると、写真で見たことがあるかもしれませんけれども、頂上から下を見ると光の列がずっとできている状況になります。

それは富士山の環境保全の上で良くないんじゃないかということが今までも指摘されていて、対策を講じますというのがユネスコとの約束にもなっています。その方法の1つという意味合いも入山料にはあるので、3000円、5000円などと高い方が入山の抑制に役立つんじゃないかという考え方もあります。

今年は似た内容のアンケートを山小屋の経営者の皆さんにも行いました。

(山田)結果はどうだったんですか。

■公平性やコストなど課題は山積


(橋本)6割の方が入山料徴収に反対でした。登山者の負担が増えるということと、払う人と払わない人が現実的に出てきてしまうのではないかという公平性に対する懸念でした。義務化したとしてもなかなか徴収するのは難しいんです。例えば登山道の入口にゲートを作ったとしても、そこじゃないところからも正直登ることだってできてしまいます。

(山田)時間帯もありますもんね。

(橋本)そうですね。人を24時間配置して徴収するのかということにもなります。今の協力金は1人1000円なんで、10万人が払ったとしても1億円ぐらいなんですね。山梨県と静岡県で分けると数千万円という数字です。例えば徴収する人を24時間配置するとそれなりにコストがかかります。税収とコストが見合うのかということなど、いろいろな課題があります。

(山田)今の話を聞くと、山小屋の方たちが反対というのは納得する部分もありますね。毎年富士山に登っている愛好家の方たちや外国の方、地元の意見というのをいろいろと集めないといけないですね。今回のこのアンケート結果はどのように感じましたか。

(橋本)一定の入山料を負担してもらって富士山のために使った方がいいということに関しては、割と理解が進んでるのかなと感じました。ただ、方法論になるといろんな課題や考え方があるので、そこはもう少し時間をかけて議論し、大義や方法論を固めていくことが必要じゃないかなと思います。

(山田)静岡の富士山ですから、改めてみんなで考えるべき問題かもしれませんね。

(橋本)今の環境をできる限り残し、改善できる部分があれば改善して後世に繋いでいくというのがやはり一番大事なことです。その視点からいろいろな問題を解決していくための努力をしていかなきゃいけないんじゃないかと思います。

(山田)入山料義務化のアンケートについては8月11日の静岡新聞朝刊に掲載されていますので読んでみてください。今日の勉強はこれでおしまい!

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