【地域の側溝清掃】高齢化で作業続行に不安の声。でも、生活のためには必要!今ある行政側の支援や今後の課題とは?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「地域の側溝清掃」。先生役は静岡新聞の山本淳樹生活報道部長が務めます。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2025年7月10日放送)
 (山田)今日は町内会・自治会の話題ということで、われわれにとって身近な話題ですね。

(山本)静岡新聞社では「NEXT特捜隊」という、読者の皆さんに会員になっていただき、世の中で感じる身近な疑問を寄せてもらい、私たちが取材して調べたことを紹介するページを作っています。

梅雨前に、静岡市清水区の72歳の男性から「自治会で側溝を清掃したが、ふたを開けるので大変な作業だった。参加者の高齢化が進み、この先どうしていったらいいのか」というような意見が届きました。

なかなかこれは難しい問題で、われわれもそれに対してうまく答えられたかどうか分からないんですが、今は地域の側溝清掃がどういう仕組みなのか、活動を続けていくにはどうしたらいいのか、といったところを行政や専門家に話を聞いて調べてみました。

(山田)その様子をまとめたものが6月27日金曜日付静岡新聞のNEXT特捜隊のページに載っていますね。僕は町内会や自治会の行事への参加はなかなかやれてないんですが、積極的に参加しているという番組スタッフから、年度初めで一番最初にあるのがこの側溝の掃除だと聞きました。側溝のふたを開けるのは相当大変らしいですよ。

(山本)そうなんですよね。側溝というのは、住宅街ならほぼどの道路にもあると思いますが、主に雨水を溜めて流すものですね。これは下水の方につながっていて、道路に水が溜まらないように設置されているものです。

それが、例えば土砂で埋まっていたり草木が生えてきたりしてスムーズに流れないような状態になったとき、側溝が機能していればそのまま流れるはずの水が、住宅の周りであふれてしまって危ないということです。住宅の床下浸水など災害につながる恐れもあるため、おそらく情報を寄せてくださった方も、雨が増える時期より前に、一斉に行う清掃を毎年やってきたのだと思います。

側溝には形が色々

(山本)静岡市の場合についてですが、側溝の形から改めて調べてみました。実はいろいろな形があって、先ほど話に出た「ふたを外すのが大変」というのが、「U字側溝」といって、道路脇のU字形の溝に水を流す形です。これはかなりポピュラーなものだと思います。

(山田)溝の断面がU字ってことですね。

(山本)そのままだと穴が開いた状態なので、そこにコンクリートのふたが載せてあるのですが、これが1枚40キロぐらいあるそうなんです。

(山田)そんなにあるの?!

(山本)だいたいそのくらいの重さだということです。しかも何かが詰まっていたりして、簡単には外せないときもあります。子供の頃に、ボールなんかを落として開こうとしてもなかなか開かなかったっていうような経験もあるかもしれませんね。掃除するときにはそれを外してきれいに土砂を取り除いて、また元に戻す必要があります。若い人は難なくできるかもしれませんが、年を取ってくると大変です。女性にとっても大変で、なかなか1人ではできない作業です。

(山田)鉄の棒のようなもので開けられるんですね。

(山本)そうです、ふたを持ち上げるための工具も​あるんです。

(山田)ほかには「L字側溝」があるんですね。

(山本)これもやはり道路の両脇が低くなっていますが、ふたみたいなものはなくて、グレーチングという金属製の下が透けて見えるようなものが一定区間で付いていて、そのあたりに雨水ますという水をためる設備がありますね。

そのグレーチングのある所に水がたまる構造です。U字側溝に比べるとメンテナンスが非常にしやすく、部分的にしっかり清掃するという考え方だと思います。それ以外にも「都市型側溝」というものもあります。

(山田)都市型?

(山本)そもそも側溝があること自体が分からないように、ふたがなく、線状の隙間からそのまま下に水が流れていき、下水に土砂が入り込まないような作りです。

(山田)街中にあるようなものですね。これはふたがないってことは、ほぼ清掃しなくていいってことですか?

(山田)この側溝は、他の側溝のような掃除を省けるという説明でした。ということで、新しい道路からだんだん、メンテナンスフリーの方向へ整備してきているということが静岡市の担当職員の方の説明で分かりました。ただ、まだまだ、U字側溝が使われている所も当然多く、清掃は非常に大変なんですよね。

(山田)今、誰が住んでるか分からない世の中だと、「自分の家の前だけきれいになってればいいな」っていう考えになっちゃうと思います。でもそれじゃ駄目なわけですよ。

(山本)そう。結局側溝というのはずっとつながっているので、自分のうちの前だけスムーズに流れたとしてもその次の区画でたまっていればあまり意味をなさないんです。

(山田)だからこそ、町内会・自治会でやる必要があるということですね。

本来、誰が管理しているの?

(山田)「ふたを開けてもヘドロの土を袋に入れるのも大変」「自治会を通じて要望を出して沼津市にやってもらっている」「清掃に参加できないお宅から3000円いただいて組費に入れている」など、色々な方からの声が届いています。この側溝掃除、やっぱり大変なんですね。

(山本)個人的に疑問に思ったのは、道路自体は市が管理していて、静岡市の住宅地ならほとんどが市道なのに、そこに付随するこの側溝は誰が管理して、本来は誰がきれいにすべきなのかということです。

(山田)確かに。

(山本)「管理してるのは誰なんですか」と市役所の方に聞いてみたところ、本来は維持管理する責任は道路管理者に責任があるということでした。市道の場合は市にあるということなんですね。本来は、市がきれいにする必要があるけれども、それをそのまま言葉通りに、行政で税金を使って人を雇うなどして全ての道をきれいにすることができるかっていうと、現実的にはこれは無理なんですよね。

ほぼ全ての道路に側溝はあるので、どうしても地域住民の手を借りてやらなければならず、「ぜひとも協力してほしい」というのが市のスタンスだということです。スムーズに水が流れなくて困るのは、やっぱり地域の住民。「自分の地域を自分できれいにしよう」という気持ちで毎年決まったときに清掃するというのは、行政に任せずに行う「住民自治」の一つの姿だなと思い、それはそれで納得はしています。

(山田)確かにそうですね。自分たちの町内会で掃除をやるってのは当然だろうという考え方も分かります。

自分たちの地域のことをみんなで考える


(山田)リスナーからたくさん疑問やご意見が届いています。「欠席世帯からのお金の徴収は、昔からの付き合いがあり難しい」という声もあります。

(山本)そうですよね。それぞれの考え方もあり、非常に難しい問題です。

(山田)ここで結論が出ないのは分かってるんですが、どうしていけばいいのでしょう。

(山本)同僚の記者が、町内会や自治会の活動に詳しい専門家の方に話を聞いたところ、今は、「行政は行政でやるべきことが非常に増えている世の中」だということです。例えば税金を使って作った公共施設や道路自体が老朽化しているので、それを造り替えないといけない。そういった状況にあるため、まず住民が、側溝清掃のような今まで行政の仕事だと思っていたことに協力していくのは不可欠であると。逆に行政は、「なぜ側溝清掃が必要なのか」をもっと周知すべきで、今はそれが足りないという指摘をしていました。

(山田)なるほど。

(山本)清掃に参加しない方もいますが、「その結果困っちゃうのは自分たちの地域なんだ」ということを行政が意識的に伝える必要があるのですね。

静岡市では、葵区や駿河区の場合は静岡土木センターというところに予約をすると、側溝のふたを持ち上げるための専用工具を貸し出してもらえます。また、取った汚泥は回収に来てくれます。行政として何もしてないわけではなくて、そういった支援はやっているということです。ただ、それが今使いやすい仕組みになっているのかどうかを、もう1回考える時期じゃないかと思います。例えば工具についても、静岡市の場合は借りに行かないといけないんですが、お金を出して自治会でそれぞれ購入する方が実は良かったりするかもしれません。

ほかに、識者の方が話していたのは、「いろんな地域の自治会とか町内会の活動に側溝清掃を加えて一つのイベントのようにしたり、あるいは地域の学校や企業やを巻き込んだりして、住民だけではなくて地域全体でやっていくと参加が増えるのではないか」ということです。

(山田)楽しいと、もうちょっと参加が増えるのではないかと。

(山本)識者は「地域自体が高齢化していて、地域の活動に活発な方も高齢化しているので、そこを何とか多様化させて、活性化していくことを考えるべき」という意見も持っていました。若い人がどうやったら進んで入ってくれるのだろうかということですね。

昔は地域のことは地域でやるのが当たり前で、若かったら例えば消防団などの地域の団体で活動することが普通でした。ただ社会自体が非常に多様化していて、勤め先が遠かったり、休みの日もそれぞれ違ったりしている中で、どうしたらいろんな人が参加できるかを考えなければいけない。若い人も男性も女性も高齢者も外国人も入れて活性化していかなければ、地域の高齢化への対処はますます厳しくなっていくと思います。

(山田)もうやってるかもしれないんですが、例えば地域に根ざした企業やスポーツクラブの選手たちが入ってやっていく。例えば、SBSラジオだったら僕らパーソナリティが行ったり。ジュビロやエスパルスやMYFCの選手たちが行ったり。そういうところが、地域住民と一緒にやっていくというのも一つ案なのかなと思いますけどね。

(山本)そうですね。

(山田)答えが出る話じゃないかもしれないし、各地域や自治体によっても違うと思います。例えば静岡の呉服町や鷹匠と、山間地域だとまた違うじゃないですか。

(山本)そうなんですよ。本当に、個々の自治体によって状況が全然違うので、ひとまとめにして話すことはできないんです。でも困っている地域があるのは事実で、どのように地域の高齢化と対峙(たいじ)しながらやっていくかが、一つの大きなテーマになっているんじゃないかなと思います。

(山田)山本さん、またこの地域に根ざした情報をお願いします。今日の勉強はこれでおしまい!

SBSラジオで月〜木曜日、13:00〜16:00で生放送中。「静岡生まれ・静岡育ち・静岡在住」生粋の静岡人・山田門努があなたに“新しい午後の夜明け=ゴゴボラケ”をお届けします。“今知っておくべき静岡トピックス”を学ぶコーナー「3時のドリル」は毎回午後3時から。番組公式X(旧Twitter)もチェック!

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