
寄附額は100倍に
(橋本)ふるさと納税制度において、地場産品に該当するかどうか曖昧な返礼品が増えていることを理由に、総務省は10月からルール変更し線引きを厳格化することを決めました。自治体の返礼品競争を脱し、生まれ故郷への支援など本来の趣旨に立ち返るため、制度を抜本的に見直す時期だといえます。
(山田)いろんなメディアで取り上げられているニュースですね。
(橋本)本来ふるさと納税というのは、自分の生まれ故郷や応援したいと思う自治体に貢献するための制度です。寄付する自治体を自分の意思で決められるのが特徴です。
それから税源を移すという目的もあります。都市部には人口や企業が多く税源が集中しがちなので、財源の苦しい地方に財源の一部を回すということです。
(山田)返礼品がいろいろあって楽しいですよね。
(橋本)今は専門のWebサイトができていて、返礼品を見て寄付する自治体を決めるという方も多いですね。
(山田)サイトもすごい見やすいです。
(橋本)人気はどんどん高まっています。2008年に導入したときの寄付額は80億円ぐらい。それが2021年には8300億円。なんと約100倍に伸びているんです。
(山田)すごい!市町村にとっては良いですよね。
(橋本)寄付する方も応援したいところにお金を送れるし、返礼品をもらえるメリットもあるので。いいことばかりのように思えるんですけれども…。
(山田)けれども?
人気の制度、だけどいいことばかりではない?
(橋本)ふるさと納税は寄付したお金の一部が返礼品として返ってくる。つまり、本来だったら行政サービスのために使われるはずだったお金が、返礼品や、ふるさと納税を募ったり返礼品を送ったりするための経費として消えてしまうということになるんです。現在、ふるさと納税の経費は返礼品を調達する金額も含めて5割。つまり納税額の半分が経費に消えてしまってると。そういう制度でもあるんですね。
(山田)ただ、地元の企業に返礼品を発注することで、企業にお金が入ることを考えたらアリかもしれないですけど。それだと結構遠回りになるのか。
(橋本)そうですね。もちろん地元の産業振興になっているという側面はあります。一方で、魅力的な返礼品のある地域とそうでない地域との間で格差が出てしまっているという側面もあるんです。
(山田)一時期ありましたよね、Amazonギフトカードを返礼品にしてしまうとか。そこまでいっちゃうとおかしいですよね、地場産品じゃないものをあげて人気獲得の方向に行っちゃうと。
(橋本)そのため総務省は何回も制度改正をしています。例えば、地元産ではないお肉を買ってきて、それを熟成するという名目で地元に保存。しばらく置いておいたら「地場産品ですよ」と、返礼品にしていた事例がありました。そういうことはまかり通らないということで、今回の改定で厳格化すると。
(山田)結構厳しくなるんですね。
(橋本)地元で生産された原料であることが必要になります。
今後ふるさと納税はどうなる?

(山田)ふるさと納税、橋本さんは今後どうなっていくべきだと思いますか?
(橋本)自治体を応援したい、ふるさとに貢献したいという思いで寄付をしてもらうのが本来の趣旨であったのに、今はそれよりも、どんな返礼品があるかで自治体を選んでいる納税者の方が多いと思うんです。それはしょうがないと思います。
ただ、本来だったら全て税収になるはずだったものの半分を使ってふるさと納税をやることが本当に必要なことなのかという疑問は常について回ります。
所得が少なくて納める税金が少ない人よりも、たくさん納めている人がふるさと納税をたくさんやれば、それだけリターンが多いという逆進性の問題もある。
そうしたいろいろな矛盾を考えると、やはり制度を変えていくべきかと。返礼品の内容を争ったり、ルールの抜け道を探すような競争を自治体にさせるのが本当にいいのかと考えると、本来の趣旨に沿ったような制度に変えていくことが必要だと思います。
(山田)施設に寄付とか?。
(橋本)例えば「山林の資源管理のための整備をします。だから寄付してください」というような形にして、市の政策やその地域の取り組みを応援する。純粋にそのための寄付にするというのも一つのやり方かなというふうに思います。
ふるさと納税はいろんな考え方があるので、様々な議論をして今後のふるさと納税のあり方をこれから検討していくべきだと考えます。
(山田)僕はある意味このふるさと納税を楽しむこと自体は全然良いことだと思ってるんです。ただ、ふるさと納税は元々どういう趣旨なのか、このままこれだけやっていていいのかというところは考え直す必要がありますね。今日の勉強はこれでおしまい!