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【徳川家康公ゆかりのクラフトビール】誕生秘話を解説 注目すべきは静岡大の研究所だ!

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「徳川家康公ゆかりのクラフトビール」。先生役は静岡新聞教育文化部長の橋爪充が務めます。
※SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」で放送したものを編集しています。

(橋爪)5月25日付の静岡新聞で、「家康公クラフト」が完成したという記事を書きました。クラフトビールについては割と長く取材しているものですから、今回の動きも興味深いなと思っていろいろ情報収集しておりました。

(山田)そもそもなんでこういうビールを造ることになったんですか。

(橋爪)大河ドラマを観光振興に役立てようと静岡市を中心に組織した協議会と静岡大学が手を組み、3つの醸造所に醸造を依頼して造りました。それに当たって静岡市内の徳川家康ゆかりの場所から植物を採取して酵母を抽出し、それを入れてるということなんです。非常にユニークなブランディングの形だと思っています。ここで重要なのは、実は静岡大学の方なんです。

(山田)静岡大学はこのビールにどう関わってるんですか。

(橋爪)静岡大学には「発酵とサステナブルな地域社会研究所」という学部横断的な研究組織があります。人文社会科学部の先生もいらっしゃれば、理学部、農学部、教育学部の先生もいらっしゃるという横串を刺したような研究組織なんです。

外部から静岡市駿河区にある「ふじのくに地球環境史ミュージアム」の学芸員の方もメンバーに入っていたりします。アカデミックの世界から飛び出していろんなことを動かしていこうよという意識が強く感じられる、ユニークな組織です。

ここのメンバーが元々持ちかけた話に静岡市や協議会の方の賛同があった上で、完成に至ったというのが私の認識なんです。大学の方からこういう観光振興のグッドアイディアみたいなものが出されて、それに静岡市の方も乗って形ができたっていうことは、すごく意義のあることだと思います。

研究所発足のきっかけは中世ビール

(山田)静岡大学の方は先生だけでなく学生たちもいるわけですよね。

(橋爪)そうですね。研究所の所長は人文社会科学部の大原志麻教授で、スペイン史が専門なんですよ。醸造とかは理系の分野ですし、元々は関わりはないんです。それが2021年夏、ゼミの中に中世のビールをテーマに卒業論文を書いた学生がいて、実際にどういうものか造ってみた方が当時の人の気持ちがわかるよねということになったんです。そこで農学部の先生とか理学部の先生をだんだん巻き込んでやってみようじゃないかと話が広がった。そこがこの研究所の始まりなんですよ。

(山田)そこから家康公クラフトまで行くってすごいですね。

(橋爪)この研究所でやっていたのが中世のヨーロッパで飲まれていたグルートビールの開発です。複数のハーブの集合体をグルートと言います。今のビールは苦味や香り付けにホップを使いますが、当時はグルートを使っていました。

文献を探っていくと、当時のビールの香り付けには、ヤチヤナギという植物が使われていたことがわかったんです。日本にはなかなかなかったんですが、北海道立総合研究機構というところで育ててることが分かり、そこから提供してもらって2021年にグルートビールを造ったんです。

その後、大原先生たちが2022年に研究所を学内組織として発足させました。ヤチヤナギを静岡に移植させ、静岡で育てたヤチヤナギを使ったグルートビールを造りたいという目論見のもと、組織を動かしているわけです。2022年5月に移植した当時、「3年後にビール醸造の材料として使いたい」と言ってるんで、2025年に完成するのかなと期待しています。

(山田)ある意味、今回の家康公クラフトは通過点でもあったりするんですね。

(橋爪)そうなんですよ。北海道の試験場から取り寄せたヤチヤナギのビールは、既に富士宮市のフジヤマハンターズビールという醸造所で2022年4月に造っているんですよ。私も飲みました。

(山田)味はどうでしたか。

(橋爪)ミントのような感じでものすごく爽やかでした。美味しかったです。

(山田)飲んでみたいです。

ヤチヤナギ

期待は2025年 静岡産ヤチヤナギのビール完成するか!?

(橋爪)理想的に行けばですが、静岡大学に移植したヤチヤナギがどんどん株を増やし、そこで収穫した食材としてのヤチヤナギを家康公クラフトで醸造を担当した醸造所にお声掛けをした上で、中世のグルートビールを静岡のヤチヤナギを使って造ろうという話が出てくるんじゃないかなって期待してます。

(山田)今回の家康公クラフトも飲みましたか?

(橋爪)飲みました。ホースヘッドラブズ(静岡市清水区)の「ペールエール」、アオイブリューイング(静岡市葵区)の「ゴールデンエール」、静岡醸造(静岡市駿河区)の「ゆずラガー」と3種類あるんですね。そもそも3つともそれぞれの醸造所のフラッグシップ商品なんですよ。今回はそれに静岡市内で取れた酵母を入れていますが、そもそも美味しいビールに徳川家康のブランドパワーが加わり、より一層たくさんの人に飲んでもらえるんじゃないかなと期待してます。

(山田)静岡で造っているビールの飲み比べを楽しんでもらい、静岡ビール美味しいんだと思ってもらうきっかけになるのが一番いいですよね。今日の勉強はこれでおしまい!

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