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失敗を恐れずに挑戦し続けるダイソン創業者、ジェームズ・ダイソン

成功の秘訣は、納得のいくまで徹底してやり続けること

ユニークなデザインのサイクロン掃除機やドライヤーで知られるイギリスの家電メーカー「ダイソン社」。ダイソン社製品を使っている方、いらっしゃるのではないでしょうか? そんなダイソン社の創業者で発明家のジェームズ・ダイソンは、イギリスの「サンデー・タイムズ」のイギリス富豪ランキングで2020年に1位となりました。今回は、ジェームズ・ダイソンについて、経済・経営ジャーナリストで、『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』著者の桑原晃弥さんに、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※9月1日にSBSラジオ、IPPOで放送したものを編集しています。

牧野:私は、ダイソンさんがイギリスの方ということも、人の名前だったことも知りませんでした......。ダイソンさんは今も生きていらっしゃいますか?

桑原:はい。ジェームズ・ダイソンは1947年、イギリスのノーフォーク州で生まれています。祖父がケンブリッジ大学の数学者、父親も古典の教師という学者一家で、ダイソンも古典学者になることを期待されていましたが、ラテン語やギリシア語が嫌いで学者の道は早々に諦めています。

代わりにダイソンが選んだのは、得意な美術の道でした。設立から200年近い歴史を持つ名門の英国王立美術大学に進んだダイソンは最初は絵を描いていたのですが、やがて家具やインテリアデザイン、工業デザインへと移っていきました。

在学中に「人生の師」と呼ぶジェレミー・フライと出会ったダイソンは、フライの会社に就職して「シートラック」と呼ばれる上陸用高速艇を設計、外国の軍隊などに販売していました。待遇もとてもよかったのですが、1974年に独立起業して自ら発明した車輪の代わりにボールを使った手押し車「ボールバロー」の販売を開始します。しかし、なかなか思うように売り上げが伸びず、自分が起業した会社を離れることになりました。

牧野:元々アートの世界にいたのが発明の世界へ行って、いろいろ苦労もされていたんですね。そのような中で、ジェームズ・ダイソンはある家電に納得がいかず、自ら開発しようとされたんですね?

桑原:会社も辞めてすべてを失ったダイソンですが、次につながるアイデアは持っていました。それは、どこの家庭にもある掃除機です。ダイソンは掃除機を自宅で使っているうち、すぐに目詰まりして使えなくなり、思い切って当時最高といわれていた掃除機に買い換えますが、こちらもすぐに吸引力が衰えてきました。紙パックが一杯になったのかと思い調べたところ、すぐに目詰まりを起こすことが原因でした。

この問題を何とか解決できないかと考えていたダイソンが目にしたのが、製材所のサイクロン(遠心分離型集塵機)でした。それを見て、掃除機にサイクロンを搭載すれば紙パック不要で目詰まりのしない、いつまでも吸引力が衰えない掃除機がつくれるのではと思いついたのです。

牧野:ダイソンの吸引力は、製材所のサイクロンを見て「これだ!」というところから始まっているんですね! これはすぐに世界に売ろうということになったんじゃないですか?

桑原:それが、最初はダイソンのアイデアに賛同してくれる人は誰もおらず、最終的に自宅そばの馬車置き場を改造して、たった1人で理想の掃除機づくりを始めます。

牧野:完成までに相当苦労されているのですね。

桑原:ダイソンが尊敬しているのが、発明家のトーマス・エジソン。エジソンも何千、何万回と実験を重ねた人ですが、ダイソンも理想の掃除機を実現するまでに3年以上に渡って、実に5126台もの試作品をつくっています。

牧野:お金も相当かかるじゃないですか!?

桑原:結局その間はほとんど自分の収入はないので、大学の同期だった奥さんが美術教室を開いて生活を支えて、なんとか実験を進めていきました。ようやく納得のいく理想の掃除機が完成した時には15万ポンド(今の日本円で2500万円くらい)くらいの借金を抱え、「このプロジェクトが成功するか、破産するしかない」というところまで追い込まれていました。

牧野:そこまで付き合ってきた奥さんも素晴らしいですね!

桑原:すぐに生産すればいいのですが、多額の借金を抱えた個人なので自分で生産するお金はありませんでした。そこで、イギリスやドイツ、アメリカの家電メーカーにライセンスを売ろうとしますが、「消費者は紙パックに慣れている」「紙パックで儲かっている」という理由でどこも関心を示してくれませんでした。唯一、関心を示してくれたのが日本のエイペックスという商社で、1986年に日本で発売した掃除機は価格こそ高かったものの飛ぶように売れたんです。

牧野:日本の商社がダイソンに目をつけたんですね!それで、お金は儲かったのですか?

桑原:大きなお金ではありませんでしたが、ダイソンはライセンス料などを手にし、それを基に1993年に設立したのが現在のダイソン社です。その後、羽のない扇風機やヘアドライヤーなどを次々と発明してつくっていきます。

ダイソンの発明哲学「7つの原則」

牧野:ジェームズ・ダイソンには発明哲学があるそうですね?

桑原:ダイソンが社員に言い続けているのが「7つの原則」です。

1. 机の前に座っているだけではアイデアは生まれない。外に出ていろいろなものを見て、アイデアが浮かんだら、実際につくってみよう
2. 日用品は売れると信じて、自宅にある製品の気に入らないところをリストアップしよう
3. 根気よくテストにテストを重ねて、自分の目で確かめよう
4. 本当に納得のいくものができるまで改良を重ねよう
5. まずはきちんとした機能のものをつくり、それを活かすデザインを考える
6. 開発にはスタミナと確信、度胸が欠かせない
7. アイデアを思いついてから開発、試作、生産、販売とすべてを完全にコントロールしよう

牧野:まさにダイソンの掃除機での成功が、発明哲学に込められているわけですね。ここまであきらめずに大きな企業に成長できたのはなぜですか?

桑原:やはり、ダイソンとダイソン社がつくる製品は非常にスタイリッシュで、機能もすぐれているということです。そこに至るまでに「諦めない」「いいものができるまで頑張る」という精神が会社中に行き渡っていることがあって初めて、世界中にたくさんのダイソン製品のファンを生むことになったのだと思います。

牧野:私たち一般人が学ぶべきところもたくさんありそうですね。

桑原:ダイソンが自分の子どもたちに言っているのは、「進みながら学べ」「とにかく実行する人間になれ」です。私たちはせっかくいいアイデアがあったり、「こうしたい」という夢があったとしても、次の「やる」という一歩を踏み出せません。しかし、それでは何も実現しません。だからダイソンは、「アイデアがあれば実行すること」と「失敗を恐れないこと」を言い続けています。それは、普通の人もすぐに学べることだと思います。

牧野:よく成功した人を見て「俺も考えてたんだよね」という人がいますが、「考えてた」と「やる」には大きな差があるということなんでしょうね。

桑原:そうですね。しかも「やり続ける」ということですよね。

牧野:今回のような面白い話がたくさん書かれた本、『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』(ぱる出版)が発売されました。おめでとうございます!これはどんな本ですか?

桑原:世界には考えられないほどの成功をおさめた人たちが沢山います。ダイソンもその1人ですが、こうした大富豪がやっているのは「当たりまえ」のことなんです。その当たりまえのことを「本当に根気よく徹底してやり続ける」。それができるかできないかが大きな違いだと思います。ですので、この本から頑張ること、続けることを学んでいただければ、充実した人生を送ることができるのではないかと思います。

牧野:心に刻んでおきたいと思います! 今回もありがとうございました。

参考文献:『逆風野郎 ダイソン成功物語』(ジェームズ・ダイソン著、樫村志保訳、日経BP社)
今回、お話をうかがったのは……桑原晃弥さん
広島県生まれ。慶応義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問としてトヨタ式の書籍の制作を主導。一方でIT企業の創業者や渋沢栄一など、起業家の研究をライフワークとしている。著書に『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP)、『トヨタ式「すぐやる人」になれる8つのすごい!仕事術』(笠倉出版社)など多数ある。

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