
“駿河湾の宝石”と呼ばれるサクラエビをめぐり、長年に渡って関係者を悩ませる漁獲量の減少。その数がいま、回復傾向にあります。背景にあるのは、漁業者が一丸となって続ける資源を守るための取り組みです。
静岡市清水区にある寿司店では、この季節、「桜えびごちそう御膳」が人気を集めています。
<鮨処やましち 山崎伴子さん>
「生のサクラエビ、かき揚げ、沖あがりと、3種類の楽しみ方ができる。日本人も、外国人の方にも好評」
ゴールデンウィーク中も多くの人が店を訪れ、駿河湾特産のサクラエビを楽しみました。
4月2日に解禁されたサクラエビの春漁。4月末までに、167トンが水揚げされました。静岡県桜えび漁業組合の實石正則組合長は、この漁獲量に手応えを感じています。
<静岡県桜えび漁業組合 實石正則組合長>
「あの時代から比べれば、一歩一歩、急激な回復はしてないが、回復基調にある」

組合長が語る「あの時代」とは、2020年前後、サクラエビの漁獲量が急激に減少した時期です。組合によりますと、2017年以前は、年間1000トンほどの漁獲量がありましたが、2020年は約128トンにまで落ち込みました。しかし、2024年は500トンを上回り、回復に向かっていることがうかがえます。
その理由のひとつとみられるのが組合が取り組み続ける「自主規制」です。
<實石組合長>
「漁獲をする船の数を減らしてみたり、網を引っ張る時間を短くしたり」
組合では、自主規制をする前、約120隻の船団で漁を行っていました。資源を守るため、船の数を半分以下に制限し、日替わりで漁をすることで1日の漁獲量を制限。網を引く時間も減らし、翌年以降も漁獲できるサクラエビの母数を増やすことに努めました。
さらに、サクラエビを獲る場所にも制限を設けました。サクラエビの産卵場所とされる富士川の河口周辺などでの操業を中止しています。
<實石組合長>
「駿河湾だけの特産ではない。いわば、日本の特産ということを意識しながらやっていく。ある程度の資源量になったとしても、自主規制はしていかなくてはならない」
駿河湾の恵みを未来につなげるため、漁業関係者は努力を続けます。自主規制を行うなかで、船を出す数は漁場の状況を見ながらその日ごとに決めます。漁獲量は低迷した時期より増えているとはいえ、不安定な状況は続いているため、組合では規制を今後も続けていく方針です。