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SNS時代、若者の間で短歌ブームが到来!? 短歌の魅力とは?

SNS世代にしっくりくる短歌

短歌というと、学生時代に国語の授業でやったな、と堅苦しいイメージを持つ人も多いかもしれませんが、最近はアイドルやホストが短歌を詠む歌会が開かれたり、SNSで短歌を詠む若者がいたりと、ちょっとしたブームになっているんです! 今回は、東洋大学文学部日本文学文化学科准教授の高柳祐子さんに短歌ブームや短歌の魅力について、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※2月14日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

牧野:高柳さんは、和歌文学や中世文学が専門で、東洋大学が毎年開催している「現代学生百人一首」の選考委員長も務めていらっしゃいます。その「現代学生百人一首」が、先日、歴代最高の応募数となったそうですが、ブームがきている印象はありますか?

高柳:そうですね、毎年応募数が増えていて、来年はどうかなと思っていたらさらに増えているといったことが、ここ何年か続いています。

牧野:若い世代の人たちが短歌をやっているのは、どういう理由があるのでしょうか?

高柳:やはり、SNS世代であることが大きいのかなと思っています。SNSでは長文で語るのは敬遠される傾向にあるようですので、たった三十一文字で完結するところが若い人にしっくりくるのかなと。特に、短文の投稿を行うツイッターは短歌にピッタリなようで、短歌関係のハッシュタグ(#短歌、#tankaなど)がたくさんあります。

牧野:このようなブームは、過去にもありましたか?

高柳:ちょうど35年前になりますが、俵万智さんの「サラダ記念日」がベストセラーになったときに、短歌を詠む人がすごく増えたと聞いています。

短歌の歴史

牧野:そもそも短歌というのは何なのか、歴史なども含めて簡単に教えて下さい。

高柳:短歌は「短い歌」と書きますが、日本には古くから「歌」と呼ばれる詩(ポエム)がありました。歌の始まりはすごく古くて、いつからともはっきり言えないくらいなのですが、少なくとも文字で残されるようになったのが奈良時代なので、相当長い歴史があります。

日本の歌なので「和」をつけて「和歌」と呼ぶこともあります。歌にはいくつかの形があり、特に五七五七七の形式のものを「短歌」と呼びました。とはいっても、歌の90%以上がこの短歌形式なので、歌といえば短歌というイメージになりますね。

牧野:そもそもなぜ五七五七七になったんですか?

高柳:そこは分からないのですが、五音と七音というのがすごくしっくりきたみたいなので、「長歌」と呼ばれているものは、五七五七五七とつなげていったりするんです。

牧野:リズムがいいんですね!

高柳:今でも交通安全標語などは、五七五だと覚えやすかったりしっくりきたりしますよね。

牧野:確かにそうですね。人間のリズムに合っているのかもしれませんね。それでよく「現代短歌」と表現されますが、短歌も現代と昔では違うんですか?

高柳:そうなんです。明治に入ってから、今度は西洋の文化が入ってきて、「日本古来の和歌なんていうのはちょっと古いんじゃないか? 時代に合った新しい詩を生み出そう」という流れがあり、それが今の短歌につながってくるんです。形式は同じ三十一文字ですが、テーマや言葉遣いなどの中身がだいぶ違います。なので、明治時代以降の歌を「短歌」、それまでの伝統的な歌を「和歌」と呼び分けたりします。そして、明治以降の歌を「近代短歌」、今の現代のものを「現代短歌」と呼びます。

牧野:高柳さんのお気に入りの歌は何かありますか?

高柳:今年度、第35回「現代学生百人一首」の入選作から紹介したいと思います。

妹の 寝顔にそっと ごめんねと いうくらいなら 優しくしろ俺


これは、兄が妹に対しての想いを詠んだ歌ですが、寝顔にそっとごめんねと言ったことのあるお父さんお母さんは、多いと思います。子どもって、寝ていると幼く小さく見えて、今日は厳しく言い過ぎたなと後悔するのって、子育てあるあるかなと思うんです。でもやっぱりその気持ちがなかなか持続しなくて、日中はまたついつい口うるさくなってしまう。よし明日こそは優しくしよう。その繰り返しが子育てにはあるなと思うんです。そんな日常や複雑な心情が見事にユーモラスに表現されていて、すごく共感しました。

牧野:良いも悪いもないかもしれませんが、評価されるのは、このような共感を呼ぶものですかね?

高柳:そうですね。共感を呼ぶものは、心を揺さぶられるところがあるのかなと思います。

牧野:よく芸人さんが「あるある」で笑いをとりますが、短歌の世界も「あるある」なんですね。

高柳:短歌は短いので、自分の個人的なことを説明しきれないじゃないですか。だから、みんなに共感してもらえる部分のエッセンスを取り上げるところが必要になってくると思います。

短歌のコツやアドバイス

牧野:これから短歌を始めたいという人にコツやアドバイスをお願いします!

高柳:難しく考えず、まずは何気ない日常を言葉にしてみたらどうかなと思います。最初は標語のようになってしまうかもしれませんが、とにかく五七五七七のリズムにあてはめてみること。そこから、標語みたいだから別の言葉に言い換えたり、語順を入れ替えてみたりして、できあがったものをいじっていくのがいいかなと思います。

牧野:これは、語彙も増えるでしょうし、話すときの言葉磨きにもなりますよね。

高柳:短歌は短い形式なので、喜怒哀楽のような感情を入れてしまうと文字数が多くなってしまいます。ですので、直接的な感情を言葉にするよりは、そういう感情を引き起こす出来事に焦点を置くと歌らしくなるかなと思います。

牧野:言葉の数が限られているだけに、そこが面白さなんですね! 最後にみなさんにメッセージをお願いします。

高柳:短歌は決して難しいものでも自分と縁遠いものでもありません。作るのはちょっとまだ難しい人も、読んでいくことで楽しめます。東洋大学では、毎年全国の学生さんから短歌を募る「現代学生百人一首」というコンクールを行っています。入選作はWebでも紹介されていますので、ぜひ、ご覧いただければと思います。
今回お話をうかがったのは……高柳祐子さん
東洋大学准教授。博士(文学)。専攻は中世和歌文学。東京大学大学院人文社会系研究科日本文化研究専攻修了。著書『障子二年初度百首』(共著)。東洋大学「現代学生百人一首」選考委員長。

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