マイクロソフトが世界最大規模のゲームソフト会社を買収!その狙いとは!?

未来のゲームビジネスで有利になるために

先日、マイクロソフト社がアメリカのゲームソフト会社「アクティビジョン・ブリザード」を買収するという発表がありました。このアクティビジョン・ブリザードとはどういう会社なのか、そしてマイクロソフト社の狙いについて、詳しい話をサブカル専門ライターの河村鳴紘さんに、SBSアナウンサー原口大輝がうかがいました。
※1月28日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

原口:今回マイクロソフト社が買収を発表したアクティビジョン・ブリザードってどんな会社なんでしょうか?

河村:世界で最大規模のゲームソフト会社で、ざっくり売上高は7000~8000億円くらい。日本企業で同じぐらいの規模なのがバンダイナムコホールディングスです。

原口:かなり大きな会社なんですね!

河村:バンダイナムコの場合、ガンダムやドラゴンボールなどのゲームソフトやおもちゃ等を発売し、アニメ事業も展開するなど多彩なエンタメビジネスを手掛けていますが、アクティビジョン・ブリザードは、ゲームソフトの事業だけで同じくらい稼ぎだしている! いかに世界で売れているか実感としてつかんでもらえるかと思います。

原口:それだけ大きな会社が買収されたんですね!

河村:代表作は、スマートフォンで人気のパズルゲーム、キャンディクラッシュや、ゲームファンの間では、戦場で銃を撃って戦うコール・オブ・デューティなどがかなり有名です。ゲームファンならよく知っているゲームソフト会社で、驚いた人も多いんじゃないかと思います。

原口:そうですね。アクティビジョン・ブリザードが買収されたと聞き、コール・オブ・デューティはどうなるのかな?と第一に思いました。なぜこのタイミングで買収されたんでしょうか?

マイクロソフト社、企業買収の目的は?

河村:やはり、ゲーム産業のトレンドが大きく関係しています。まずひとつめが、ゲーム機やスマートフォンの高性能化で、ゲームを作る側もコストがアップしてきています。数億円は当たり前でスマホなんかでも10億円とか、家庭用ゲーム機だったら数十億円、それ以上を投じるケースもあります。それだけ多くの費用をかけると、当然ビジネスなので回収しないといけません。そうすると日本だけでなく、世界各国でヒットするゲームが望まれます。大手ゲーム会社なんかでも、新しい大ヒットゲームを生み出すことが課せられていて​、その一つとして自分のところで制作するのではなく、企業買収しようという考え方がでてくるわけです。

原口:今回の買収、マイクロソフト社としての目的はどんなところにありますか?

河村:一言でいえば、自社保有のコンテンツを増やしたいことに尽きると思います。ゲームビジネスだけでなく、話題のメタバースも含めた未来のゲームビジネスを考えていくと、どうしても世界的なコンテンツを自社で保有することは有利に働くと考えられています。あと、マイクロソフトは約20年前からゲーム事業に参入していて、有力なゲーム会社をずっと買収してきた歴史もあります。

皆さんがよくご存じのマインクラフトの開発会社もマイクロソフト社が買収しているんです。そしてマイクロソフトだけでなく、任天堂やソニーなどは、各社とも有料のネットワークサービスを持っており、その会員獲得に力を入れています。そこへアクティビジョン・ブリザードのソフトが加われば、そういったサービスに有利に働くという考えもあると思います。

原口:ゲーム機本体を買うときも、どんなソフトが揃っているのかは、どのゲーム機を買うか判断の理由にもなりますよね。買収することでコール・オブ・デューティができる!コンテンツが多彩というののであれば、Xboxを買う動機づけになると思います。

河村:そうですね。ゲーム好きな人は、ゲーム機を持ちたいと思うのが普通ですからね。

「囲い込み」という戦略

原口:ただ、ひとつ思ったことが、買収することで今までは様々なプラットフォーム(各社の家庭用ゲーム機、スマートフォン、PC)でできていたゲームが、将来的にマイクロソフト社のXboxだけの展開になるのでは?と。コール・オブ・デューティもそうです。その辺りはいかがでしょう?

河村:人気ゲームを自社のゲーム機やサービスだけで展開する囲い込みという戦略ですね。もちろん、それも当然ありえますが、じゃあそれを全部やってしまえばいいかというと、そう単純ではありません。というのは、今まで各社の家庭用ゲーム機、スマートフォン、PCなどで展開していたものを仮にXbox一つだけに絞ったら、今までのハードで出来なくなるので遊べるファンの数が減り、当然、売り上げも落ちます。そうすると、別のゲームで遊べばいいやと、ライバルソフトにファンを奪われる可能性も出てくるんです。つまり囲い込みをすると、コンテンツの価値を落とす可能性もあるので、必ずしも囲い込みが正解というわけではありません。

囲い込みだけでいうと、任天堂は「ずっとマリオなどを囲い込んでいるじゃないか」いう話になるかもしれません。でも任天堂が全部そうかといったら、そうではないんです。確かに昔は任天堂のゲーム機でしか、マリオゲームはできませんでしたが、今は、スマートフォンでもスーパーマリオや任天堂のコンテンツで遊べたりするんです。結局、それだけ新規ユーザーを増やしていかないといけないという考え方が根底にあって、それはソニーなども同じことを考えています。

マインクラフトも、マイクロソフトが買収したからといって全部手を引いてしまうというわけではなく、ほかのゲーム機でも遊べるんですよ。そう考えたとき、囲い込むのも大事ですが、取捨選択が大事になって、むしろそれを間違えるとコンテンツをダメにしてしまうので、簡単に囲い込む方向へは行かないんじゃないかなと思います。

原口:囲い込みをすることで、もともとのファンを減らしてしまうんじゃないかと。なるほど。今回はありがとうございました!
 

今回お話をうかがったのは……河村鳴紘さん
サブカル専門ライター。20世紀末から大手メディアでゲームを中心に、アニメ、マンガなどを取材。ゲーム機のトラブル、メーカー対立、残虐ゲーム問題、倒産ネタにも突撃。2019年6月からフリーとして、ヤフーニュース個人(オーサー)で執筆、2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。歴史とスポーツ、ラブコメ好き。

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