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中国と台湾が加盟を申請!今さら聞けない… 「TPP」の基礎知識

中国と台湾がTPPへの加盟を申請。今後、どうなる?

中国と台湾が相次いで加盟を申請し、その動向が注目されているTPPについて。難しい……と思っている人にも、わかりやすく解説していただきます。テレビ、ラジオでコメンテーターも務めている経済評論家の加谷珪一さんに、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※11月15日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

牧野:TPPがどんな協定なのかから教えて下さい?

加谷:まず言葉の説明からしていきますね。TPPは、英語のTrans-Pacific Partnershipの略で「環太平洋パートナーシップ」とか「環太平洋経済連携」などと表記されます。

どんな協定かといいますと、貿易で「自国の産業を守る」ために、輸入品に税金をかけるということをよくやるのですが、これを関税といいます。自国の産業を守ることはできますが、これがあるとなかなか貿易が活発になりません。ですので加盟国間の取引で、原則として関税をなくし、各国同じルールで貿易を行おうという協定になります。

牧野:日本はまとめ役なんですか?

加谷:当初はアメリカと日本がまとめ役だったんですが、残念ながらアメリカはトランプ政権時代、TPPは国内産業の保護にならないと、離脱してしまいました。それで、経済規模が一番大きな日本が取りまとめ役になったという流れがあります。

中国と台湾の加盟申請、どんな思惑が?

牧野:そのTPPに、中国と台湾が同じタイミングで加盟申請してきていると。それぞれにどんな思惑があるんでしょうか?

加谷:貿易協定というのは加盟する国が増えれば増えるほど、その協定に加盟していない国が不利になります。アメリカが不参加となった今、中国が加入すれば加盟国のなかで最大の経済規模になるので、中国は総合的にメリットがあると考えたんだと思います。

中国と台湾は政治的に微妙な状況にありますので、台湾にとっては、中国が先に加盟してしまうと入れなくなるんじゃないかと考えて、間髪入れずに申請したといわれています。

牧野:台湾は、加盟申請するなら今しかないぞ!ということですね。申請したら、簡単に認められるものなんですか?

加谷:すでに加盟している国が支持すれば認められます。中国の場合、台湾との政治的対立という関係があるので、微妙なところだといわれています。だた、中国はTPP加盟国に自分たちが入るとメリットがある!と説得しており、一部の国は中国加盟支持に動いているといわれています。

最終的には、現時点で最大の経済規模を持つ日本が、どのようなスタンスをとるかで大きく変わってくるんじゃないでしょうか。

中国の加入が日本に与える影響とは

牧野:中国が入ってくると、日本にとってもだいぶTPP自体の雰囲気が変わってきそうなんですが、日本にはどんな影響が考えられますか?

加谷:これは日本の立ち位置をどう捉えるのかで変わってきます。自由貿易協定は、経済力が大きくて競争力がある国ほど有利になるわけです。以前TPPの交渉が行われていたとき、日本国内でもアメリカの経済規模が大きすぎるので、国内の農業がつぶれてしまうんじゃないかなど、TPPに反対する意見もありました。ですので、競争力が強い国ほど有利だということになります。

もし、日本が中国よりも競争力のある強い国だという立場に立てば、中国が入っても影響はありませんし、むしろ有利になります。逆に、日本が中国に負けているという認識に立つと、中国主導になってしまいますので、日本にとっては不利という考え方になりますね。

牧野:加谷さんは、本音ではどっちの立場だと思いますか?

加谷:だいたい拮抗しているかなと思います。中国は経済規模は大きいですが、まだ技術力という点では日本企業が有利な面もたくさんあります。今のところ対等ですので、双方にとってメリット・デメリットは同じくらいだと。ただ、これから中国がどれくらい伸びてくるかの見通しは、なかなか難しいところだと思います。このあたりをどう捉えるかですね。

今後のカギは、アメリカが復帰するかどうか

牧野:日本がとのような対応をとるか注目ですね。韓国も加盟に関心を寄せているそうですが、今後TPPへ参加する国はどんどん増えていくんでしょうか?

加谷:みんな船に乗り遅れまいとしますので、加盟の動きが出てくると思います。ただ最終的には、アメリカが入ってくるかどうかが肝になってきます。アメリカが復帰してくれると極めて大きな連携協定となります。やはり日本は、アメリカに復帰を強く説得する必要があるんじゃないかなと思いますよ。

牧野:バイデン大統領に替わりましたので、アメリカの復帰はありえますか?

加谷:可能性は多少ありますが、意外とバイデン政権になったからといって、くるっと変わるわけではありません。アメリカ内には自由貿易に対するアレルギーがあり、反対意見も結構あるんです。それをどう説得できるのか、というところじゃないかなと。

牧野:アメリカの出方によって、日本の中国に対しての対応も変わってきますし、それぞれのバランスが保たれるのか、崩れるのかというような状況なんですね。

加谷:外交のバランスとも密接に関わってくるので、デリケートな対応が必要かと思います。

牧野:非常に分かりやすく教えていただき、ありがとうございました!
 
今回お話をうかがったのは……加谷珪一さん
仙台市生まれの経済評論家。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。その後、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は「ニューズウィーク」など数多くの媒体で連載を持つ。「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)「日本は小国になるがそれは絶望ではない」(KADOKAWA)など著書多数。

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