楽器用希少木材、タンザニアで生育根付け ヤマハの研究者仲井さん奮闘10年 持続可能な森づくりに手応え

希少木材の現地調査を行う仲井一志さん(右)=昨年12月、タンザニア(ヤマハ提供) 楽器メーカーのヤマハ(浜松市中央区)の研究者で、持続可能な森づくりを目指す「おとの森プロジェクト」リーダーの仲井一志さん(41)が東アフリカのタンザニアで、クラリネットやオーボエといった木管楽器に使われる希少木材「グラナディラ」(アフリカン・ブラックウッド)の生育に取り組んでいる。10年前、単身で乗り込み、国際協力機構(JICA)や現地の非政府組織(NGO)と連携しながら、苗を植え、成木に育てるまでのサイクルを地元に根付かせようと奮闘している。
 2009年に入社しグラナディラの代替素材を研究、開発していた仲井さん。貴重な資源そのものを次世代に伝えようと、15年にタンザニアでの植林活動を本格的に始めた。
 経済発展が続くタンザニアで、グラナディラは、美しい外観と優れた音響特性から商業目的の伐採が続く。現地では森林火災や野生動物の食害も多く、自然生育が難しい状況という。そこで、地方都市に当たるリンディ州の村に、8千本の苗を育て始めた。苗が順調に育つ確率はわずか数%で「成木になるまで100年近くかかる」(仲井さん)。本格的に取り組み始めた17年には、苗に土が合わずに全てだめにしてしまった。
 ゴマやカシューナッツが主な換金作物という現地で、持続可能な林業を展開しようという意識はまだ薄いと感じる。それでも、頻繁に足を運んで長期滞在し、住民と食住をともにすることで「僕が何をやっているのか数年かけ分かってもらえた。少しずつビジネス以上の関係性を築けた」と手応えを語る。
 自然育成の研究を進めるとともに、現地住民と協力して井戸を掘り、3カ所の育苗施設も作った。現在も年に数回、飛行機で片道24時間かけてタンザニアを訪れ、定期的な研究を続けている。最終的には住民が自ら施設を管理し、現地での産業化を目標にしている。「森を再生して末永く保ってみんなが豊かになってほしい。1本でも2本でも苗木を育ててくれる人が増えれば」と願っている。
<おとの森プロジェクト> ヤマハが楽器製造に当たり、代替が困難な希少木材を次世代に活用できるようにするための活動。原産地域の森林保全、木材の有効活用、地域社会発展を包括的に盛り込んだ循環型の森林づくりを行う。現在3種の希少木材(グラナディラ、アカエゾマツ、インドローズウッド)を対象に、植林や森林管理による資源回復の促進などを国内外で進めている。

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