
2月下旬、浜松市内で開かれたスズキ社員らの育児休職者向け交流会。男性も社員の配偶者含む15人が参加した。4月まで半年間の育休を取得中という開発部門の男性社員(28)は「職場に取得した先輩がいて、上司も理解があった。言い出しにくい雰囲気はなかった」と話す。子育ての“先輩”社員に、復帰後の働き方について質問を重ねた。
スズキは男性が社員の9割を占める中で2023年度は男性289人、女性が101人が育休を取得。男性の取得率は63・1%(出生時育児休暇のみは含まず)と21年度の17・7%から上昇した。複数月の取得者も目立つという。部署内で仕事を振り分けたり、代替する担当者を確保したりと「手探りで進めている部分もある」(人事担当者)。
24年の男性育休取得率が84・2%だったヤマハ発動機も休業前の両立支援セミナーを通じて制度理解を促し、男性育休取得者の経験談を伝えている。
スズキ、ヤマハ発動機も担当者はともに「取得率だけを重視していない」「家庭環境が異なる中で、あくまで取得を希望する人をサポートしている」と話す。
厚生労働省の調査によると、企業の23年度の男性の育休取得率は前年度より13ポイント増えて初めて3割を超えた。一方、別の調査で制度を利用しなかった男性の理由では「収入を減らしたくない」が最多で、「職場の無理解」「自分にしかできない仕事があった」なども上がったという。人員が限られる中小企業では、円滑な事業活動や他社員に加わる負担へのケアも課題になる。
従業員200人未満のソフトプレン工業(浜松市中央区)の前嶋文明会長は「(社員が職場を離れることで)一時的に生産性低下やコストアップが生じるかもしれない。ただ、人材育成など長い目でプラスになると考え、乗り越えていく」と話す。
<メモ>静岡労働局は4月からの男性の育休取得率の公表義務対象拡大に伴い、企業に対する改正法関連のセミナーや訪問の際の説明を進めている。雇用環境・均等室の担当者は「企業の人材確保、定着につながる利点もある。各企業の実情に即して、職場風土の改善や取得促進を図ってほしい」と話す。取り組み事例を発信する厚労省運営のサイト「両立支援のひろば」の活用も呼びかける。