袴田さん刑事補償2億1千万円交付 金額算定「捏造を根拠に」 静岡地裁が決定

袴田巌さん 現在の静岡市清水区で1966年に一家4人が殺害された事件を巡り、静岡地裁は24日、刑事補償法に基づき、再審(やり直しの裁判)で無罪が確定した袴田巌さん(89)に対し、請求通り刑事補償金約2億1700万円を交付することを決めた。国井恒志裁判長は決定で、犯行着衣とされてきた「5点の衣類」などの証拠が捜査機関によって捏造(ねつぞう)されたと認め、金額を算定する上での根拠とした。刑事補償金としては過去最高額となる。
 静岡地検は刑事補償請求に関連し、地裁の再審無罪判決には「客観的に明らかな時系列や証拠関係とは明白に矛盾する内容も含まれている」と指摘。「捏造の認定を根拠に捜査機関の故意過失を肯定することは相当ではない」などとしていた。一方で、地裁から求められた「矛盾内容」の具体的な説明を行わなかった。
 国井裁判長は決定で、捏造を否定する地検の主張を「論理の飛躍がある」と批判。「結局、捏造を否定する具体的かつ説得的な論拠を持ち合わせていない」と断じた。無罪判決には確定審の期日に関する説示に明白な誤りがあったことは認めつつ、これによって捏造認定の根拠が揺らぐわけではないと説明。「検察官は捏造の根拠を正しく理解していないか、根拠と関連性が乏しい誤りを針小棒大に主張して証拠の捏造の事実から背を向けるものと解するほかない」と非難した。
 刑事補償は1月、袴田さんの成年後見人を務める弁護士が請求。2014年に釈放されるまでの身体拘束期間は47年7カ月に上り、1日当たりの補償は上限額の1万2500円が認められるべきだと訴えていた。
 国井裁判長は、47年7カ月のうち33年は死刑囚として拘置されていた点を踏まえ、「精神的、身体的苦痛は極めて甚大」と強調。非人道的な取り調べを含め、三つの証拠捏造に同じ警察官と検察官が関与していることも「捜査機関による捏造の事実を裏づける」との見方を示した。その上で「警察、検察の故意があることは明らか」と結論づけた。
 国井裁判長をはじめ、袴田さんの再審公判を担った裁判官3人が判断した。

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