社説(10月21日)ロシア非難決議 世界の意思受け止めよ

 ロシアによるウクライナ東部・南部4州の併合宣言に対し、国連総会は緊急特別会合を開き、違法で無効だとする非難決議を、加盟国の7割を超える143カ国の賛成多数で採択した。
 総会決議に法的拘束力はない。しかし、国際社会の「力による一方的な国境変更は認めない」という意思を鮮明に示したことになる。しかもウクライナ侵攻直後の3月に採択したロシア非難決議(141カ国が賛成)を上回った。ロシアが常任理事国を務める安全保障理事会が機能不全に陥った今、総会決議こそが世界の意思だ。ロシアは改めてその意思を認識し、戦闘をやめて軍を撤退すべきだ。
 一方でロシアとベラルーシ、北朝鮮など計5カ国が反対、中国とインドなど35カ国が棄権した。ロシアとの関係を重視する国はいまだに少なくない。国際秩序を揺るがすロシアの暴挙を丁寧に説明していく必要がある。
 決議は、併合宣言と親ロシア派による「住民投票」はいずれも違法で無効とし、ウクライナの主権を侵害し国連憲章の原則に反するとした。その上でロシアに宣言撤回を求め、ウクライナ領土に変更はないと明示した。
 ロシアは「4州住民の大多数が支持した」と正当化を主張したが、もともと住民が避難している上に、残った住民に銃を突き付けて投票を迫る方法が民意を示しているとは到底思えない。相変わらずロシアの無理筋といえる主張は国内向けとしか思えない。
 その国内は予備役の一部動員令で混乱している。装備も訓練も十分でない招集兵を最前線に投入しても人的損害が増えるだけだ。秋の東部でのウクライナ反攻では兵士だけでなく、多くの武器・装備を失ったとみられている。
 それでもロシア軍はまだ強力だ。クリミア橋の爆破をウクライナ情報機関のテロ行為と決めつけ、ウクライナ各地の都市を巡航ミサイルなどで攻撃して市民に多数の死傷者を出した。電力などのライフラインも狙ったという。
 民間施設への攻撃は市民を恐怖にさらすことはあっても、劣勢にあるとされる戦況は改善できない。市民や市民生活を狙った国家テロとしか言いようがない。こうした非道な行いに、欧米諸国がウクライナへの追加軍事支援に動いている。その結果として自軍兵士の損耗が増える恐れをプーチン大統領は無視するのだろうか。さらに停戦交渉も遠のいたとみられている。
 ウクライナには厳しい冬が近づいている。前線の兵士の寒さ対策だけでなく、家を焼かれ生活基盤を失った市民への支援を強めていかねばならない。

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