内閣府のデータで静岡県の私立中学進学率の推移を見てみると、2006年が4.6%(全国16位)、2024年が5.32%(14位)なので、それほど大きな増加ではないかもしれませんが、中学受験を選んだ理由には昔とはまた違う背景があるかもしれません。
そこで、この15年以内に中学受験を経験した親世代や本人にアンケートを実施し、今どきの静岡私立・国立中学について教えてもらいました。
受験を決めた時期は?
「小さな頃から本人が私立中学を希望していたので、準備はしてきた」という声もありましたが、「5・6年生のとき」という回答が多数を占めました。中には、最終的に決めたのは「6年生の秋」という家庭もありました。志望校決定の決め手になったのは?
親世代
・「自主性を重んじる点、授業も教諭もハイレベルで面白そうな点」(よっしー)・「たまたま当時の美術教員が長男の同級生の保護者で、授業を見学する機会があり、自主性を促す授業の面白さと、生徒の皆さんの取り組み姿勢や発表内容のレベルの高さに感動したため」(りえまま)
・「自分の母校なので、経験から、最小限の努力で最大限の成果を得られると思えた。今は海外プログラムがさらに充実しているから」(なぐこ)
・「本人の希望と夫の単身赴任が決まり、高校受験時の多感な時期に、父親不在予定となったので、ひと足早く中高一貫校を受験し、長いスパンで大学受験に備えようとおもったため」(SmileEyes)
・「色々見学や体験には参加しましたが、1番は本人の希望。学校の環境や公立では体験できないカリキュラムも整っていたこと」(えい)
・「兄弟で違う学校を受験したが、自由な校風や部活動が活発なこと、私立中学ならではの設備が魅力だった。公立中学に不安もあった」(げげげ)
・「家の近くまで送迎バスがきていたので、アクセスもいいと思った」(こと)
本人
・「給食がとにかく嫌だったので、お弁当の学校を探していた」(ぺ)・「地元の公立中学に、入りたい部活がなかった」(あき)
・「自分の夢を叶えるために一番良さそうだったから。母親の母校だったから」(なぐこのこ)
・「セーラー服が着たかったから」(匿名)
異なる10以上の学校へのコメントなのに、「自主性」「自由」という言葉が複数上がりました。近年公立中学でも校則の見直しなどが進んでいますが、それでも私立・国立の「自主性」「自由」に魅力を感じている人は少なくないようです。
実際に通ってみて感じたことを教えてください
「意識の高い同級生(や保護者)に恵まれた」「先生が熱心で意欲的」と、人間関係を評価する声が多く上がりました。「子どもが小学6年生に戻ったら、同じ学校を受験させるか?」の問に、6割が受験させる、4割がわからないと回答。受験しないの回答がゼロだったことからも、進学先の学校を肯定的に受け入れていることがわかります。
その一方で、こんなお悩みも…。
「周りがみんな良くできすぎて、校内ではいつもおちこぼれになる」(りえまま)
「小学校では学力も体力も優れている方だったが、皆が優秀なため、人より秀でることがなく、劣等感やなにかモヤモヤとした気持ちを抱くようになった。自己肯定感が薄くなってしまい、中学生の間はやる気のスイッチがなかなか入らなかった。だが、高校から心機一転、新しい活動に挑戦し、結果を出すことで自分より秀でた人たちに自分の活躍を認めてもらえるようになった。そして自信を取り戻せて、学習もそれまでの積み重ねと、意識の高い仲間の刺激を受けていろいろなことに頑張れた。」(SmileEyes)
高校で気持ちを切り替えられてよかったですね。結果が出せたその先の“意識の高い仲間”の存在がさらなるステップアップに繋がっているように感じます。
中高一貫教育について
中高一貫教育については、人間関係でも勉強面でも「6年間」という期間の長さを「ゆとりがある」と好意的に捉えている印象を受けました。現在中学3年生のお子さんがいる方から、「“中3の秋”という時期でも、受験勉強がないので子も親も気持ちに余裕を持って生活を送れるのはすごくありがたい」。なるほど、実感のこもったコメントです。
一貫校ならではの課題
人間関係については「関係は深いが世界が狭くなる」「“縦”が長すぎて、上・下級生との関係性が難しい」。「高校受験がない」「大学への指定校推薦も多い」というメリットに対し、「受験の厳しさを体験せず、スムーズ過ぎたかもしれない…」受験という壁を乗り越える努力をさせたい親心との相反する意見も見られました。
静岡大学付属中学について
県内には静岡市、島田市、浜松市に静岡大学の附属中学があります。生徒の主体性を重んじる校風、公立なので授業料無料ということもあり、3校とも非常に人気が高く、兄弟で通ったという“リピーター”も多い学校です。附属の授業スタイルについて
「ディベートなどで学習することが多い」「自分の意見を臆せず発表できるようになる」「教科書を自分で読んで理解する子供じゃないと授業についていけないかも」「授業とは別に高校の受験勉強を頑張らないといけない」「他校の先生や教育実習生など、外部の人が来ることが多いので、人見知りの人には辛い」こんな声が寄せられました。実際に通ってみて、気になったところは?
「通学に時間やお金がかかった」「勉強習慣や睡眠時間などの生活サイクルを築くのに苦労した」「忘れ物を届けるのが大変だった」「早い登校時間にあわせたお弁当作り」……と、学校までの物理的な距離から派生するものが大半でした。逆にいうと、学校までの距離がそれほどないのであれば、中学受験の障壁はあまりないとも言えそうです。
今回のアンケートで「学費がかかる」というコメントが上がらなかったのは、それは当然かかるものと想定していたからでしょうか。長男が公立、次男が私立に進学したIさんは、「長男は、塾や春・夏・冬期講習費用が随分かかったので、私立中学の方がお金がかかるとは一概に言えないかもしれない」と教えてくれました。
兄妹で中学受験を経験し、お兄さんは合格、妹さんは残念な結果だったというSmileEyesさんから、こんなコメントを寄せてもらいました。
「兄と同じ中学は性格的に妹には向かないと思い、受験を勧めなかったけれど、本人が受験したいと言ったのでチャレンジさせ、結果失敗…。それでも地元の中学で努力して自信を取り戻し、高校受験で希望校に進学することができました。中学受験の失敗がなければ、こんなに頑張れなかったかもしれない。そう思うと不合格は苦い経験だったけれど、結果的にはよかったです。“勉強に無駄はない”というのが、親子共通の認識でいます。ただ我が家の場合は高校受験が成功したから言えることで、中学・高校受験ともに失敗してしまったお友達の親御さんには、もっと中学受験で慎重になればよかった…と後悔している人もいました」。
中学受験の失敗をプラスに変えられた娘さんの努力が素晴らしい。
入ってみなければわからないことも当然たくさんあると思いますが、オープンスクールに積極的に参加する、在校生・卒業生に話を聞く、学校や塾の先生にもよく相談するなど、できる限りの情報収集は必須だなと思いました。
各学校に対し寄せられたコメント
最後に、各学校に対して寄せられたコメントをご紹介します。あくまで個人の意見ですが、総じてポジティブなコメントが寄せられたことからも、満足度の高さがうかがえます。ぜひご一読ください。静岡大学附属静岡中学
「基本的に制服ではなく私服で通学。教職員が子どもたちの自主性を尊重してくれる。生徒らは自分たちで考えて行動するところがよかった」静岡大学附属島田中学
「マイペースな娘にとっては良い友人ができ、楽しい学校生活を送ることができた」「コロナ直撃で学校行事などで良いところ半減も、やはり自由な校風で友人ができた」
静岡大学附属浜松中学
「保護者の教育への理解度、先生の意欲が高い。いじめなどを行う子がいない」「自立を重んじる校風が良かった」
浜松西高中等部
「意識の高い友人と出会え6年間一緒に過ごすことで一生の友達ができたこと」不二誠心女子学院中学
「グローバルな環境に対する考え方が身につく。習熟度別クラスでレベルに合った学習ができる。わからないことは先生に聞きに行きやすい環境。エンジェル制度(高3中1ペア)のおかげで「理想像」「ありたい姿」が描けた」(本人)「勉強や部活も大切だけど、それよりも大切なことがあると理解している。スタサプ(デジタル教材)を使った自主学習からお箸の持ち方まで、友人から良い影響を受けている」
東海大学附属翔洋中等部
「学校全体がスポーツを通じて一体感があった」「運動部ではないが部活動に真剣に取り組めたこと、行事が活発で楽しい」





































































