【創作ファクトリーぼんどしあたー主催「とあるバス停の利用者たち」】会心之一撃団、劇団静火、演劇集団Rubbishが、同じ舞台セットを使って異なる物語を展開

静岡新聞論説委員がお届けする静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は静岡市葵区のMIRAIEリアンコミュニティホール七間町で7月5~6日開催の創作ファクトリーぼんどしあたー主催の演劇オムニバス公演「とあるバス停の利用者たち」を題材に。
静岡県内で演劇活動を行う「演劇集団Rubbish」の根間健太郎さん、「劇団ぱんけーき」の佐藤一輝さん、「サンリミット」の石川貴也さんが設立した「創作ファクトリーぼんどしあたー」の、「同じセットを使った演劇オムニバス」企画第2弾。昨年夏は「とあるマンションの住人たち」を上演した。共通の舞台セットを使って、複数の劇団が約30分間のオリジナル演目を披露する。

今回は舞台上にバス停と待合室、郵便ポストが置かれている。これを活用して県内6団体が二つのグループに分かれて公演を行う。「会心之一撃団」「劇団静火」「演劇集団Rubbish」が共演する5日午前の上演回を見た。

バス停は「ここから別の場所へ移動する」という同じ目的のもとに人が集う。その「目的」が物語の柱になるのだろう。観劇前はなんとなくそう考えていた。だが、今回観覧した3団体は全て、そこに力点を置かない演目を作り出していた。演劇人の発想の自由度の高さに感じ入った。

会心之一撃団は、とある路線の終点のバス停に仕事をさぼったサラリーマン3人を集めた。罪悪感と開放感に浸る3人のわちゃわちゃした会話に、民話の世界からとある人物が殴り込みをかける。軽妙な会話劇が大立回りに変貌していくさまが痛快だった。プロレス技「サソリ固め」の足の組み方が左右逆なのもご愛敬。「静岡に300人ぐらいいそうな顔しやがって」というせりふが秀逸だった。

劇団静火は、年代も立場が異なる二人の女性のかみ合っているようでかみ合っていない「わかるわかる」トークを展開。会心之一撃団とは違い、次のバスがなかなか来ない。それほど辺境にあるバス停なのだろう。相手の領域に踏み込む強度や速度が、それぞれに、また場面ごとに異なるのが面白い。ラジオの投稿について語り合う時にそれが最高潮に達するのが、実に意義深く感じた。

演劇集団Rubbishは、この日の3団体の中で最もぶっ飛んだ発想で、バス停の待合室を扱っていた。夜明け前に待合室を「運び出す」ことを計画する男女3人。それぞれの熱量に多い少ないはあるものの、「運び出す」という意志は共通している。この確固たる意志はどこから来るのか…。狭い舞台上に極めて自然に「時間軸」が持ち込まれていく。この手際の良さが見事だった。

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■創作ファクトリーぼんどしあたー主催「とあるバス停の利用者たち」
【7月6日の公演予定】
午前10時半開演 劇団あしたば、どにちオシゴト、劇団ぱんけーき
午後2時開演 会心之一撃団、劇団静火、演劇集団Rubbish
午後5時半開演 劇団あしたば、どにちオシゴト、劇団ぱんけーき
会場:MIRAIEリアンコミュニティホール七間町(静岡市葵区七間町12-4)
観覧料:2000円
※チケットは完売の可能性あり。詳細、チケット予約はぼんどしあたーの公式Xアカウント参照

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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