LIFEライフ

SBSラジオ トロアニ

アニメで高知を盛り上げたい!官民連携で大きなプロジェクトを仕掛ける高知県の取り組み


SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は“高知県のアニメ産業への取り組み”についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん

官民連携で大きな仕掛けを作っている高知のアニメ界

4月20、21日に高知で行われた「高知アニクリ祭2024」に先立って行われたカンファレンス「アニ魂サミット」を見てきました。この「アニクリ祭」はアニメ作品の紹介コーナーがあったり、コスプレ・スペースが設けられたり、簡単なアニメ制作を体験するコーナーなどもある、本格的なアニメイベントなのですが、行って驚いたのが、実はこのイベントを行うことがこの企画を進めている人たちの「ゴール」ではないということです。もっと大きな目標があったんです。

そもそも「アニクリ祭」は「高知アニメクリエイター聖地プロジェクト」という取り組みの中の1つにすぎません。なぜこのプロジェクトをやっているかというと「高知にアニメ産業という新たな地域価値を作りたい」「若者にとって魅力のある雇用と交流発信の場を作りたい」「高知に根ざしたアニメ関連企業の育成と起業支援をしたい」「アニメクリエイター育成支援で若い力を創造したい」といった複合的な目的があるようです。

高知市を中心に近隣の自治体とも協力し、アニメという産業を使ってで地場に刺激を与えていこうというのがまず大きな目的としてあり、目標は6つ設定されています。

1つ目がイベント、「高知アニクリ祭」と業界関係者のカンファレンスである「アニ魂サミット」。

2つ目がイベント内で発表した「高知アニメクリエイターアワード」。募集した短編作品の中からグランプリを選出し、優秀な才能ある人を顕彰して光を当てていこうというものです。

3つ目は「アニメクリエイターラボ」。高知市内の繁華街にアニメクリエイターや関連企業が集える建物を建てて、そこを使えるようにしようというもの。

4つ目が「高知クリエイターベース」といって廃校になった高校の校舎を、ロケハンで使ったり、コスプレイヤーが撮影に借りられたりするなど、いろんな使い方で活用していこうというもの。

5つ目は教育。アニメクリエイターの育成をするアニメカレッジやアニメテックラボという名前で、時代に合ったアニメを担う人材育成です。

6つ目はアニメクリエイターのおもてなし。アニメ制作・移住をしやすい高知をPRしています。 実際、東京でアニメスタジオを運営していた宇田英男さんは独立して、2021年に高知にスタジオエイトカラーズというアニメスタジオを作りました。この方も今回の企画に深く関わってらっしゃいます。もっと高知にそういう会社に来てもらったり、あるいは大きい会社のサテライト部署などが設けられたりするような状況を目指しているようです。

今回僕が行ったカンファレンス「アニ魂サミット」では、小学館ミュージック&デジタル エンタテイメント(SMDE)の久保雅一社長が司会を務めるトークイベントもありました。そこには先述の宇田さんに加え、プロダクションI.Gの石川光久社長、ぴえろの本間道幸社長、P.A.WORKSの堀川憲司さん、シンエイ動画の梅澤道彦社長などアニメ制作会社の社長さんが参加して、地方でアニメ制作に取り組む可能性や難しいポイントなどについて、それぞれの体験をベースにトークが展開されました。

またこの「アニ魂サミット」の中で、高知を舞台にした長編アニメーションを作るという企画の発表も行われました。現在、SMDE社とスタジオエイトカラーズ社が共同で脚本開発をしているとのことです。

高知から発信をしていく!という意識が非常に強く、自治体や地元の経済界も力を結集してこのプロジェクトをやっていこうという感じで、官民も連携しようという意識が高かったですね。「アニ魂サミット」の最初の挨拶は高知県知事でした。多くの人を巻き込んでやっていこうという意思を感じました。

今、地方にサテライトを含め「スタジオを設ける」ということが当たり前になりつつありますが、高知のものは想像より仕掛けが大きかったですね。「規模」というより「仕掛け」が大きな企画なので、今後高知には注目かなと思いました。

SBSラジオTOROアニメーション総研(毎週月曜日19:00~20:30 生放送・毎週日曜日15:00~16:30 再放送)全国のアニメ好きが集まるラジオの社交場。ニッポンのアニメ文化・経済をキュレーションするラジオ番組。番組公式X(旧Twitter) もぜひチェックを!

あなたにおすすめの記事

RANKING