
現代劇とは違う!人の命が「軽い」時代だったからこその「重さ」を感じられる、おすすめチャンバラアニメ3選

チャンバラアニメは、数が少ないようで実は結構あります。現代物でも『刀使ノ巫女』のようなオリジナルアニメーションのほか、最近では『鬼滅の刃』や『地獄楽』がありますし、女性ファンが多い作品といえば新選組を題材にした『薄桜鬼』がよく知られていますよね。あと、古くは主題歌も人気の『まんが 水戸黄門』もあります。
今日は、新潟国際アニメーション映画祭のオールナイトでも取り上げられた作品も含め、比較的見やすいものをご紹介しようと思います。
1.『ストレンヂア 無皇刃譚』
まず1本目は『ストレンヂア 無皇刃譚』(2007)。舞台は乱世。元侍で、侍を捨てた男「名無し」が、身寄りを亡くして中国・明からやってきた少年、仔太郎を救うことになります。なぜか仔太郎を追っている中国の武芸者集団といろいろなバトルを繰り広げながら仔太郎を守っていくというお話で、アクションは非常に見応えがあります。60年代後半から70年代前半くらいまでの日本の時代劇は、意外に西部劇やマカロニ・ウェスタンの影響もあったりするんです。そういう意味もあってこの映画は、チャンバラものなのですが、同時にマカロニ・ウェスタンに近い雰囲気も持っています。
いわゆる武士の生活や気持ちを丁寧に描くというものとは違い、ドライな人間が出てきてバシバシ人が死ぬみたいな感じです。虚無を抱えた人間たちがクールに命のやり取りをするところが面白いわけです。
2. 『REVENGER』
2本目は脚本家の虚淵玄さんがシリーズ構成をした『REVENGER』。架空の長崎を舞台に、晴らせぬ恨みを晴らすリベンジ屋の話です。復讐するという意味の「REVENGE」と、便利をひっくり返した「利便」、利便事をやる人たちというのをかけて「REVENGER」になっています。
薩摩藩の剣の達人で繰馬雷蔵という人が、ある理由で藩からドロップアウトしてこの利便事屋に入り、いろんな人の恨みを晴らしていきます。某有名時代劇シリーズみたいなものを作ってほしいという依頼で作られた作品で、こちらも70年代の実写ドラマにあったようなほの暗いイメージがすごく強いです。
本作も描かれる人の命が軽い。江戸時代なのをいいことに人権を無視した悪人がたくさん出てきます。現代劇だと見ている方も嫌な感じになりますが、時代劇だとそれがかえって突き抜けていてすごいという感じになるんですよね。
3. 『るろうに剣心ー明治剣客浪漫譚ー追憶編』
3本目は1999年にリリースされたOVAシリーズ『るろうに剣心ー明治剣客浪漫譚ー追憶編』。原作の人誅編の中で「なぜ主人公の緋村剣心の頬に十字傷がついてるのか」という理由を回想で語るくだりがあるのですが、このOVAは、その回想シーンだけを取り出してひとつの作品として作ったものです。幕末が舞台で、剣心が一番人を斬っていた、一番重い時代に重心を合わせているので、原作にあるギャグっぽい部分や、技の名前もカット。ひたすらハードに斬り合います。
原作の少年漫画っぽい雰囲気を生かしつつも、ここまでリアルにできるんだ、時代劇でアニメってできるんだと感じさせる、すごく丁寧にできた作品でした。しかも悲劇なので、ドラマ的にもぐっとくる出来栄えなんです。痛みみたいなものが伝わってくる作品です。監督は、最近だと『SPY×FAMILY』がヒットした古橋一浩監督、脚本は十川誠志さん。制作前には十川さんが「人斬り以蔵(岡田以蔵)」を主人公にした実写映画『人斬り』(1969年)が参考になるんじゃないかと監督にすすめたそうです。そういう意味では、日本の時代劇との接点もある作品ですね。
現代と距離のある「時代もの」としての側面があるチャンバラアニメは、人の命が軽いからこその重たいドラマが可能で、かつアクションも盛り込みやすい。そんなところが魅力ですので、興味のある方はぜひ今回紹介した3作品を見ていただければなと思います。
SBSラジオTOROアニメーション総研(毎週月曜日19:00~20:30 生放送・毎週日曜日15:00~16:30 再放送)全国のアニメ好きが集まるラジオの社交場。ニッポンのアニメ文化・経済をキュレーションするラジオ番組。番組公式X(旧Twitter) もぜひチェックを!