
【それって民意?】選挙に無関心だとどうなる?静岡大の学生が制作した啓発動画が面白い!投票に参加しない先に待つ世界は…

(市川)今回は、静岡大人文社会科学部の学生が静岡市選挙管理委員会とコラボして若者の投票率アップに向けたオリジナル啓発動画を作成したという話題です。選挙に関心を持たず、投票に行かないことで、自分たちの代表者が意図せずに決まってしまう可能性があることを訴える内容。静岡市の公式YouTubeチャンネルで公開しています。
(山田)選挙の若者投票率の低下については、このコーナーでも何回か取り上げてくれていますよね。
(市川)そうですね。ちょっと振り返ると、2023年に行われた直近の静岡県議会議員選挙は全体の投票率が44.62%だったんですが、20~24歳は20.90%と半分以下でした。国政選挙では2022年の参院議員選挙が静岡県内全体の投票率52.97%に対して、20~24歳は29.88%と、これも半分ぐらい。
今回の啓発動画は静岡市議会議員選挙をテーマにしているのですが、2021年にあった前回の静岡市議選は全体投票率が40.13%で、20代は20.80%。全国的な傾向として、選挙の投票率自体が下がっていて、さらに若者の投票率が低いという現状があります。
(山田)以前も教えていただきましたが、投票権が18歳以上に引き下がったことで投票率が上がるのではないかと思ったら、逆に下がっているということでしたよね。
(市川)これは難しい問題です。人口構成は高齢者の方が多いんです。そうすると、20代の若者の方が人数的に少ないにも関わらず、投票率がほかの世代より低いとなると、選挙に行っている人のほとんどが高齢者ということになります。これでは若者の声がなかなか政治に反映されない。それを何とかしたいと今回、啓発動画が作られました。
題材は学級委員長選挙。公約聞いてないと大変なことに!?
(市川)動画は「それって民意?」というタイトルで2分29秒の短めの動画です。学校のクラスの学級委員長の選挙を題材にしています。女性の候補者が「学級委員になったらやりたいことがたくさんあります」とスピーチするんですね。クラスには12人の生徒がいるんですが、みんな白い仮面をつけています。候補者は「今の給食係の負担が大きすぎるので、給食係の人数を増やしたいと思います」とか、「昼休みの遊びの内容で、ドッジボールがあまりに多すぎるのでほかの運動も取り入れていきたいと思います」といった選挙公約のようなものを発表します。ただ、白い仮面をつけた生徒はスピーチに関心はありません。寝てたり、スマホを見たり、好き勝手なことをやっています。この辺からだんだん不穏な空気になり…。
(山田)ちょっと怖い感じに?
(市川)そうですね。候補者はさらに公約を発表していきます。「みんなにもっと勉強に力をいれてほしいので、これからは宿題の量を2倍にします」と少し怖いことを言ったり、「何となく保健係と給食係って似ていると思うので、保健係をなくして、その人は全員給食係にします」などと訴えたりして投票のシーンに移ります。
立候補したのはこの女性だけ。投票用紙に◯か✕を書いて投票してください、と呼びかけられます。ただ、みんな関心がありませんから、投票したのは2人だけ。ほかの生徒は寝てたりスマホを見たりしたまま投票にも参加しない。その結果、この女性が学級委員長に選出されました。
すると、この女性が豹変します。ばーんと机をたたいて「私はやりたいことをやる」と言って「保健係は給食係にします」「昼休みのドッジボールはなんか危なそうだから禁止にします」と語ります。さらに「宿題は明日から2倍にします」と宣言します。これは公約通りですよね。
そういう発表をするたび、「おかしいだろ」「意味がわからない」と生徒たちは声を上げます。そこで初めて投票前に彼女がそういう主張をしていたことに気づくのですが、もう選挙で選ばれた学級委員長なので成立しています。最後に「それって民意?」というようなことを問いかけて動画は終わります。
(山田)選挙ってこういうことだよということが実に分かりやすい内容ですよね。
(市川)この動画のポイントは、選挙前に候補者が言っていたことを聞いておらず、投票にも参加しないと、大変なことになるよ、ということだと思うんですが、面白いのは、投票前のスピーチで言っていなかったことも、投票後にやろうとするところです。
昼休みのドッジボールに関しては、スピーチでは「ほかの運動も取り入れていきたい」としか言っていなかったのに、選挙後、いきなり禁止と言い出す。ただ、生徒たちは選挙前のスピーチをしっかりと聞いていないので「そんなこと公約で言ってなかったじゃないか」と突っ込むことができないんです。
(山田)聞いてないと批判もできないと。
(市川)宿題2倍は公約通りですが、ドッジボールの禁止は公約では言っていないことをやろうとしている。この辺りが奥が深いなと感じます。
(山田)いやー、すごい作りしてますね。
賛否を呼ぶのは心に刺さった証?
(市川)この啓発動画を作ったという記事は1月18日の静岡新聞でも紹介しています。ただ、この動画は分かりやすく描いているので、取材を担当した記者に話を聞くと、市議会の中には不満を漏らす市議もいたそうです。(山田)この動画に対してですか?
(市川)静岡市議選をテーマにした啓発動画なので、今の静岡市議会は民意を反映していないように見えてしまう、という不満のようです。確かにとんがった内容にはなっています。今の静岡市議会はもちろん民意は反映されていますが、40%の民意なんです。「それって民意なの?」という問いかけなので、なかなか難しいですが、それぐらい関係者には刺さった動画だったとは言えると思います。
(山田)刺さったからこそ、いろいろな声が上がるわけですよね。
(市川)ただ、この動画は2週間前に公開されたんですが、先ほどチェックしたら、まだ、800回余しか再生されてないんですよね。もっと多くの方に見てもらいたい動画です。
県内では昨日(1月28日)、御殿場市議選が告示されました。2月4日に投開票されます。今日(1月29日)の静岡新聞に記事が掲載されていますが、21人の定数に22人が立候補し、「1人を落とす」選挙になっていて、市民、特に若者の関心が薄いと危惧されています。
(山田)そうなりますよね。
(市川)記事の中では「問われる市民への発信力」という話をしていて、候補者がいかに選挙に来てもらえるような訴えをするかという部分も重要になってくるということを書いています。
■静岡市の公式YouTubeチャンネルで公開中

(市川)いま、国会でも「政治とカネ」の問題が連日取り沙汰されていて、このままで政治はいいのかと思うことがたくさんありますよね。でも、政治を変えるのはやはり選挙しかないんです。国政はもちろんですが、御殿場市議選や静岡市議選のような地域の選挙こそが身近な政治を変えることにつながります。その辺りのことを考えるきっかけにする上でも、この啓発動画を一度見ていただければと思います。
(山田)そうですね。
(市川)静岡市選挙管理委員会はすごく大胆というか、尖ったメッセージを出したなと思います。
(山田)市川さんは昨年、静岡市選挙管理委員会が立ち上げた「どうする投票率研究会」に参加されてましたよね。
(市川)研究会では、これからはSNSやYouTubeなどで若者にメッセージを届けることが選挙啓発には大事だというような議論がありました。今回はその一つの試みだと思います。こういう取り組みが広がって、ぜひ若者に見ていただきたいですね。
(山田)どんどん増えていくといいですね。静岡市の公式YouTubeチャンネルで公開されているということですから、皆さんもぜひ啓発動画を見てみてください。今日の勉強はこれでおしまい!
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