LIFEライフ

トロライターズ

富士山静岡交響楽団/ブルックナー「交響曲第8番」公開リハ事前企画。静岡県内アマチュアオーケストラ団員による「ブルブル座談会」を開催しました!


みなさん、こんにちは!編集局紙面編集部の遠藤竜哉です。
今回はブルックナーを愛してやまない方々による、ややマニアックな座談会!

ブルックナーの交響曲第8番を披露する富士山静岡交響楽団の第123回定期演奏会に向けた企画として、静岡県アマチュアオーケストラ連盟(12団体)の全面協力の下、県内アマオケ所属の6人の方々とともにオンライン上で座談会を開催しました。

先に断っておくと、今回はある程度知識がある方を前提に書きましたので、少々マニアックで長い!ブルックナーが大好きで「ブルブル」したい方向けの濃厚な内容です。とはいえ、できるだけ分かりやすく書きましたので、ぜひご覧ください。

【前編】、【後編】の2回に分けて掲載します。

それぞれの末尾には、参加者ご提供、遠藤撮影によるブルックナーに関する写真コーナーもございます!では、始めましょう!
 

今回、6人のアマチュアオケ奏者の方々にご参加いただきました

参加者のみなさまを紹介します。

◼️静岡フィル(静岡市駿河区)
・江成博行(理事長)ヴァイオリン…元会社員
・佐々木智子(副理事長、コンサートマスター)ヴァイオリン…会社員
◼️清水フィル(静岡市清水区)
・剣持秀紀(広報担当)ヴァイオリン/ビオラ…技術者
◼️浜松交響楽団(浜松市中区)
・美和雅樹(理事長)クラリネット…教員
◼️沼津交響楽団(沼津市)
・堀泰宣(運営委員長)ビオラ/高校生まではトランペット…技術者
・長田豊(事務局長を30年!)打楽器/主にティンパニ…文具店経営
◼️静岡新聞社編集局
・遠藤竜哉(司会)

※敬称略、カッコ内は所属団体での役職

本日はようこそ、お集まりいただきました!!

ブルックナーって、どんな曲を作った人? 何がすごいの??

【司会:遠藤】
来たる2024年に生誕200年を迎え、世界中に熱烈なファンを持つオーストリアの作曲家アントン・ブルックナー(1824〜1896)ですが、ベートーヴェンやブラームスほどの広い知名度はなく、よく「玄人好みの作曲家」なんて言われます。

私自身は、ブルックナーが何か特別な存在であるとは思わず、独墺系の交響曲作曲家の大家として、ベートーヴェンやブラームスと並列に扱われるべきだと常々感じます。
ただ、ブルックナーが特別視されがちなのは、明らかな習作を除き10曲ある交響曲やミサ曲など、どれもが長大で、求められる管弦楽等の規模も大きく、楽想という意味でもスケールの大きさが際立っているからでしょう。

その最高傑作と言われ、24年2月に富士山静岡交響楽団(静響)が演奏する交響曲第8番にいたっては、演奏時間が約80分にもなります(1曲ですよ!)。プロオーケストラにとっても相当に気合が必要でしょうし、アマチュアオケ奏者ならば一生に1回はやってみたい曲だと思います。さて、アマオケ奏者のみなさまにとって、ブルックナーとは、どんな作曲家でしょうか。

いつか演奏してみたい憧れの作曲家!

【静岡フィル:江成】
アマチュアオーケストラにとってブルックナーは、マーラーと並び、いつか演奏してみたい憧れの作曲家です。楽曲の規模や使用する楽器の特殊性、調達などのハードルがあり、演奏する機会は滅多にありません。

静岡フィル(静フィル)では8年ほど前に交響曲第4番を演奏しましたが、それ以来、なかなか取り上げる機会がありませんでした。ブルックナーの作品は、演奏が難しい分、オーケストラがその魅力や能力を最大限発揮できる曲とも言えます。

数年前、ブルックナーゆかりのリンツ(オーストリア)を訪ね、彼がオルガニストを務めた修道院やお墓などを巡ってきました。どんな人物だったのか、イメージを広げる素晴らしい体験でした。

【佐々木】
静フィルでは2024年のブルックナー生誕200年に合わせて交響曲第7番の演奏を予定しています。

もともと、次期演奏会の曲目選定の過程でメンバーからブルックナーをやりたいという声は出ていたのですが、先ほど当団の江成理事長からも発言があったように、演奏は難しいし、規模の大きな作品ばかりだし…と、みんなで考えあぐねていたんです。

その時、メンバーの中から「24年はブルックナーのメモリアルイヤーだよね」と提案があり、せっかくだから頑張ってみよう!と決断に至りました。いま、猛勉強中です笑!

【遠藤】
市民オケが挑戦するには、何かきっかけが必要ですよね!
何しろ、要求されるオケの編成が巨大で、しかも長大な作品が多い。内容としても哲学的、思索的です。壮大なスケールなので「宇宙的」とも言われます。

剣持さんは、ブルックナーにどんな印象をお持ちですか?
 

じわじわ分かってくる、味わい深い作曲家

【清水フィル:剣持】
私とブルックナーの関わりでいうと、最初に弾いたのは、学生オケ2回生のとき。交響曲第9番でした。今所属している清水フィルではビオラ担当ですが、その時はヴァイオリンを弾いていて「トレモロが多いなあ」ぐらいの印象でした。

静岡県に戻ってきてまず、浜松交響楽団(浜響)に入りました。浜響が交響曲第7番、8番を立て続けに取り上げたことがあり、私も演奏に参加しましたが、この時に「おぉ、ブルックナーいいじゃん」と魅力に気付きました。時々エキストラで参加させてもらう静岡大学のオーケストラでは第4番、第6番を演奏しました。清水フィルでも2019年に第4番をやりましたよ。

ブルックナーはトレモロが多いと言いましたが、ではブルックナーの作品が弦楽器奏者にとってつまらないかといえば、とんでもない! 例えば、ヴィオラにはオイシイ旋律が多く回ってきますし、大変魅力的な作曲家だと認識しています。

【遠藤】
剣持さんが今オンライン会議用に使用している背景写真は、リンツのザンクトフローリアン修道院ですか?先ほど、江成さんが数年前に訪問したとおっしゃっていた、ブルックナーがオルガニストを務めたゆかりの場所ですよね??

【剣持】
はい、清水フィルでブルックナーを演奏する直前に「勉強」と称して私もリンツに行ってきました笑。その時、撮った写真がたくさんあるので、後ほど提供します!

【遠藤】
よろしくお願いします。私はリンツに行ったことがないので羨ましい限りです。
ブルックナーって、音楽史上での位置付けが難しくて「別枠」的な捉え方をされることもありますが、系譜という意味ではどう思われますか。

【剣持】
個人的には、ブルックナーはシューベルトの正統な後継者だと思います。
シューベルトの交響曲「グレート」がありますよね。その第2楽章などには、ブルックナーのような特徴的な終止スタイルが見られます。幻となったシンフォニー(いわゆる第10番)の一部とも言われる曲(D=ドイチュ番号=936A)は、作曲者名を伏せて聴いたら、ブルックナー初期の交響曲に思えるはずです。

加えて、シューベルトの弦楽四重奏曲第15番の冒頭もブルックナー的ですよね。

【遠藤】
わお、シューベルトの10番ですか!!

【剣持】
録音もありますので、ぜひ聞いてみてください。

ところで、静フィルさんは、次回の演奏会で第7番を演奏されるんですよね?
ワーグナーチューバ(ワグチュー)は特殊な楽器ですが、どう調達されますか?
 

演奏に向けたハードルの一つ!特殊楽器の調達!

【江成】
他団体から借りるか、厳しければホルンで代用するか…。
指揮者の先生と目下、協議中です。

今年4月に浜響さんが第9番を演奏した時には、ワグチューがしっかり揃っていたので、いいな〜と思いましたよ!

【剣持】
第7、8、9番を演奏する際は、ワグチューの調達問題は避けて通れませんからね。

【遠藤】
浜響さんは、ワグチューはどうされているのですか?

【浜響:美和】
浜響はこれまでに第4番を2回、それから第7番、8番、9番を演奏してきました。ワグチューについては、第7番の時は都内の某オーケストラからお借りしました。

第8番の時は、浜松にある某楽器製造会社からお借りし、どうしても自前で吹きたいと言って楽器を買った団員もいました。浜松は吹奏楽が盛んなので奏者はたくさんいますから、エキストラにはそれほど困りませんでした。

【遠藤】
さすが浜松!!

管楽器奏者は挑戦してみたいけれど、弦楽器奏者の理解がないと無理!?

【美和】
剣持さんも触れていましたが、アマオケでブルックナーをやる時は弦楽器奏者の理解が欠かせません。
個人的な思い出を話すと、学生時代に所属オケの最後の定期演奏会で第4番をやろうとしたんですが、やっぱり弦楽器奏者の反対が…。トレモロが多く独特だからでしょうか。それでも管楽器奏者でゴリ押しして演奏した覚えがあります。

変な話、管楽器は「ここぞ」の場面で吹きますけど、弦楽器は譜面をめくってもめくっても音符があります笑。
この前、第9番をやった際、弦楽器の人が必死で弾いている時にふと顔を上げると、管楽器は休符続きで楽器の掃除をしていた!なんてこともあったらしいので、そのあたりの相互理解って大事なんじゃないかと…。

【遠藤】
まあ、正直それはありますよね笑。
ブルックナーの曲って、端的に言ってカッコいいので、管楽器奏者が憧れる気持ちはよく分かります。

【美和】
ブルックナーは、やってみるとみんな「楽しかった」「やってよかった」と言うんですが、やるまでが大変なんですよ。演奏してみないと分からない魅力みたいなものがあって、オケの中にいると、とっても幸せな感じになります。
 

パイプオルガンのような響きで、音作りが難しい!

【沼津交響楽団:長田さん】
沼津交響楽団では、今年4月に第4番を演奏しました。1998年に第4番をやって以来、25年ぶりの演奏でした。ブルックナーへの向き合い方を知らないメンバーが大半だったので、練習期間(半年)の3分の1、つまり最初の2カ月ぐらいは練習が思うように成り立たず、大変でした。
指揮者の先生がいらしてからは、ぐんと改善し、良い本番を迎えることができました。金管のメンバーはとても喜んでいました。私はティンパニ担当でしたが、ブルックナー独特のオルガンを思わせる、地を這うような長いトレモロがあって、研究に時間を使いました。

市民オケの場合、編成の都合上、やはり第4番が比較的取り組みやすいですね。
個人的には、第7番が大好きで、若い時はカセットテープに入れてよく聴きました。

【沼響:堀さん】
沼響ではないんですが、私はこれまで第8番を2回演奏したことがあります。
今回は第4番でしたが、弦楽器も管楽器も大変だし、どうなるかなと思って臨みました。私はいまビオラ担当ですが、昔はトランペットを吹いていたので、刻み(トレモロ)が大変という弦楽器奏者の気持ちも、いつかブルックナーを演奏してみたいという管楽器奏者の気持ちも、両方分かります。

【後編に続く】

▼ブルックナーゆかりの写真紹介コーナー(写真は清水フィル剣持さん提供)

ブルックナー生家(現在は博物館)オーストリア・リンツ郊外



博物館内の展示物(交響曲の自筆譜)第4番

第8番


第9番

愛用のオルガン

指揮棒(?)


【参考情報】
◆富士山静岡交響楽団第123回定期演奏会
https://www.shizukyo.or.jp/post/20240203
 

「ブル8」の音作りの現場を見学してみませんか?

マニアックすぎる!? 大人の社会科見学
静響初! 公開リハーサルに100名様ご招待企画の詳細はこちら

https://www.at-s.com/life/article/ats/1329797.html

静岡新聞SBS有志による、”完全個人発信型コンテンツ”。既存の新聞・テレビ・ラジオでは報道しないネタから、偏愛する◯◯の話まで、ノンジャンルで取り上げます。読んでおくと、いつか何かの役に立つ……かも、しれません。お暇つぶしにどうぞ!

あなたにおすすめの記事

RANKING