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即席座談会!! 前回の企画「クラシックに詳しくない同僚を演奏会に連れて行ってみよう〜」企画で飛び出した「疑問」を富士山静岡交響楽団のメンバーにぶつけてみました!


みなさん、こんにちは!
編集局紙面編集部の遠藤竜哉です。

今回は、前回アップした「クラシックに詳しくない同僚を演奏会に連れて行ってみよう〜」企画の続編です。


同僚の小泉さん、宮本さんと一緒にミューザ川崎シンフォニーホール(川崎市)で聞いたオーケストラの演奏会♪

その珍道中で出てきた「素朴な疑問」を引っ提げ、富士山静岡交響楽団の練習場に押し掛けてきました!!

QA形式で、即席座談会の様子をお伝えします。
ご協力いただいた団員様、ありがとうございます!


ご協力いただいたのは、静響首席クラリネット奏者の渡辺繁弥さん(写真右)、ヴァイオリン奏者の小川亜希子さん(右から2人目)、ホルン奏者の阿部華苗さん(中央)、同団事業担当=元ライブラリアン=の岡村愛さん(左から2人目)、そして、同団専務理事にしてオーケストラ界の重鎮・宮澤敏夫さん(左)!

ざっくばらんにお話を伺いました!

お詳しい方には「知っとるわい〜」の内容かもしれませんが、きっと未知の情報も一つぐらいは入っているはず!どうぞご笑覧くださいませ。

▶前段企画のコラム記事はコチラ!未読の方は先にお読みくださいね〜!
「クラシックに詳しくない同僚を演奏会に連れて行ってみよう〜」
 

 

【質問1】開演前の舞台上で団員が何やらごそごそ…。一体何をしていたの⁉

 

◇遠藤:先日、同僚を連れてオーケストラの演奏会に行ってきました。開演前、打楽器やコントラバスなどのメンバー数人が舞台上で何やら準備作業のようなことをしていました。彼らは一体、何をやっていたのでしょうか。

◇渡辺さん:それは、舞台から簡単に動かせない大型楽器の奏者たちですね。本番に向けて舞台上で音程の調整(チューニング)などをやっていたのだと思いますよ。

例えば、ティンパニなどの打楽器、弦楽器のコントラバス、木管でいえばコントラファゴット、あとハープなどもそうですが、ヒョイっと持ち運びができない大型楽器は、舞台上に置きっぱなしにするのが基本です。人が行き交う中での無理な移動は事故のもと。ステージが一番安全というわけです。

◇阿部さん:きっと、音出しも兼ねているんですよね。

◇渡辺さん:そうですね。持ち運びができる楽器の奏者たちも、同じく舞台裏でチューニングや音出しをしていますから、大型楽器の奏者が舞台に来てやっていることも、それ自体はごく自然な開演前の準備です。

◇遠藤:でも、先日の演奏会では、木管楽器奏者も開演前から舞台に来ていましたよ。

◇渡辺さん:木管の人たちには、別の事情があるんですよ。おそらく開演前から音を出していたのは、木管楽器の中でも、リード(音を出すために口で振動させる木などの薄片)を使う奏者たちだったと思います。

◇遠藤:その日はオーボエでした!

◇渡辺さん:
そう!オーボエ以外にも、私が専門とするクラリネットや、ファゴットなどもいわゆる「リード楽器」と呼ばれます。リードは音を出すためにとても重要な役割を果たしますが、湿度や温度の影響を強く受け、本当に繊細です。舞台裏でリードを選んでも、ステージに行くと響きが変わってしまうんです。本番の環境に合わせるため、あくまでも舞台上でベストなリードを選ぶ必要があります。

◇遠藤:宮澤専務、ここまでお聞きになっていかがですか?

◇宮澤さん:いま話に出たような楽器の事情は世界中どこのオーケストラも共通ですよ。

私は昔、大阪フィルでコントラバスを弾いていましたけれど、ざっくばらんに言ってしまうと、開演前に舞台裏でただ待っているのはもったいないし、音を確認するにはステージ上の方が静かでいい、という本音もあります。

少なくとも現役時代の私はそう思っていたし、他の楽器も同じではないのかな。

◇遠藤:長年大フィルで活躍された宮澤専務ならではの視点!新鮮です!
 

【質問2】団員によって椅子が違う⁉  その違いと理由とは?


◇ 遠藤:続いては、オーケストラ団員の椅子に関する質問です。多くの団員は、よくコンサートホールで見かけるオケ奏者用の椅子(コンサートチェア)に座っていますが、人によっては高さを自由に変えられるピアノ椅子だったり、コンサートチェアをいくつか重ねて使っていたりしますね。どんな違いがあるのでしょうか。

ここは事業担当の岡村さんに聞いた方がよさそうですね。

◇岡村さん:基本的には、奏者の視界確保を目的に、要望に応じています。

◇渡辺さん:さらに言うと、理想的な姿勢で演奏したいという奏者側の思いもあります。極端に言えば、赤ちゃん用のお丸に座って演奏はできないように、奏者にはそれぞれ、体を使いやすいベストの姿勢があって、椅子は結構大事な要素なんです。

◇宮澤さん:慣用的に「地に足がつく」と言うけれど、足がちゃんと地面について良い姿勢で演奏するというのは、奏者が力を出すために大事なことなんですよ。

◇岡村さん:日本のコンサートホールに備えられているオケ奏者用の椅子はだいたい規格が決まっていて、専門メーカーもあります。一脚で何万円もするんですよ。


◇宮澤さん:椅子の選択は体の大きさによります。例えば、来日公演を行う海外オケの奏者だと、日本のコンサートホールの椅子は低すぎるので、よく重ねていますよね。逆にわれわれがヨーロッパに行くと、椅子が高くて足が浮いちゃいます。

◇遠藤:弦楽器などは、首席奏者がピアノ椅子を使ったり、椅子を重ねたりしているケースをよく見かけるので、てっきり立場によって違うのかと思っていました。

◇渡辺さん:必ずしもそうではないですね。ただ、音楽的なリーダーであるコンサートマスターがピアノ椅子を使うことが多いのは、本人の視界確保という以上に、周囲より高い位置に座ることで全団員から姿がしっかり見えるようにするためです。

◇遠藤:リハの際に椅子の選択や高さ調整をするのですか。

◇岡村さん:基本的にはそうですね。

◇渡辺さん:大体、団員に関しては、舞台関係を取り仕切るステージマネージャーという役割の人が「◯◯さんはピアノ椅子、◯◯さんは二つ重ねる」といった具合に覚えていて、逐一オーダーしなくてもやってくれます。リハで調整しているとしたら、エキストラ奏者の方々かしら…。

◇宮澤さん:確かに視界確保ではあるけれど、ヴァイオリンの一番後ろの人がピアノ椅子にしてくれとは普通は言わないですし、弦も管も指揮者が見えなければ、椅子の位置を少し動かして調整しているというのが実際のところではないのかな。

◇遠藤:渡辺さんはエキストラとして別のオーケストラに参加する際、椅子が低かったら調整を願い出ますか?

◇渡辺さん:いや〜、私はエキストラの時は言わないですね(笑)

◇遠藤:ホルン奏者がピアノ椅子を使う場面ってありますか??

◇阿部さん:金管はあまりピアノ椅子を使わないですね。ただ、チューバ奏者の方が使うケースは時々ありますし、全くないわけではありませんよ。

 

【質問3】弦楽器の方が、弓を振って“拍手”するのはどうして?


◇遠藤:3つ目の質問です。指揮者やソリストのカーテンコールなどの際、弦楽器の方々は弓を振って“拍手”しますよね。あれはどうしてなんでしょうか。


◇小川さん:譜面台に弓を当てるふりをして拍手の代わりとする、という慣習があると思ってやっているのですが、正式に教わった訳でもないですし…。なぜなんでしょうね(笑)
あるいはバイオリンのネックの部分を持って、もう片方の手を添えるように拍手する方もいるかと思うのですが、そうすると弓が動くので、これも客席からは弓を振っているように見えるかもしれません。


◇渡辺さん:弓を振って、拍手していることを「見せる」効果もあるのかもしれませんね。

◇遠藤:確かに、その方が視覚的に分かりやすいですし、舞台が華やかに感じられますね!

◇小川さん:まあ、私はそこまで考えているわけじゃないですけどね(笑)。
カーテンコールでは、ソリストや指揮者が素晴らしければ、それだけ一生懸命讃えます。そこは心の赴くままです。

◇渡辺さん:あと、演奏中よく見ていただくと、オケの奏者がソロなど大役を終えた同僚に対して、自分の膝を擦って健闘を讃えている場面があるかもしれませんよ。

◇一同:あ〜!!それ、やるやる〜!(←この日最高の一体感)

◇渡辺:まだ演奏中ですからね、音は出せませんので、自分の膝を手ですりすりして“拍手”しているわけです。「今のソロよかったよ〜」と、敬意を示しているんですね。

             ◇

さて、まだまだ話し足りなかったのですが、このあたりで時間切れ!!

「同僚をコンサートに連れて行ってみた」の企画をやらなければ、決して思いつかなかった内容ですが、とても楽しく勉強になる有意義な時間でした。

静響の皆様には、多大なご協力をいただきました。
この場を借りて、感謝を申し上げる次第です。


今度は指揮者にも疑問をぶつけてみたい!

実は、もう一つ、企画内で出た疑問に「指揮者が指揮棒を持っている時、持っていない時、逆さまに持っている時の違いって、なんですか」というものがありました。これはまあ、

 

えーっと…、また誰か指揮者の先生に聞いてみます。


でもなあ、さすがに大先生にこの質問をする勇気はないですわ。

というわけで…

【急募】ざっくばらんにインタビューに答えてくださる指揮者を大募集します!!

若手のマエストロなど、ぜひよろしくお願いいたします!!

では、最後に今回ご協力いただいた静響団員さんのご紹介です。

■ヴァイオリン:小川亜希子(2016年入団)

浜松市出身。愛知県立芸術大学音楽学部卒業、同大学研究生修了。
ヴァイオリンを大谷 康子、嶋田 慶子、福本 泰之、デヴィッド・ノーランの各氏に、室内楽を桐山 建志、白石 禮子、百武 由紀の各氏に師事。第14回九州音楽コンクール大学生クラス金賞、最優秀賞。第15回万里の長城杯国際音楽コンクール一般の部第2位(1位なし)。第5回岐阜国際音楽祭コンクール大学・一般の部第1位。第9回ベーテン音楽コンクール一般A1の部 第1位。

■ホルン(2.3番):阿部華苗(2023年入団)

北海道旭川市出身。武蔵野音楽大学卒業。
ホルンを島方晴康、丸山勉の各氏に、室内楽を丸山勉、橋本洋の各氏に師事。2016 Southeast Horn Workshopソロコンクール ファイナリスト。第33回ヤマハ管楽器新人演奏会出演。第16回東京音楽コンクール金管部門入選。第38回日本管打楽器コンクールホルン部門2位。

■クラリネット(首席):渡辺繁弥(2021年入団)

横浜市出身。東京音楽大学卒業。卒業後渡独しフランクフルト音楽・舞踊芸術大学大学院に留学。
クラリネットを芳野亜美、四戸世紀、重松希巳江、近藤千花子、Laura Ruiz Ferreresの各氏に、バスクラリネットをベルリン国立歌劇場バスクラリネット奏者Sylvia Schmückle-Wagner女史に師事。第6回秋吉台音楽コンクール入選。第16回クラリネットアンサンブルコンクール第2位、協賛三社賞を受賞。第1回Kクラリネットコンクール第1位。第32回日本木管コンクール入選。




 

静岡新聞SBS有志による、”完全個人発信型コンテンツ”。既存の新聞・テレビ・ラジオでは報道しないネタから、偏愛する◯◯の話まで、ノンジャンルで取り上げます。読んでおくと、いつか何かの役に立つ……かも、しれません。お暇つぶしにどうぞ!

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