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【しずおか連詩の会】5人の参加者を静岡県のサッカー関係者に例えると…。大木武監督(J2熊本)、石毛秀樹選手(J1G大阪)、古川陽介選手(J2磐田)らに重なるのは!?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「しずおか連詩の会」。先生役は静岡新聞教育文化部長の橋爪充が務めます。 (SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2023年11月8日放送)

しずおか連詩の会、三島市で11月12日まで

(橋爪)きょうは11月9日から12日まで三島市で開かれる2023年の「しずおか連詩の会」についてお話します。

(山田)以前もこの番組で連詩の会について触れましたね。

(橋爪)そうですね。ついに年に1回行われる「しずおか連詩の会」が始まるということで、改めてこの文学イベントがいかに楽しいものかということを分かりやすくお伝えできればと思います。

(山田)まずはどこから話していきますか。

(橋爪)概要を説明します。

このイベントは1999年に始まり、静岡県文化財団や静岡県などが主催しています。5人の詩人が静岡県に集い3日間、時間と場所を共有して、現代詩を40編紡ぎます。40編つなぎ合わせたものを「連詩」と言います。同じ部屋にこもって互いに議論を交わしながらつくっていくんです。

(山田)詩人の方々は普段1人で創作活動を行っていますが、このイベントでは「個人プレー」が「チームプレー」になって作品をつくるということですね。

(橋爪)そうなんですよ。作り手の方々もよく強調されるんですが、他の人がどういうふうに詩をつくっているかという創作過程を横で見ながら、自身もつくっていく。非日常体験になっています。

連詩にはいろいろな形式がありますが、「しずおか連詩の会」では5人の参加者が5行の詩、3行の詩をリレー形式で作ります。5人は創作期間の3日間にそれぞれ5行詩、3行詩を4編ずつ、計8編創作することになります。

参加者はそれぞれ、前の詩が描いた世界の雰囲気を受けて、自分の詩を作らなくてはなりません。そこが面白いところであり、難しい部分でもあります。

(山田)難しいですね。「やれ」と言われたら絶対無理です。

(橋爪)元をたどると、三島市出身の詩人で文化勲章などを受章されている大岡信さんが、 1960年代に詩人の谷川俊太郎さんたちと遊び半分で始めたと言われています。日本古来の連歌や連句を現代詩で行おうというのがスタート地点で、大岡さんが故郷の静岡県で連詩を文学イベントとして定着させようと試みたのが「しずおか連詩の会」です。

大岡さん自身も2008年まで毎回参加していました。その世界では著名な方が次から次へと参加していて、谷川俊太郎さんもそうですし、今年の萩原朔太郎賞を受賞した杉本真維子さんや、三角みづ紀さん、和合亮一さんも参加しています。

小説家でいうと町田康さん、古川日出男さん、歌人の岡井隆さんや木下龍也さん、浜松市出身の俳人・高柳克弘さんらも参加したことがあります。

今年も5人参加されますが、現代詩に詳しくない方にもわかりやすいようにそれぞれ説明したいと思います。

(山田)お願いします。

野村喜和夫さんは大木監督

(橋爪)無理やりですが、静岡絡みのサッカー関係者にちょっと例えて紹介します。

(山田)今年の「しずおか連詩の会」に参加する詩人をサッカー関係者に例えると、きっと聞いてる方がわかりやすいだろうということですね。

(橋爪)試しに聞いてみてください。まずは数々の詩の賞を獲得している野村喜和夫さんです。この方は最古参で、1999年の第1回にも名を連ねています。2009年からは「さばき手」と呼ばれるまとめ役を務めているオールラウンドプレーヤーです。

(山田)だんだんサッカーっぽくなってきましたね。

(橋爪)世界中の文学に精通しているので、前の人がどんな詩を書いても、確実に受け身をとることができます。プレイヤーとしての仕事以上に、まとめ役として、各人の詩に「これでいきましょう」と太鼓判をおさなくてはいけない。最終的に、何らかのテーマが感じられる40編を作り上げるという責務があります。マネジメントという意味でも、たいへん重い責任を背負っていますが、百戦錬磨なので確実に結果を出すんです。

(山田)ちゃんと結果を出すマネージャーでもあると。

(橋爪)マネジメントという部分を重視して野村さんを例えるなら、ロアッソ熊本の大木武監督です。

(山田)そこ来ましたか!

(橋爪)旧清水市出身で、これまでに甲府、清水、岐阜、京都で監督を務め、J2の熊本を今年の天皇杯ベスト4まで導いた。手元の札を上手に使って結果を出す、という点で。

(山田)スタジオの外はポカンとしてますが大丈夫ですか(笑)。次行きましょう!

文月悠光さんが石毛選手に重なるわけとは

(橋爪)続きまして、文月悠光さん。高校生のころから評価が高く、高校3年生の時に発表した詩集「適切な世界の適切ならざる私」で、第15回中原中也賞を最年少受賞しています。

(山田)すごい。

(橋爪)静岡サッカーでいうなら、ガンバ大阪の石毛秀樹選手です。

(山田)石毛選手ですか。

(橋爪)清水エスパルスユース時代にアジア年間最優秀ユース選手賞に選ばれています。かなり若い時から活躍し、期待通りの成長を遂げ、チームに欠かせない存在になっている。高校生の頃から成長を続け、今や現代詩の世界の中心に位置している文月さんは、まさに現代詩界の石毛選手です。

(山田)はい、どんどん行きましょう!(笑)

異国の地で活躍という共通点

(橋爪)次は田原さんです。1965年、中国河南省生まれで、大学生の頃に中国で初の詩集を出し、1991年に来日。2004年には日本語の詩集を出しました。2009年に出した詩集では現代詩の権威である第60回H氏賞を受賞。日本と中国を往来するバイリンガル詩人なんです。

(山田)何か見えてくるんじゃないですか。

(橋爪)私が重ねるのは元清水エスパルスの三都主アレサンドロさん。ブラジル出身で異国の地である日本に順応し、日本代表にまで上り詰めた。母国語ではない日本語を駆使してたぐいまれな成果を産んでいる点が共通していると思います。

(山田)はい、はい。

異業種からの挑戦


(橋爪)続きまして、岡野大嗣さん。今回、唯一の「詩人以外」の参加者なんです。短歌の世界から「殴りこみ」というと物騒に過ぎるかもしれませんが、歌人がどういう詩をつくるのか、も注目ポイントです。

異業種から乗り込んできた。そうなると、挙げたいのは昨年ジュビロ磐田の社長に就任した浜浦幸光さん。旧ヤマハ発動機ラグビー部OBなんですよね。

(山田)リスナーさんからX(旧Twitter)で「詩人をサッカー関係者に例えてくれている。分かりにくいです」という突っ込みが(笑)。

(橋爪)もう止められないですね(笑)。

(山田)ここまで来たらそうですよね。行きましょう。

(橋爪)ラガーマンがサッカークラブの運営に携わる。歌人の岡野さんが現代詩の共同創作に挑む姿に重ねてしまいます。

小野絵里華さんは言葉に迷いがないドリブラー

(橋爪)最後は、小野絵里華さん。昨年8月に出た第1詩集「エリカについて」がとにかく最高に面白いんです。表題詩は自分の名前を糸口に、言葉と意味と身体性をあれこれ考察していて、これまでに読んだことがないような読後感が残る。全体的に言葉に迷いがなくて、グルーブがあるんですよね。まるでドリブルしているかのよう。

(山田)ドリブラー。見えてきたかな。

(橋爪)見えました。ズバリ、ジュビロ磐田の古川陽介選手に例えます。古川選手のように鋭く切り込む小野さんの言葉のチョイスを楽しみにしています。

これまでの例え、伝わってますかね?

(山田)いやあー、伝わってる感じじゃないかな(笑)。

(橋爪)例えはともかく、「しずおか連詩の会」は、言ってみればジャズバンドのアドリブの受け渡しに近いものがあります。ドラマーのソロ、ベーシストのソロ、ピアノのソロとつなぐ場面は見たことがあるでしょう。要するに、ライブなんですよ。

教育文化部公式X(旧Twitter)で「連詩ライブ」やります!

(橋爪)ということで、9~11日の創作期間中、静岡新聞教育文化部の公式X(旧Twitter)アカウントでは、「連詩ライブ」を開催します。順番に出来上がっていく詩を1編1編、すぐにアップします。ぜひフォローしていただき、連詩のライブ感を味わっていただけたらと思います。みんなで楽しみましょう。

(山田)連詩を知らなかった方もぜひチェックしてみてください。今日の勉強はこれでおしまい!

静岡新聞教育文化部公式X (旧Twitter)(@ats_bunka) 

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