【水泳の楽しみ方と必要性】科学の力でスイマーは進化!一方、水泳の授業は減少傾向に…
(寺田)6月23日から3日間、県高校総体の競泳が行われ、好記録が続出しました。飛龍高の大木優瑠(うりゅう)選手は、男子自由形の400メートルと1500メートルをともに大会新記録で制しました。
女子自由形でも、飛龍高の鈴木月渚(るな)選手が50メートルと100メートルのいずれも大会新記録を出し、3年連続で短距離2種目優勝を成し遂げました。
7月21日から3日間、東海総体が浜松市で開催され、8月に北海道で行われる全国総体切符を争います。
静岡は「水泳王国」でもあった
(寺田)静岡はサッカーや陸上が強いという話を以前しましたが、かつては水泳王国でもありました。有名なのが「フジヤマのトビウオ」と呼ばれた故・古橋広之進さん(浜松市西区、当時の雄踏町出身)。日本水泳連盟会長も務め、浜松市の「古橋広之進記念浜松市総合水泳場」は古橋さんにちなみ、「トビオ」の愛称で親しまれています。
古橋さんの全盛期だったころの1948年ロンドン大会に、戦後間もない日本は出場を許されませんでした。そこで日本は、ロンドン大会の決勝と同じ日に日本選手権の決勝を開催しました。
古橋さんは自由形の400メートル、1500メートルでロンドンオリンピックの金メダリストを上回る世界新記録を出して勝ちました。
(山田)すごい。まさにトビウオですね。
(寺田)競泳で五輪に出場した静岡県勢は40人以上います。今よりも戦前が盛んでしたが、そのせいか静岡県内はプールが多くて、スイミングスクールの数も多いんです。
(山田)そういう歴史があるからなんですね。
(寺田)戦後は、沼津市出身の岩崎恭子さんが印象に残っている方が多いと思います。中学2年生、14歳のとき、1992年のバルセロナ五輪女子200メートル平泳ぎで金メダルを取りました。
この後も、県勢はオリンピックで活躍しています。2008年の北京大会では3選手が出場。男子200メートル個人メドレーで高桑健選手(日大三島高出身)が5位に入りました。12年のロンドン大会は女子の400、800メートルリレーで松本弥生選手(飛龍高)が入賞。
16年のリオ大会は男子200メートル個人メドレーで藤森太将選手(飛龍高出身)が4位に。21年の東京大会でも、自由形の高橋航太郎選手(静岡東高出身)がリレーメンバーに入り、4大会連続で県勢が出場を果たしています。
(山田)静岡県勢がオリンピックに毎回出ているんですね。そのイメージはなかったです。
(寺田)東京パラリンピックでも鈴木孝幸選手(聖隷クリストファー高出身)が金メダルを含む5つのメダルを獲得する活躍がありました。
水の抵抗をいかに減らすか
(寺田)前回陸上の話をしたときに「陸上って科学だ」という話をしました。では水泳は何か。先日、静岡県水泳連盟の鳥居裕史会長に伺ったところ「流体力学」だとおっしゃっていました。どれだけ水の抵抗をなくして効率的に前へ進むか。表面張力も関係すると。
(山田)まさに科学ですね。
(寺田)闇雲に練習すればいいわけじゃないんですよね。例えば、平泳ぎの選手で、太ももの筋肉をつけ過ぎたら抵抗が増してしまって、タイムが遅くなっちゃったこともあったそうです。筋力があればいいということではないようです。
レーザーレーサーは何だったのか
(山田)水の抵抗でいうと、水着も一時期話題になりましたよね。(寺田)高速水着のレーザーレーサーですよね。2008年、北京オリンピックの頃に世界記録などが軒並み塗り替えられました。
レーザーレーサーは、スウェットスーツのような継ぎ目がない生地で抵抗を減らすことができました。素材にもポイントがあってポリウレタンのパネルがついてるようなものだったので、浮力を得られたんですね。
水の抵抗を減らすためにはなるべく水面近くで姿勢をまっすぐ保った方がいいので、選手は前に進むだけじゃなくて、浮くためにも力を使ってるんですね。
でもレーザーレーサーを着ればそれだけで浮力を得ることができ、選手は全ての力を前に進むために使えたんです。
今は禁止になって、男子はへそから膝まで、女子は肩から膝までというような、水着の面積の規制と生地の厚さの規制があります。
(山田)結構細かく規定が決まっているんですね
(寺田)ただ、レーザーレーサーを着て出た記録はどんどん破られてるんですよ。
(山田)すごい。人ってすごいですね。
(寺田)もちろん選手、指導者の努力なんですが、姿勢を水面近くでまっすぐ保てば速くなることが改めてわかったんです。すると、それをキープするための体幹を安定させるトレーニング方法や、水中姿勢を安定させるフォームなどについて、どんどん研究が進みました。
レーザーレーサーの功罪はありますが、あれでいろんな技術やトレーニング方法が進歩したという側面もあるんですね。
(山田)一概にあの件が悪かっただけじゃないんですね
(寺田)ちなみに、古橋広之進さんの75年前の世界記録よりも、県総体で優勝した大木選手のタイムの方が速いんですよ。やっぱり人類ってすごいです。
水泳の授業が減少傾向…着衣泳を学んで
(寺田)水泳は競技でもある一方、命に直結するものでもあります。しかし今、水泳の時間が小中学校ですごく減っているんです。背景には先生たちの負担増や、事故を回避する風潮があるのですが、本末転倒というか…。それで泳げない子が増えてしまったら、水の事故が逆に増えちゃうんじゃないかと懸念をするところです。
(山田)おっしゃる通りですね
(寺田)それで着衣泳っていうのがあるんです。金メダルをとった岩崎恭子さんが着衣泳の普及プロジェクトに取り組んでいます。
着衣泳の基本姿勢は、仰向けになって顔と足を浮かした「背浮き」。顔を上にしてお腹を水平に保ったら、人間って浮くんですよ。
東日本大震災でも、着衣永を実践して救助された事例があります。ポイントはまず、パニックにならないこと。慌てて力を入れると沈んでしまいます。
靴は浮力があるので脱がないこともポイントです。その上でペットボトルとか漂流物があれば、それを胸に抱えて救助を待つ。こういうことが大事なんです。
(山田)これから夏になって、水のレジャーが多いですから、こういうことを改めて学んで、夏を楽しみましょう。今日の勉強はこれでおしまい!
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