
(山田)静岡マラソン、来年5年ぶりに開催されることが決まったということですが。
(市川)「静岡駿府マラソン」というハーフマラソンが2014年にフルマラソンの「静岡マラソン」に生まれ変わり、2019年まで6回開催されました。ただ、2020年から新型コロナウイルス感染拡大の影響で4年連続で中止となりました。昨年8月には、このままでは人件費や大会経費の確保が難しいということで「静岡マラソンを休止する」という発表があったんですよ。ところが、「5年ぶりに復活する」という話題が最近出てきたんです。
(山田)昨年の大会休止を知っている人からしたら、「復活か」っていうことですね。
(市川)静岡市は、これまでも静岡マラソンに対して4500万円を補助金として出していました。コロナ禍が明け、今回は補正予算で1億円の負担金を静岡市が出し、さらに事業主体もこれまでのように民間が担うではなく、市が担うという発表でした。
(山田)1億円。倍以上出して、静岡市自ら運営していこうということですね。今までは民間がやってきたものを市がやり、お金をもっと出すということは、もっと大きなコンテンツにしていこうという思いがあるんですかね。
(市川)静岡市としては、この静岡マラソンという一度付いたイベントの火を消したくないという思いがあったと思うんです。民間が運営するイベントは、スポンサーを探したり、参加者から参加料を取ったりして運営するしかありません。
地方都市で大きいイベントを維持するのは難しい。維持したければ税金を使い、行政としてある程度の金額を負担しなきゃいけないという現実があります。
市が期待するのは経済効果
(市川)静岡市側は「経済波及効果」に期待しています。イベントに参加する人が、交通費や飲食費、宿泊費という形で地域にお金を落とす。それによって飲食店やホテルはもちろん、そこに納品している農家さんなども潤うという考え方があります。その経済効果が、例えば2019年に行われた静岡マラソンだと15億6000万円で算出されているんです。市が税金1億円使ったとしてもお釣りがきますよね。
市がイベントにお金を出すのは静岡マラソンだけではありません。大きなものでいうと市内で年に1回開催の大道芸ワールドカップには、実は1億円出しています。安倍川花火大会にも約5000万円の補助金を出していて、それによって運営が維持されています。
(山田)バックアップしてる部分は大きい。でも、それより大きい経済効果が期待できるからやってるわけですね。
(市川)大道芸ワールドカップは約20億円、安倍川花火大会に至っては約35億円の経済効果があると算出されているので、地域は潤っているんだなということになる。
「1億円の税金」と聞くと、やっぱり結構大きいなって感じると思います。私が静岡市政の担当記者をやっていた時、「大道芸ワールドカップに1億円の税金が使われている」って聞いてとても驚いたんです。「民間がやってるんじゃないの?」という感覚だったので。
取材を始めてみると、事業費全体で言うと、2億円超が掛かっていて、大体半分ぐらいを静岡市が負担していたんですよね。本来は「民間だけで100%」が理想ですが、大道芸ほどの人気イベントになっても半分近くの費用を市が負担している。
ただ、大道芸ワールドカップや安倍川花火大会は、静岡市民なら一度は見たことがあるような大イベントだと思うんですが、静岡マラソンは、ランナーしか恩恵を受けないところがあると思うんですよね。静岡市全体の税金を一部の層だけが楽しむイベントに使うことの是非に関しては、議論があると思います。
(山田)1億円使うんだったら、他もどういうふうに取り込んでいくのか、何か説明が必要な気もしてきますね。
より公共性が求められる大会に

(市川)大道芸ワールドカップに関して言うと、世界から大道芸人を招くときの費用などが、ちょっとブラックボックスに入ってる部分があって、一度問題になりました。税金を掛けるからには、運営をすごく透明な形にしなきゃいけないですよね。
どんなものにどれだけお金を使って、実際どのぐらい地域がそれによって潤っているのか。静岡マラソンは地域の経済波及効果だけでなく、健康課題など、いろんなものに発展すると思います。そういったものに関して、静岡市はどの程度目配せができているのか。さらに公共性が求められる大会になっていくのでは。
(山田)県内各地でマラソン大会が多く、参加者も笑顔で走っている。マラソン大会の楽しさと、あとはそれに税金をかける意味をまた考えてみたいなと思いましたね。
(市川)これは難波市長の決めた独自の予算で、6月の補正予算案に1億円計上されてるんですね。この補正予算を審議する議会が13日から始まるので、おそらく、静岡マラソンに1億円使うことに関してどうなのかという議論が市議会の場であると思います。
(山田)皆様ぜひ注目して見てください。今日の勉強はこれでおしまい!