小学校のICT教育 子どもの頃から育みたい「情報活用能力」

今回は、「日本のICT教育」について、静岡大学教育学部 准教授の塩田真吾先生にSBSアナウンサー近江由佳がお話をうかがいました。
※2023年5月17日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています

「情報活用能力」がキーワード

近江:現在、小学校で取り入れられているICT教育について教えてください。

塩田:2019年からGIGAスクール構想が始まり、小学校では1人に1台、タブレット端末が配布されています。タブレット端末を使い、情報の収集したり、写真で記録したり、意見を共有したりするなど、授業で活用しています。

近江:1人1台配布するのは、欧米諸国など他の国に比べれば早い方ですか。

塩田:アメリカやイギリスなどに比べると遅い方です。イギリスでは、数年前からプログラミングについて学習しています。

近江:情報社会に乗り遅れずに活躍するには、子どもの頃から学ぶことが大事ですか。

塩田:そうですね。さらに端末を上手に使う「情報活用能力」を身に付けることが大切になります。

近江:「情報活用能力」とは、具体的にはどんな力になりますか。

塩田:端末を使って情報を収集し、分析し、まとめて、それを誰かへ上手に伝える力です。この「情報活用能力」には「情報を上手に活用する力」と「情報のリスクに対応する力」の2つの面が必要だと思います。

「情報のリスクに対応する力」を身に付けるためには、リスクを「0か1か」で捉えないことがポイントです。写真をネットで公開するときに気をつけるべきことを、「写真を公開するか、しないか」で教えてしまいがちです。しかしこれからは「公開した時にどれくらいのリスクがあるのか」というリスクを見積もる力が大事になってきます。そのためには「公開した時にどんなトラブルになるのか」を想像させていくことが大切です。

近江:自分で考えていく力を授業で育んでいくということですね。

今後のICT教育について

近江:対話型人工知能(AI)「チャットGPT」は教育現場で、今後どのように使われていくのでしょうか。

塩田:大学ではいろいろな指針が出ており、小学校では夏休み前にガイドラインが出るようです。そこから活用がスタートすると思います。

近江:小学生でもタブレット端末を使えるので、利用できてしまいますよね。それを使って自分で文章を出すことが、必ずしも悪いことではないように感じてしまいます。

塩田:チャットGPTを使って作った文章をそのまま出してしまうと、権利に問題があったり、考える力を奪われたりしてしまいます。そのためリスクも踏まえて上手に使うことが求められます。

近江:日本のICT教育の課題はどこですか?

塩田:端末の使い方に注目が集まりがちですが、どう活用していくのかという「情報活用能力」を育てていくことが課題ですね。多くの人がスマホを持っていると思いますが、使いこなしているかというと個人差があると思います。単なる「使い方」だけではなく、「活用する力」を身に付けさせてほしいと思います。

近江:家庭でできるICT教育を教えてください。

塩田:ICT機器を使ったプログラミングなどもありますが、「情報活用能力」を伸ばすという視点でいえば、できることはたくさんあります。

例えば、一緒にテレビを見ながら「このCMって誰向けの情報なんだろうね?」と聞くことは、対象を意識した情報活用につながりますし、ネットの広告を見て「“80%の人に効果あり”って書いてあるけど,本当かな?」と一緒に考えることは、情報のリテラシー向上につながります。身の回りの「情報」を一緒に考えてみることが、家庭でできるおすすめの方法です。
今回お話をうかがったのは……塩田真吾先生
1981年生まれ。静岡大学教育学部准教授。静岡大学若手重点研究者(第4期・第5期)。専門は、教育工学・情報教育。2009年より静岡大学で学校のICT活用や情報モラルなどについて実践的に研究している。最近の研究関心は「余暇教育」。子どもたちのネットやゲーム以外の余暇をどう充実させるかを研究中。

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