セガがゲームセンター事業から撤退!ゲームセンターは今後どうなる?

ゲームセンターの「SEGA」が「GiGO」へ

先日、大手業務用ゲーム機メーカーのGENDA(ジェンダ)が、ゲームセンター運営を手掛けるGENDA SEGA Entertainmentの全株式を取得。社名を「GENDA GiGO Entertainment(ジェンダ ギーゴ エンタテインメント)」に変更し、「SEGA」ブランドで展開してきたゲームセンター店舗を「GiGO(ギーゴ)」にすると発表しました。これに伴い、セガサミーグループはゲームセンターの運営事業から撤退することになりました。サブカル専門ライターの河村鳴紘さんに、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※2月7日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

牧野:セガといえば、長年ゲームセンター業界を引っ張ってきた印象があります。今回ゲームセンターの運営事業から撤退することになったのはなぜでしょうか?

河村:この話は少し複雑なので、少し状況を整理したいと思います。実は今回セガが売った株式は約15%で、約85%は1年前すでにGENDAがセガから取得しています。つまり株式の大半は既にGENDAにあり、経営権も1年前からGENDAが握っていたんです。ですからその時点で実質的には撤退していたという見方もできます。

今回のポイントは、セガが残りの株式をすべて手放して「完全に手を引いた」ことです。所有する株式をすべて手放すのは特別な意味がありますし、社名から「SEGA」の名前が消えたのもインパクトがあって話題になっているのだと思います。おっしゃる通り、セガは長年にわたって、ゲームセンター業界を引っ張ってきた象徴的な企業です。それだけにみなさんも寂しさがあるのではないでしょうか。 

ゲームセンター事業からなぜ撤退?

牧野:ゲームセンター事業からセガが撤退することを決めたのは、どのような経緯があるのでしょうか?

河村:ゲームセンター事業は「運営」と「機器の開発」に分けて考えられます。セガが手を引いたのは「運営」の方。なぜ運営から手を引いたかというと、ゲームセンター市場の見通しが将来的に厳しいことがあると思います。

その理由のひとつめなんですが、ゲームセンター業界の市場規模は年間でだいたい7000億円。横並びであまり成長していない状況があります。もともとゲームセンターには「ゲームで遊ぶ」という積極的ニーズと、もうひとつ「ひまつぶし」ニーズがありました。それが家庭用ゲーム機やスマートフォンの高性能化などの時代背景によって成長が厳しくなりました。一番わかりやすい例が、インターネットに「ひまつぶし」ニーズを取られてしまったことがあがります。その結果、施設への来場者数が減り、ゲームセンターがビジネスとして厳しくなってしまいました。 

ふたつめは、ゲームセンターの運営には店舗の維持やオペレーションなど相応のコストがかかること。最後のとどめが、新型コロナウイルスの感染拡大です。コロナの拡大で来場者が激減し、収益がどうにもあがらない状況になっています。こういった経緯から、ビジネスとして「耐える」か諦めて「切り離す」かの判断を迫られて、「切り離す」を選択したことになります。もちろん半世紀にわたり続けてきた事業だけに、断腸の思いだったと思います。

コロナ禍のゲームセンター

牧野:コロナ禍でのゲームセンターの対応はみなさんどうされているんですか?

河村:飲食業界と似たような感じで、オンライン化するわけにもいかず、「打つ手」がほとんどなかったと思います。
できることといったら、オペレーションの効率化やムダを省くなどの運営コストの削減くらいしかありません。そもそも、お客さんを呼び込んで、ぶらっときてプレーしてもらうことがポイントなんです。実際に店舗を訪れて、雰囲気を含めて演出するのがゲームセンターの魅力のひとつですから、コロナとの相性は明らかに悪かったですね……。

今、人気のゲームは?

牧野:ゲームセンターに置かれているゲームも昔とはだいぶ印象が違ってきていると思います。以前は格闘ゲームが多かったですが、最近は減っているような気がします。実際のところはいかがですか?

河村:格闘ゲームが減っているのはおっしゃる通りで、売り上げを落としています。人気なのは、クレーンゲーム機、いわゆる景品が取れる「プライズ」というカテゴリのものです。元々ゲームセンターのゲームのウリは、ファミコンやプレイステーションなどの家庭用ゲーム機では遊べない、豪華でハデなゲームが遊べることでした。

ところが家庭用ゲーム機やスマホの性能がアップして、画面がきれいに、豪華になっていきました。そこで、差別化を図るために家庭用ゲーム機などでは再現できない、大型のゲーム機が投入されたわけです。しかし、大型ゲーム機はプレイする価格も高くなってしまうので、初心者が気軽に遊びにくい弱点がありました。

ゲームセンターの今後

牧野:進化させていった結果、初心者が親しみにくいゲームになってしまったりと、いろいろジレンマがあるんですね。ゲームセンター業界の縮小は非常に寂しいものもありますが、一方で、ゲームセンターの筐体(業務用ゲーム機)のレンタルやゲームセンターの筐体を再現したおもちゃなども目にするようになりました。今後、ゲームセンター業界はどのようにして生き残りをかけていくのでしょうか?

河村:40代以降の人たちは、若い頃ゲームセンターで盛り上がった世代なので、思い入れもあると思います。ですからこうしたセガの撤退もネットで話題になるし、その手のグッズも出せば売れるとは思います。しかし肝心なのは、今のゲームセンターに、そういう人たちが足を運ぶか?です。そう考えると今後も厳しいのですが、今考えられるふたつの将来像があります。

1. テーマパーク化

ひとつは、よく業界で引き合いに出されるの「テーマパーク」化です。テーマパークが、そこでしか体験できない楽しみを演出しているように、ゲームセンターも「そこ」でしか体験できない、新しい「驚き」「楽しみ」を演出できるかがポイントになります。

新しく事業に乗り出しているジェンダが、どんな運営をするのか。買収したからには、それなりの勝算もあるでしょうし、ゲームセンターは立地の良さという武器もあるので、そこを上手く使えるとおもしろくなるかもしれません。一例として、スクエアエニックス傘下のタイトーが、ビールを飲みながらゲームを楽しめるような、ゲームセンターとバーを融合させた施設「EXBAR TOKYO plus」を運営しています。

2. 大ヒットコンテンツを生み出す

もうひとつは、ゲームセンターならではの、大ヒットコンテンツを生み出せばいいということです。そうなれば状況がガラッと変わってきます。実際、SEGAはゲームセンターの運営事業は撤退したもののゲームを作ることは明言しています。要するに、「ムシキング」や「ラブ・アンド・ベリー」などのような、広くわかりやすいゲームを生み出して当たればと期待したいところです。

今を支える、屋台骨のコアユーザーも大切にしながら、新規の顧客をどう獲得していくのかもポイントとなってきます。ゲームセンターの仕組みもなかなか難しいと思いますが、ぜひ頑張ってほしいと思います。

牧野:苦境にあるゲームセンター業界ですが、一発逆転のすごいのが出てくれば、また人が戻ったりと策もあるかもしれませんので、応援したいと思います。

河村:そうですね。さまざまな事業で、追い込まれてからヒットコンテンツが生まれて逆転したパターンはけっこうあるので、期待したいと思います。

牧野:どうもありがとうございました!
今回お話をうかがったのは……河村鳴紘さん
サブカル専門ライター。20世紀末から大手メディアでゲームを中心に、アニメ、マンガなどを取材。ゲーム機のトラブル、メーカー対立、残虐ゲーム問題、倒産ネタにも突撃。2019年6月からフリーとして、ヤフーニュース個人(オーサー)で執筆、2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。歴史とスポーツ、ラブコメ好き。

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