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三省堂国語辞典が8年ぶりの大改訂!消える言葉、追加される言葉は?

三省堂国語辞典が8年ぶりの大改訂

最近はネットで検索することの方が多いかもしれませんが、学生時代はきっと多くの人がお世話になったであろう国語辞典。初版発行は1960年というロングセラー「三省堂国語辞典」が、約8年ぶりに全面的に改訂されました。どんな言葉が消えて、どんな言葉が追加されたのか、三省堂辞書出版部の奥川健太郎さんにSBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※12月22日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

牧野:今回8年ぶりの改訂とのことですが、決められた周期があるのでしょうか?

奥川:「三省堂国語辞典」は、初版発行が1960年というロングセラーの辞典です。私が最初に関わったのが、第五版(2001年)のときで、9年ぶりの改訂でした。第六版はその7年後、第七版ではその6年後、そして今回の第八版が8年ぶりの改訂ですので、大体数年から十年弱のサイクルになります。

牧野:最近はSNSの影響もあり、若者がどんどん新しい言葉を作っています。言葉の移り変わりが早くなっていくと、改訂のペースも考えないといけないなどありますか?

奥川:できればもう少し早く改訂できればいいのですが……。今回は中身もアクセントをつけたりなど大改訂でしたので、8年もかかってしまいました。

牧野:何人くらいで担当されているんですか?

奥川:編集メンバーとしては、この辞典の編者、つまり大学の先生など日本語学の専門家である編集委員と、編集部との主に5名が中心になっています。そこに執筆者や校正者を含めると20名以上です。

牧野:そのメンバーで8年ががりで大変な作業だと思いますが、国語辞典の改訂でまず初めにすることは何ですか?

奥川:まず、改訂の編集方針を定めないといけません。この三省堂国語辞典の場合、みなさんが普段使っている今の日本語を「満遍なく」「いち早く」映し出すという編集方針ですので、改訂が終わると、次の版で追加する項目の候補などをストックしていく作業に入ります。今回は約3500語を追加して、項目数としては約84000語となりました。

牧野:削除される言葉もあるんですか?

奥川:約1100語を削除しました。毎回の改訂で、古い言葉など、読者があまり接することがなく、調べなくなっているような項目を削除しています。今回は「MD」「コギャル」「スッチー」などが削除になりました。「MD」は昨年MDデッキの生産も終了しています。第七版では「レーザーディスク」「LD」が削除されています。

牧野:逆に、新しく入っている言葉もあるんですよね?

新たに追加される時代を反映した言葉

奥川:そうですね、新たに加える言葉としては、コロナ禍2年目になりまして、「ソーシャルディスタンス」「人流」「黙食」などがあります。その他には、「いぶりがっこ」「そうなんですね」「ゾーンに入る」「デジタル庁」「虎ロープ」「とんぼ玉」「墓じまい」「ラスボス」等々、あらゆる分野にわたっています。

牧野:みなさんで会議をなさるんですか?

奥川:はい、毎日のように新聞やテレビ、ラジオ、インターネット、街の中から言葉集めをしています。編集委員の先生方と編集部で、次の改訂で入れる言葉の候補を持ち寄ります。そのリストをもとに、何度も会議を重ねて、最終的に今回は約3500語を追加しました。

牧野:例えば、新型コロナウイルスでよく使われるようになった「クラスター」という言葉はどうですか?

奥川:「クラスター」は項目としては元々あったんです。そこに、新語義や新用法と呼んでいますが、新たな語義番号の②や③を設けて、感染者などの意味を付け加えています。

「なので」を使う人が増えている?

牧野:ちょっと聞きたいのが、「なので」という言葉を文の頭に持ってくる人が増えている気がするのですが、どうでしょうか?

奥川:ご指摘の通りです! 2008年の第六版から掲載しているのですが、第七版では接続詞としては、話し言葉のラベルをつけて「私はひとりっ子でした。なので、父は甘かったです」という用例を入れました。今回の第八版では「話し言葉で使われ、20世紀末から文章でも増えた用法」と追記しています。もともと話し言葉だったけれど、徐々に書き言葉にも広がっているという記述を加えたことになりますね。

牧野:辞書の変化を見ていくと面白いですね!

奥川:変化としては「だから」も同じような経緯をたどっていますよね。「短い小説だから読める」から「短い小説だ。だからすぐ読める」というように、接続詞として独立しました。「なので」は最近の変化である分、どうしても砕けた感じを受けるという方も多いかと思います。

三省堂国語辞典の特長は、ネットにはない情報

牧野:その他、新しい「三省堂国語辞典」の特長を教えてください。

奥川:スマホやSNSが普及している中で、ネットの検索では得られない情報を多く盛り込みました。たとえば、「愛する」の項目で、夏目漱石が I love you を「『月がきれいですね』と訳しなさい」と言ったというのは俗説(フェイク)であることを示しました。あるいは、「ホルモン焼き」の「ホルモン」の語源が「放るもん」から来たというのも誤りですと、歴史的な事実から書いています。

牧野:昔からの言葉の真偽を検証するのは大変じゃないですか?

奥川:インターネットではいろんな情報が得られますが、なかには、これは本当かな?というのも含まれています。ですので国語辞典としては、きちんとした信頼できる情報をなるべくたくさん盛り込むことを、特に強く打ち出しました。

牧野:8年間の努力が伝わってくるような感じがします。ひとりでも多くの人に手に取っていただきたいと思います。最後にみなさんにメッセージをお願いします。

奥川:辞書には編纂者がいて、専門家の先生が、その言葉の意味と用法を一生懸命に調べて、分かりやすい解釈をつけています。特にこの「三省堂国語辞典」はお子さんからお年寄りまでを対象にした、簡潔で易しい言葉で説明していますので、読むと「なるほど、そうか」「要するに、こういうことか」と、すとんと分かります。普通版は税込3300円で約84000語収録しているので、1円で25の言葉について、信頼できる情報が得られることになります。

紙版と同じ内容のアプリ版も登場

牧野:今回は電子版も出ているんですよね?

奥川:はい、アプリ版と呼んでいます。スマートフォンのアプリで、紙版と同じ中身のものが発売されました。紙版でもアプリ版でも結構ですので、一度ご覧になっていただければと思います。

牧野:三省堂の国語辞典は非常に便利でアナウンサーでも使っている人が多いのですが、今回、アクセントも一緒に入っているんですよね?

奥川:見出しのところに、赤い記号でひと目で分かるようになっています。

牧野:国語辞典とアクセント辞典の両方を持って歩くと非常に重かったんですが、いまやアプリで両方見れるようになってありがたいです。今回は、ありがとうございました!

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