「がんと闘う誰かのために」病院長バンドと患者がつむぐオリジナル曲「信じた道を」 歌詞に込めた"One for all, All for one"

病院の未来のために、バンド活動を続けるお医者さんたちがいます。ボーカルが院長というのが最もユニークなところです。2025年6月に「LIVEしずおか」で放送したコンサートの模様を見て、強く心を動かされたある女性がいました。

院長がボーカル「ドクターチルドレン」

静岡市にある静岡済生会総合病院の岡本好史(おかもと・よしふみ)院長ら、医師7人で構成されるバンド「ドクターチルドレン」。バンド活動の目的は「地域に愛される病院でありたい」という思いからです。

<静岡済生会総合病院 岡本好史病院長>
「医療や福祉に関わってくれる人材が、だんだん確保が難しくなっているものですからね。ここに来てくれた子どもたちが大きくなったら『ここ楽しそうな病院だな』と思ってうちに来てくれたらと思っています」

放送を見て心が動いた 女性が手紙を書いて...

この放送を見て心を動かされたという、県西部に暮らす優華(ゆうか)さんです。

<優華さん>
「患者さんの前で歌っている先生方を見て、やっぱりこの病気は死と背中合わせなので後悔しないように『私の書いた詞を使っていただけないでしょうか』と、無我夢中にお手紙を書いてしましました」

優華さんは3年前に子宮頸がんだと分かり、その後、転移も見つかりました。

抗がん剤による治療を受け、家族や職場の人たちの支えもあり、2024年にがんを示す症状や検査結果がなくなる「寛解(かんかい)」に至りました。ただし...

<浜松医科大付属病院産婦人科 川岡大才医師>
「『寛解』は通院を続ける必要はあるか?といえば、少なくとも10年くらいは」

優華さんは命を預けられる主治医に出会えたと話します。

院長の息子(プロ作曲家)が作曲

高校生の頃から作詞をしていたという優華さん。

今回、作曲をお願いしたということですが、ドクターチルドレンは人気アーティストのヒット曲を演奏するコピーバンドです。

<岡本病院長>
「作曲できるメンバーがいなくて。息子が元々音楽やっていて、今、作曲の仕事をしているもんですから」

岡本院長の長男「Masafumi Okamoto」さんはアイドルグループに楽曲を提供しているプロです。優華さんの歌詞を見て「ぜひ作品として残せるように」と曲作りを引き受けました。

<岡本病院長>
「実は私、学生の頃ラグビーをやっていまして。ラグビーに、『One for all, All for one』というラグビーの精神がある」
Q. 一人はみんなのため、みんなは一人のためにですよね
「優華さんがいて、バンドメンバーが協力してくれて、息子が曲を作って、みんなで支えようとやってきて、これで『All for one』みたいな感じだなと思った」

「胸がいっぱい」初めての音合わせ

12月9日、ドクターチルドレンの練習場所を優華さんが訪ねました。優華さんの詞に、曲と演奏と歌声がプレゼントされました。

<優華さん>
「胸がいっぱい。自分の思いが音楽になって届く」

<ドクターチルドレン 伊藤さん>
「『空を見上げて深呼吸しよう』って、そういえば最近そういうことしていなかったなと。この前お休みの時にやってみました」

<野路毅彦アナウンサー>
「優華さん、伝わってますよ」

コンサート当日、優華さんがいなかった理由

12月13日、静岡済生会総合病院で恒例のクリスマスコンサートが開かれました。ドクターチルドレン登場の前に、優華さんが作詞したオリジナル曲「信じた道を」の歌詞カードが配られ、来場者は歌詞を噛みしめるように聴き入りました。

しかし、この日コンサート会場に優華さんの姿はありませんでした。

優華さんは静岡市の研修施設にいました。

がん患者やその家族に寄り添い、悩みを分かち合う「ピアサポーター」になるための講義を受けていたのです。

あいにくコンサートと研修の日時が重なってしまいました。闘病中に周りの応援を受けた優華さん。今度は自分が応援する側に回る活動を既に始めていたのです。

「One for all」、一人はみんなのために。がんと闘う誰かのための「一人」になれればと...

Dr.Children(静岡済生会総合病院)メンバー・「信じた道を」歌詞

・ボーカル:岡本好史 病院長(外科)
・ボーカル:伊東光志朗 管理栄養士
・ギター:望月亮三 医師 (放射線科部長)
・ギター:松本賢太郎 医師 (皮膚科部長)
・ベース:竹内隆浩 医師(血液内科部長)
・ドラム:小野田亮 医師(産婦人科科長)
・キーボード:天野貴文 医師 (整形外科・非常勤)/ 静岡厚生病院整形外科診療部長

「信じた道を」歌詞

これから先 つまずくことも
きっとあるかもしれない
涙にくじけそうな夜も
そっとやって来るかもしれない

だけど焦らなくていいよ
無理に前だけ見なくていい
時には休んで 立ち止まって
空を見上げて深呼吸しよう

自分が決めた道を信じて
一歩ずつでいいから
たとえ形が見えなくても
君の足跡が未来をつくる

今、周りを見渡してごらん
こんなに応援してくれる人たちがいる
その声が勇気に変わるから
君の笑顔を信じているよ

誰にも見えない涙も
きっと君の力になる
失敗や不安のすべても
大きな夢につながってゆく

迷う日には立ち止まってもいい
それでも心の声に耳をすませて
君自身が決めたこの道を
どうか信じて歩いてほしい

自分が決めた道を信じて
風がつよく吹く夜も
転びそうになったその時も
何度でもここから始めよう

今、周りを見渡してごらん
こんなに応援してくれる人たちがいる
君はいつだってひとりじゃない
そのことを忘れないで

歩き続けたその先で
きっとまた笑えるから
信じた道を進む君へ
心から「頑張れ」を送る

作詞:優華
作曲・編曲:Masafumi Okamoto

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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