「全国のこども病院にいてくれたら患者や家族の支援につながる」病気と闘う子どもたちを支える「ファシリティドッグ」医療スタッフの一員として国内で4頭が活躍 普及に課題も【現場から、】

皆さんは、国内に4頭しかいない「ファシリティドッグ」をご存知でしょうか。専門的なトレーニングを受け、医療スタッフの一員として病気と闘う子どもたちを支えています。静岡県内で活躍する1頭のファシリティドッグに密着しました。

相棒の犬を連れ、病棟を訪ねる女性。

<ハンドラー 谷口めぐみさん>
「おはよう」

待っていたのは、腸の病気と闘う5歳の女の子です。

「シュート!すご~い!」

静岡県立こども病院で働く「タイ」。病気と闘う子どもたちを支える「ファシリティドッグ」です。

看護師の資格を持つ「ハンドラー」と一緒に検査室や手術室へ同行し、子どもたちの不安やストレスを和らげるのが主な仕事です。

<谷口さん>
「お子さんのご希望があったり、スタッフの方がタイちゃんと一緒なら頑張れるかなと思ったときに呼んでくれたりしますね」

県立こども病院では、15年前にファシリティドッグを導入し、タイが3頭目。週に5日、医療スタッフの一員として働いています。衛生管理は徹底し、病棟に入る度に、体をくまなく消毒します。

<谷口さん>
「英玲奈ちゃんこんにちは」

白血病の治療のため2024年9月から入院している下田英玲奈さん。

<下田英玲奈さん>
Q.1人で検査に行くときとタイと行くときはどう違いますか
「タイちゃんと行った方がやる気が出る」

<谷口さん>
「これ、英玲奈ちゃんが作ってくれたんな。タイにプレゼントしてくれた手作りキーホルダー」

<英玲奈さん>
「タイちゃんが喜んでくれるかなって思って作った」

気分の浮き沈みがある強い薬を使った治療。タイの存在が、気持ちを前向きにさせてくれるといいます。

<母・舞子さん>
「私が空けていたりいなかったりするんですけど、そういう時もタイちゃんに遊んでもらって、電話で『きょうもタイちゃん来てくれたよ』と楽しかった報告をよく聞きます」

子どもたちにとって欠かせない存在となっているファシリティドッグ。しかし、国内にはこの病院を含め、4頭しか導入されていません。普及を阻む大きな要因は「費用」です。導入までに、犬の育成費用として約1500万円、さらに、ハンドラーの人件費や犬の定期健診などに年間約1000万円かかるといいます。

<谷口さん>
「なかなか寄付も集まらないっていう問題もありますし、お金の面は難しいところですね」

院内には募金箱を設置しているほか、タイのグッズを販売して売上金を費用に充てています。

<県立こども病院 山下明子看護師長>
「タイとだったら治療を頑張れるとか、採血とか処置があるんだけど、タイとならやれる。いくら私たち頑張ってもそういうところは引き出せないので。全国のこども病院にいてくれたら、患者さんやご家族の支援につながると思っています」

<谷口さん>
「久しぶり~!こんにちは。タイちゃん持ってくれている、うれしい」

この日、タイと再会したのは3年前に心臓の手術で入院していた佐藤惟人さん。

<佐藤惟人さん>
Q.久々に会えてどうですか
「めっちゃうれしい」

不安でいっぱいの入院生活を支えたのはタイでした。

<谷口さん>
「外来のときにタイに会いに来てくれて、その子の成長を見られるのはとっても私としてもうれしいしタイもうれしいね」

<山下看護師長>
「ちょっと~お兄さんになって。何歳になったの?」

<惟人さん>
「もう7歳だから2年生」

<山下看護師長>
「一番楽しいこと何?」

<惟人さん>
「タイちゃんに出会えること」

ファシリティドッグが病気と闘うより多くの子どもたちに安心と癒やしを届けられるようさらなる普及が期待されています。

<水野キャスター>
子どもたちの笑顔を見るとタイの存在の大きさが伝わりますがどのような訓練をしているんですか。

<植田記者>
候補犬は社会化トレーニングといって病院などのさまざまな場所で幅広い年齢の人に触れる練習を行います。また、100個の合図を習得し添い寝などの特定のスキルも身につけます。

資金ついては開始当初、法人が寄付金を財源に全額無償提供していたもののその後の運営費については、徐々に病院負担へ移行しているそうです。しかし、病院はどこも経営難で普及拡大のためには、診療報酬制度への組み込みや国の補助金などが求められています。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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