道交法改正で規制緩和!電動キックボード普及へ

今年7月、道路交通法の一部改正で、電動キックボードなどが一定の基準を満たせば免許なしで乗れるようになったと話題になりました。電動キックボードなどについて、モビリティジャーナリストの森口将之さんに、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※2023年7月10日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

電動キックボードとは?

牧野:セグウェイとは違う乗り物ですよね。

森口:2輪の電動モビリティという点ではセグウェイと同じです。セグウェイがこの分野のパイオニアだったと思いますが、電動キックボードはもっと簡単な成り立ちです。前後の車輪の間にあるステップボードに立ち、ハンドルに手をかけて乗ります。セグウェイは独特のバランスが必要で、メカも結構ハイテクでしたが、電動キックボードはかなりシンプルでコンパクト。価格も安いため、世界中で人気が広まりました。

牧野:値段によって乗り心地は違うんですか。

森口:安いものだとサスペンションが付いていなかったり、高いものだと前後両方に付いていたりします。

牧野:衝撃の吸収などに違いが出てくるんですね。段差でいうと何cmぐらいまで乗り切れますか。

森口:電動キックボードは車輪が小さいので、横断歩道などの段差は注意しないと転んでしまいます。段差に弱いことを頭に入れておいてください。

免許なしで運転可能

牧野:どんなルール変更があったのか教えてください。

森口:長さ190cm以下、幅60cm以下で最高速度20km以下などの規格を満たせば、新設された「特定小型原付」というカテゴリーに入ります。16歳以上は運転免許なしで、ヘルメット着用は努力義務という形で運転できるようになります。

車道や自転車レーンなどを走るので、自転車に近い感じになると思います。またスイッチ操作で最高速度を6km以下に設定できるなど、一定の条件を満たす車両(特例特定小型原付)であれば、緊急避難のような形で、「普通自転車等及び歩行者等専用」の道路標識等が設置されている歩道に入ることもできます。

牧野:今回のルール改正が行われた背景はなんでしょうか。

森口:世界中で「ウォーカブルシティ(歩いて暮らせるまちづくり)」というのが、環境や健康の問題から浸透しています。そのなかで「ラストワンマイル」という、最寄り駅から自宅までの距離を移動する乗り物が望まれています。電動キックボードは、大都市の狭い場所でも邪魔にならないスペース効率の良さから世界中で普及したようです。日本も「大都市では良いのでは?」と追随しようとしているんですね。

牧野:自転車より、さらに場所を取らないんですね。

森口:大体3分の1から4分の1くらいだと思います。

電動キックボードの安全性は?海外の状況は?

牧野:道路の規制も含め、安全性を心配する声もあります。電動キックボード自体の安全性についてどうお考えですか。

森口:電動キックボードはタイヤが小さく、ステップボードの幅が狭いので、踏ん張りが効きにくいです。そのためハンドルに力が掛かり、余計に不安定になります。ただ慣れて特性を掴めば大丈夫だと思います。

欧州などでは自転車レーンが整備され、キックボードは自転車とほぼ同じルールの国もあるので、海外の方が環境的には安全かと思います。日本は自転車の安全対策もこれからなので、並行して環境整備をお願いしたいと思います。

牧野:今後、日本で普及していくためのポイントはありますか。

森口:やはり乗る人のルール遵守、マナーにかかっていると思います。フランスのパリでは事故が多いので、電動キックボードのシェアリングが廃止されます。本来は違法になる2人乗りする人がすごく多いことも気になりました。

牧野:みなさんが今後、電動キックボードをどう乗るのかが非常に大事になってきますね。まさに今は「幼少期の自転車乗り始め」が一斉に起きることと同じなので、事故が起こりやすい状況ですよね。

森口:細心の注意を持って乗ってほしいですね。

今後の展開は?

牧野:ここから1年、どういう動きをするのかが非常に注目ですね。森口さんは、どういう風になってほしいと思っていますか。

森口:「特定小型原付=電動キックボード」ではなく、3輪や4輪も規格内であれば特定小型原付に含まれます。その場合は安定性がかなり上がります。大都会の若者のみならず、地方の高齢者も安心して乗れるので、免許証返納後の乗り物というカテゴリーと捉えることもできます。そういった他の特定小型原付にも、個人的には注目しています。

牧野:だから今回ルールが緩和されたのは、電動キックボードだけではないということですね。

森口:法律を見ても「電動キックボード等」とあるので、規格内なら3輪でも4輪でもいいんです。

牧野:そういった商品が今後ますます出てくる可能性があるということですか。

森口:そうなれば地方の身近な足として、普及する可能性もありますね。

牧野:捉え方にもよりますが、地方にとってはチャンスという見方もあるというわけですね。

森口:そうですね。やはり地方でバスなどが減っていく中で、どうやって動けばいいかという点で、特定小型原付が出てくれば有望ですね。

牧野:一概に「電動キックボードは危ない」ということではなく、広いスペースが確保できるところならいいかもしれないし、なかなか論じるのは難しい話ですね。

森口:特定小型原付と電動キックボードは、分けて考えてもいいのかなとは思います。
今回お話をうかがったのは……森口将之さん
モビリティジャーナリスト。1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年にフリージャーナリストとして独立。2011年に株式会社モビリシティを設立。グッドデザイン賞審査委員、日本福祉のまちづくり学会会員も務める。公式ブログ(http://mobility.blog.jp/

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