
猛暑の中、軽快に走るランナーが羽織っている柄物のシャツ。風にたなびくこのウエアには静岡県内の産業を支える町工場の魂が込められています。
<杉村精工 杉村岳取締役>
「アロハシャツみたいに普通に私服として街中で着ていただけるようなデザインを意識した」
8月14日のしずおか産はこちらのランニングウエア。デザインをよく見ると…ボルトやワッシャーなど、機械部品や工具がデザインされています。
<杉村取締役>
「当社が製造業、ものづくり、町工場でしてそれを象徴するアイコンをデザインに取り込んだ」
このシャツを企画・開発したのは静岡県焼津市に本社を置く杉村精工です。産業用機械の設計、加工、組み立てを手掛ける町工場です。多くの町工場と同様に創業76年のこの会社も大きな悩みを抱えています。
<杉村取締役>
「一番は人手不足、特に若手人材の不足が問題にあげられる」
杉村精工の従業員の平均年齢は40代後半。新卒採用の募集をかけてもなかなか応募がないというのが実情です。県内の産業を支える「ものづくり」の現場に若い世代を呼び込みたい。そこで杉村さんが考えたのはスポーツの力を活用することでした。
<杉村取締役>
「町工場、製造業を伝えるために何をしたらいいかというところで、私の中では自分が好きなスポーツ、ランニング、ランニングシャツにものづくりを絡めたら、ちょっと面白いんじゃないかなと思って、ああいう製品に至った」
杉村さんは家業である杉村精工に入社する前は、東京のフィットネス業界で働いていました。そこから転職してきたという強みを生かすため、町工場と若い世代をスポーツでつなぐという試みを進めようと考えたそうです。こんな思いを持つほどですから町工場によほど強い思いがあるかと思いきや・・・
<杉村取締役>
Q.元々お好きだったんですか?
「僕は全く好きじゃないです。好きじゃなかったです」
小さいころから身近過ぎて杉村さんは製造業に興味を持てなかったそうです。どうやって製造業をアピールしたらいいのか。杉村さんが頼ったのは先輩社員でした。
「着てみてわかったけれど速乾性があって...」
「走るのには一番いいよね。(汗で)びっちゃびちゃになるので...」
自分よりも長い時間、ものづくり、町工場に携わってきた従業員と話し合いを重ね、ランニングウエアのデザインなどを決めてきたのです。
<先輩社員>
「細かく表現してもらっていて、いつも作業で使っているものがそのまま写されている感じで良いと思います。サイズ感とか色合いなどいろいろ調整してくれてカッコよくなったんじゃないかと。だいぶオシャレになったと思う」
シャツの製造はトレイルランニングの用具などを手掛ける広島県尾道市のメーカー「インナー・ファクト」に発注。軽くて丈夫で個性的なランニングウエアが完成しました。
<杉村取締役>
「今回はランニングウエアということで、ものづくりと絡めて作ったんですけども、今後もこういったスポーツ、フィットネスグッズの開発とか、スポーツとものづくりを絡めたら話が広がるかなと視野に入れています」
このランニングウエアは予約販売制で、1着税込み3960円です。メーカー「インナー・ファクト」の公式オンラインストアで8月17日まで予約可能で、商品は9月中旬ごろに届く予定です。