
<社会部 大西晴季記者>
「触った感じも木の温もりを感じる」
<前田工房 薗田喜恵子代表>
「優しいですよね。これが、世の中から無くならないように、私たちは未来にこの茶箱をつなげていきたいということで、職人もそういう気持ちで茶箱を製造している」
今回のしずおか産は、職人の技と思いが詰まった『茶箱』です。
静岡県川根本町の山あいに工場を構える前田工房です。
<薗田代表>
「ここが前田工房の桑野山工場というところです。どうぞ。どんな材が茶箱に適しているかを目利きしながら、ここで『木取り』が始まります」
茶箱を作る上で肝となるのが、『木取り』と呼ばれる木を選ぶ工程です。木は、地元、静岡県川根本町の杉を使います。
<前田工房 梶川栄市さん>
「匂いがなくて軽いっていうことが一番茶箱に合ってるんだと思う」
工房の梶川さんは、元建具職人。木の性質や見た目を見極め、それぞれの部品に合った木材を選びます。
<梶川さん>
Q.機能的にも見た目的にも美しいものを?
「こだわりはそこにある。とにかく無駄なくやることと、きれいにやることと早くやること」
釘で組み立て、内側にトタンを貼り、隙間をはんだで埋めていきます。さらに、箱のかどや木のつなぎ目に和紙を張り、きれいな見た目に仕上げます。職人たちの技が詰まった茶箱。シンプルなデザインの中に木の温かみを感じることができます。
<薗田代表>
「ここのトタンが施してあることと、この杉がやっぱり虫を寄せ付けない成分がある、呼吸をしているということで、防虫・防湿・防酸化、湿気ない・カビない・劣化しない・虫が入らない。そこが茶箱が木箱と違う一番の良さだと思う」
茶箱の起源は江戸時代。お茶の保存や輸出に使われてきました。しかし、段ボールやプラスチックなど包装技術の発達で需要が減少。静岡県内に100軒以上あった茶箱メーカーも、今では数軒のみになってしまいました。
静岡県川根本町の元藤川地区にある製茶問屋です。
<製茶問屋ほてい園茶舗 久保勇介さん>
「お茶の詰め放題で、お客様にパンパンに詰めてもらったりする時に並べて置いて使っている。前田工房の茶箱は全部しっかりできているので、ふたも閉めてちゃんと密封ができるし、やはり保存には適していると思う。外でイベントを行うので、やはり外気の遮断がしっかりできているので、お茶屋さんには評判が良いと思う」
前田工房は6年前に、前身の前田製函所から事業承継しました。機械と技術を受け継ぎ、昔ながらの製法で茶箱を作り続けています。現在は、その機能性から、カメラや着物といった大切なものから、最近ではコメの保存目的で買う人も増えています。さらに、収納付きの椅子として活用するなど、現代の生活スタイルに合わせた茶箱も登場しました。
<薗田代表>
「昔ながらで作ったやり方でここまで来ていても機能がしっかりしている、それを伝え、つなげていく。やり続けていくことが今の私たちの前田工房の使命かなと思っている」
この茶箱はオンラインショップや「KADODE OOIGAWA」などで販売されているほか、2025年7月末までは「ASTY静岡」内の「駿府楽市」で期間限定で販売されています。茶箱を生かしたイスも販売中です。