
人気ロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」の後藤正文さんが呼びかけて始まった、お茶の倉庫として使われていた蔵を音楽スタジオに変える計画。クラウドファンディングによる支援金を使い、スタジオはまもなく完成を迎えます。
7月12日に行われたJリーグ、藤枝MYFCの試合のハーフタイムショー。20年以上、ロックシーンの最前線を走り続けるバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」のボーカル・後藤正文さんが藤枝MYFCの公式応援ソング「解放区」を披露しました。
後藤さんは、隣の島田市出身。藤枝市とのつながりも深く、2024年に若手ミュージシャンなどを支援するNPO法人を市内に立ち上げました。同時に、お茶の倉庫として使われていた築130年の蔵を未来のミュージシャンのためのレコーディングスタジオに改修するため、クラウドファンディングで5500万円を目標に支援金を募りました。
<後藤正文さん>
「こちらですね。だいぶ工事が進んで…こんな感じですね」
蔵の改修工事が始まったのが2024年の末。8か月間の工事で蔵の中は大きく変わり、2階の床は取り外され、吹き抜けになりました。
<後藤さん>
「パンって(手を)叩いたら分かるんですけど、響くんですよ。残響が長いんですよ。ドラムのタンっていう音が鳴ったあとに木のある空間の響きがマイクにも乗るような。そういうサウンドデザインにできたらいいな、と」
蔵特有の天井の高さを生かしたレコーディングスタジオ。明治時代に建てられた蔵をそのまま利用するべく、建物を持ち上げて耐震のための基礎を作りました。住宅街に建つスタジオのため、音が漏れないよう特殊な構造も採用しています。
<後藤さん>
「この壁、梁、天井もそうなんですけど、実は外から見た蔵に触れていないんですよ。土蔵の中にスタジオを作っている」
外側の蔵と内側のスタジオの間に隙間をつくる。スタジオの柱や梁が蔵に触れると振動で音が外に伝わってしまうため、約3センチの“空気の層”を設けました。ここまでこだわった工事が出来るのも、クラウドファンディングで資金が集められた為。目標額の5500万円を大きく超え、約3か月間で5169人から7560万円の支援金が寄せられました。
<後藤さん>
「ちょっとした思いやりを集めて、みんなで『私たちのスタジオ』みたいな感じでやっていけるような場所になって欲しいと思っていて。絶対にこのスタジオを使う人たちの中から何組かはすごいアーティストが出てくるはずだから。未来に少しずつベットしてもらえるっていうかね」
レコーディングスタジオは、当初の計画通り、2025年秋に完成予定。音響テストなどの試運転を重ね、2026年春からの営業開始を目指しているということです。
130年前にできたお茶の蔵を未来のミュージシャンのために残す。後藤さんの描いた夢がまもなく形になろうとしています。
<後藤さん>
「ささやかな優しいパスが、若い世代や未来の世代に届くような動きを大人たちみんなでつくっていくのが、僕らの世代の責務なんじゃないかな」