10月12〜14日開催!【熱海未来音楽祭2024 プロデューサー巻上公一さんインタビュー】「YMO第4の男」松武秀樹さん、ドイツ在住ピアニスト高瀬アキさん、再始動「ZABADAK」が登場
YMOとヒカシューの邂逅!?
-今年のテーマ「温泉に歌うさかなの宴」にはどんな意味が込められているんですか?巻上:ドイツの詩人クリスティアン・モルゲンシュテルンによる、カリグラム(文字で形をつくる詩、図形詩)のタイトル「夜に歌う魚」から取っています。これを基に何かやろう、ということで実際に図形詩をつくるワークショップを9月29日に行います。立体のカリグラムを作って、10月14日のパレードで使います。
-今回の演目一覧を見ると、なんと言っても10月12日の「YMOとヒカシュー サウンドの中枢 シンセ談義&ライブ」が気になります。「YMO第4の男」とも言われたシンセサイザー奏者の松武秀樹さんが熱海未来音楽祭に初登場ですね。
巻上:松武さんと最近よく会っていて、来てもらえないかなと。YMOでも使っていたシンセサイザーを持ってきてくれるそうです。当日はそれをお客さんもいじれるようにする予定です。
-1980年前後のシンセサイザーでしょうか。
巻上:「タンス」と言われているモーグの大きなやつです。共演する井上誠さんはローランドのシンセ、僕はモーグのテルミンで参加します。前半はどうしてシンセサイザーの音にたどり着いたのか、といった話をしてもらいますが、おしゃべりしながら演奏になっていく。
-昔のシンセを間近で見られる。いい機会ですね。
巻上:13、14日は同じ起雲閣の和室で、松武さんのシンセサイザーワークショップを開催します。ライブのチケットを持っている人は自由に参加できます。松武さんずっといて、シンセサイザーの音の出し方を教えてくれるそうです。
-YMOと(巻上さんが在籍する)ヒカシューは共に「テクノポップ」と言われていましたよね。
巻上:YMOのメンバーはもともとプロのスタジオミュージシャンだったけど、われわれはアマチュア的に始めた。でもデビューはほぼ一緒なんです。その頃「テクノポップ」という言葉はなかった。僕らがデビューして半年ぐらいだったかな、こういう音楽を(音楽評論家の)阿木譲が「テクノポップ」と言ったんです。
詩人・白石かずこさんをしのんで
-10月12日は「声と詩:白石かずこメモリアル『ユリシーズの運命、詩の行方』」と題した、巻上さんとサックス奏者梅津和時さんとのコラボレーションも注目ですね。巻上:今年6月に亡くなった白石かずこさんの詩を僕が朗読します。(巻上さんが東京で運営する)「JAZZ ARTせんがわ」には2回出てもらっていて、共演したんです。
-巻上さんにとって、詩人白石かずこはどういうアーティストでしたか?
巻上:(米国の詩人)アレン・ギンズバーグたちとつながっている貴重な存在でした。詩をパフォーマンスに高めたという意味ではナンバーワンだと思いますね。
-梅津さんとはどんな演奏になりそうですか?
巻上:梅津さんは熱海未来音楽祭初登場。白石さんと長く一緒にやっていました。だから、白石さんがやっていたスタイルでやりたいと思います。僕に白石かずこが憑依します。
高瀬アキさん、ZABADAKも登場
-2日目、10月13日の目玉は?巻上:高瀬アキさんでしょうね。ベルリンに住む、欧州の賞を取りまくっているピアニストです。僕とは、ヒカシューのアルバム「はなうたはじめ」(1991年)でピアノを弾いてもらって以来の付き合いです。実は毎年、日本に来ているんです。作家多和田葉子さんの朗読とのデュオで。
-共演のダニエル・エルトマンさんはどんな方ですか。
巻上:高瀬さんと共演が長いサックス奏者です。とんでもなくうまいですよ。
-3日目、10月14日はいかがでしょう。
巻上:「即興とロックの融合『耳に入りきるのか濃密なる音よ』」でしょうか。 ZABADAKに(ヒカシューのドラマー)佐藤正治さんが加わります。 ZABADAKはいろんな民族音楽的な要素を取り入れながら、音楽の幅を広げた日本のグループ。残念ながら(中心人物の)吉良知彦さんが亡くなったけれど、小峰公子さんとギタリストの鬼怒無月(きどなつき)さんと正治さんで「ZABADAK+M」として演奏します。
-同じ時間に名前があるFU-CHING-GIDO(フーチンギド)はどんなグループでしょうか。
巻上:ふーちんはチャラン・ポ・ランタンのサポートドラマーなんですよ。熱海未来音楽祭では寿司桶(すしおけ)を背負って野外演奏してもらったこともあるんですよ。そのふーちんとチューバ奏者のギデオン・ジュークスで「ジプシーロック」をやっています。クレズマーの曲が中心です。
-熱海未来音楽祭、早くも6回目ですね。大衆的なイベントではないかもしれないけれど、年々熱海の街中でやる意味が増してきているように感じられます。
巻上:毎年、なるべく「深く」やろうとしています。サンビーチには今年も「扉」を設置しますよ。地域との交流は大事ですが、地域に「違和感」を創出することで、いつもと違って見えることが大切です。
-今年は10月14日に行う毎年恒例のパレードはその「違和感」そのもので、見ていて楽しいです。
巻上:熱海という土地はああいうものを温かく受け入れてくれる。なるべく「普通じゃない」ものをやらないと意味がないと思っています。
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■ 第6回熱海未来音楽祭
※主な演目
▼10月12日(土)
「商店街でのゲリラ演奏」〈無料公演〉
時間:午前11時~11時半
会場:熱海駅前仲見世通り商店街
出演: sanbaka horns / 吉田隆一(サックス)、後藤篤(トロンボーン)、高岡大祐(チューバ)
「声と詩:白石かずこメモリアル『ユリシーズの運命、詩の行方』」
時間:午後2時~3時
会場:起雲閣音楽サロン
出演: 巻上公一(朗読、テルミン)、梅津和時(サックス)、テイラー・ミニオン(編集者)
「YMOとヒカシュー サウンドの中枢 シンセ談義&ライブ-音楽の魂を合成する方法」
時間:午後5時~7時
会場:起雲閣音楽サロン
出演:井上誠(シンセサイザー)、松武秀樹(シンセサイザー)、巻上公一(ヴォイス)
▼10月13日(日)
※主な演目
「JAZZ即興の真髄『ベルリンから熱海に届く間欠泉の沸騰』」
時間:午後3時半~4時半
会場:起雲閣音楽サロン
出演:高瀬アキ(ピアノ)、ダニエル・エルトマン(サックス)
「声とチェロ『声は宮殿を破壊し再生する』」
時間:午後5時半~6時半
会場:起雲閣音楽サロン
出演:赤い日ル女(ヴォイス) 、巻上公一(ヴォイス)、坂本弘道(チェロ)
「熱海未来音楽祭×熱海カーニバル コラボ企画」〈投げ銭公演〉
時間:午後7時~7時半
会場 : 熱海魚市場 (熱海市清水町8-8)
出演: タカダアキコ(ベリーダンス)、巻上公一(ヴォイス)、坂本弘道(チェロ)ほか
▼10月14日(月・祝)
※主な演目
「熱海未来パレード&海辺のパフォーマンス『へんてこなる海風』」〈無料公演〉※雨天会場変更
時間:午前11時~正午
出演: cocoloco(パフォーマンス)、伊藤千枝子(ダンス)、レオナ(タップダンス、全身打楽器)、ふーちん(パーカッション)、ギデオン・ジュークス(チューバ)、竹内理恵(クラリネット)
「即興とロックの融合『耳に入りきるのか濃密なる音よ』」
時間:午後2時~3時半
会場:起雲閣音楽サロン
出演:FU-CHING-GIDO /ふーちん(ドラムス)、ギデオン・ジュークス(チューバ)、 ZABADAK + M / 小峰公子(ボーカル)、鬼怒無月(ギター)、佐藤正治(パーカッション)
「ロンドンの底抜けパフォーマンス『唐突にネジが外れた訳ではなく』」
時間:午後5時半~6時15分
会場:熱海銀座 Eomo store
出演:cocoloco
▼入場料
1ライブ 3500円
2日間フリーパス 12000円(バッジ付き)
3日間フリーパス 15000円(バッジ付き)
※学生、子ども料金あり
参加申し込み、問い合わせはマキガミオフィスへ。
電話(080-5447-5151)、メール(makigamioffice@gmail.com)
静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。