
9曲入りの本作は、巻上さんのボイス、テルミン、コルネット、尺八、口琴と藤掛さんのドラムス、電子音で成り立っており、言葉は介在しない。だが、各曲にはタイトルが付けられており、いかにも巻上さん的な言葉のチョイスが、楽曲の構築する世界の大きな要素となっている。イメージの膨らみに大きく貢献している。
タイトルの一部を列記する。「呼吸の天文学」「火星人のおみやげ」「わずかに浮いている」「質問に質問で返す人」「きみはクラゲなのか」「未熟な曇天」―。雲をつかむような、つかんだ雲が急に実体を伴うような、そんな手触りの、時に諧謔をまぶした言葉が並ぶ。
即興演奏だが、2人の奏者が互いの「間」を理解しているため、音が干渉し合うことがない。互いを引き立てる音の組み立てがなされており、「聴きやすい」と言ってもいい。巻上さんのまか不思議な「ボイス」とテルミンの音の境目がどんどんなくなっていくのも面白い。声や管楽器、口琴といった人間の口から出た音が、電子楽器と混じり合うスリリングさに耳を奪われた。(は)